インタビュー

30年企業ファーウェイの「品質」にかける思い

“中国企業だからこそ”自社製品に課した高水準の品質基準

ロボット化が進むファーウェイの生産ライン(同社提供)

 ファーウェイは8月、中国・深センの本社や製造工場などを日本のメディアに公開した。現地レポートを掲載しているが、こうした製造現場や、そこで作られ日本で販売されるスマートフォンなどの製品を見ると、かつて我々が中国や中国製品に抱いていた印象とは大きく異なるように感じるのではないだろうか。

 とりわけ製品の品質面では、多くの人にとって十分以上に好ましいものに仕上がっていると言える。本社、工場視察にあわせて実施された同社の責任者3名によるプレゼンテーション、インタビューでも、口を揃えて語っていたのが品質に対する強いこだわりだった。同社がどんな考えで「品質」と向き合っているのか、3者の話を交えて紹介しよう。

自らを「蜂の巣」に例え、消費者視点のものづくりを実践

 ファーウェイは今から30年前の1987年に、現会長の任正非(Ren Zhengfei)氏によって深センの地に創業した。当初はビルの一角からスタートした同社だが、通信機器の製造を手がけるなかで大きな成長を続け、今や世界の15カ所にR&Dセンターをもち、170カ国の拠点で18万人もの従業員を抱える世界有数のグローバル企業となった。

1987年に設立されたファーウェイ、今年で30周年だ
今や従業員18万人のグローバル企業となった

 スマートフォンについて言えば、2017年上半期の出荷数は7300万台超の前年同期比で20.6%増加。コンシューマー製品事業の売上高は1054億元(1兆7000億円以上)で同36.2%増。プレミアムスマートフォン(価格500ドル以上)のグローバルマーケットシェアは、ライカダブルレンズを搭載して注目を集めたP9シリーズが牽引し、2017年第2四半期の時点で前年同期比+2%の11.3%と躍進した。

2017年上半期のスマートフォン出荷台数は20.6%増に
グローバルマーケットシェアも2%アップした
3名が輪番CEOを務める独特の体制

 急速に成長し、日本でも存在感を高める同社の原動力は、独特な社内体制から生まれているのかもしれない。最終的な決定権をもつ最高責任者を定期的に交代する輪番CEO体制をとり、上場企業ではないものの、発行株式の1%を創業者が、99%を従業員が所有する。従業員レベルでも単一のリーダーが先頭に立つのではなく、ミツバチのように「全員が同じ目標に向かって行動している」ことから、同社は自身を「蜂の巣」にも例える。

Huawei Technologies PR部門ディレクター 徐翔宇(Xu XiangYu)氏

 日本風に言えば“全員野球”だろうか。そんな考え方を前提に、「今あるものを細部まで磨き、消費者のベネフィットを追求することを経営理念としている」と語るのは、グローバルのPR部門でディレクターを務める徐翔宇(Xu XiangYu)氏だ。「技術は消費者に価値を提供するためのもの」として、「この10年間で売上の10%をR&Dに投資している」と技術開発を重視する姿勢もアピールする。

 世界各地にあるR&Dセンターの内訳についても、サンフランシスコがUX(User Experience、製品などをする際の体験のこと)のデザインを、パリとロンドンがその他の製品全般のデザインを中心に手がける。

 また、ロシア(モスクワ)ではアルゴリズム、EUでは5Gをはじめとするテクノロジー、日本ではリサーチ・分析というように、各分野の人材が「どこに多いかを考慮して地域選定し、各R&Dセンターを設立している」という気の配りようだ。

世界各地のR&Dセンターは、地域ごとの人材の特色に合わせて担当分野を変えている

企業理念がトラブルを未然に防ぐ

Huawei Technologies CQO 馬兵(Ma Bing)氏

 現在までにそのような体制に至った理由の1つは、CQO(Chief Quality Officer/最高品質責任者)を務める馬兵(Ma Bing)氏の「当社はこれまでの30年間、品質に関してさまざまな問題に直面してきた」という言葉からもうかがえるかもしれない。

 たとえば、スマートフォンのバッテリーの発熱、発火といったトラブルは、ファーウェイもかつて、製品開発の過程でたどったことでもあるという。

 結局そのトラブルは製品化前に対策して事なきを得たものの、事前に防止できたのは「当社の理念とも関係している」と同氏は語る。つまり、徐氏が述べた「今あるものを細部まで磨き、消費者のベネフィットを追求することを経営理念としている」という部分だ。

 バッテリーの発熱や発火トラブルの要因は、製造工程における設計外のミスも考えられるが、その根本にあるのはスマートフォンを可能な限り長時間使えるようにするため、バッテリー容量を無理に拡大したり、負荷のかかる方法で充電するといった、“誤ったUXの高め方”にあるとも考えられる。

 馬氏は、バッテリーは基礎的な技術に大きな躍進がない限り、現在の状況から大きく進化することはないと見ている。そのため、主に低電圧高電流による独自の急速充電技術「SuperCharge」を搭載している同社端末のバッテリー開発でも「極限を追い求める形で今の技術にチャレンジするような動きはしていない」と話す。

 その代わりに、ソフトウェアおよびシステム設計のレベルで低消費電力化に継続的に取り組み、そのうえでバッテリーの試験を行う専門ラボで品質の検証、管理を実施している。徹底した品質・リスク管理により「早い段階で問題を見つけることができる」と馬氏。すなわち、「今あるものを細部まで磨き……」という理念を体現することで、クリティカルな問題を事前に防止できているわけだ。

同社製スマートフォンで採用している充電方式「SuperCharge」は、最近では低電圧高電流が特徴

 バッテリー以外の品質についても、スマートフォンとしては過剰なまでの性能を追求しているという。というのも、もともと同社はきわめて高い信頼性が求められる通信事業者向けの通信機器や通信インフラの製造を手がけている企業。その他の製品についても品質基準を事業者向け通信機器とほぼ同等の高水準に設定しているからだ。

 馬氏は、「部品メーカーに品質基準を提示した時に、それを満たせないと言われることもあった。たとえば通信インフラに対する温湿度試験(の合格基準)と、コンシューマー製品に対する試験(の合格基準)は違うため、基準が高すぎると言われることが多い」と打ち明ける。

 それでも高い品質基準のまま保つのには、中国企業だからこそ、という思いがあるようだ。「中国の企業がつくる製品を世界に認めてもらい、品質が良いと証明するには、多大な努力が必要だ」と馬氏。もちろん、出荷する国ごとに別途追加の試験を課す場合もある。たとえば日本向けの製品では、耐水試験や落下試験により力を入れているという。

 一方で「スマートフォンに対する品質の要求は技術に止まらなくなってきた」。故障率の低さだけでなく、スムーズに動作すること、といった使用感にかかわる部分までユーザーの要求は広がっているのだという。

 こうした要求に応えるため、同社ではユーザーの声を集める取り組みも始めた。現在は世界中から1日あたり約30万件もの意見・感想が届いており、「それらの声をもとに改善策を速やかに製品に反映させている」と、品質向上において新たな取り組みが有効に働いていることを報告した。

品質、体験の向上で「オールシーンのスマートライフ」の実現へ

 高い品質を目指す動きはスマートフォンに限らず、2017年7月に発売した同社初のクラムシェル型ノートPC「MateBook X」にも見られる。

 Windows 10マシンである「MateBook X」は、13インチのディスプレイを搭載しながらも12.5mm、10.5kgという薄型・軽量で、高級感のある金属筐体を採用し、下降傾向にあるPC市場に「イノベーションを起こす」とした野心作だ。

 同社COO(Chief Operating Officer)の万彪(Wan Biao)氏は、「PC市場に元気がないのは、購買意欲を刺激する製品が出てきていないのが要因」と言い切る。その一方で、近年話題になっているAIやVR/ARといった新技術が、PCの復興につながるだろうとも話す。「AIという技術はPCに新しい活力を与える。VR/ARも、PCが復興するためのいい機会となり、そのためにもすばらしいPC製品は欠かせない」と今後の技術進化に期待を寄せる。

Huawei Technologies COO 万彪(Wan Biao)氏

 最終的に同社が目指しているのは、製品ごとの体験向上を起点に、「オールシーンのスマートライフを提供すること」だ。同社ではPシリーズをはじめとするスマートフォンに加え、ビジネス分野ではMateBookシリーズなどのPCを、エンターテイメント用途ではMediaPadシリーズのタブレット端末を、家庭向けではスマートホーム用の各種センサー機器をそれぞれ提供している。モビリティ(自動車)分野では車載システムの開発も手がける。

同社製スマートフォンでは子会社のハイシリコンが製造するチップセットKirinを採用。将来的には機械学習に最適化した処理が追加される可能性があるとのこと

 すでに生活のあらゆるシーンで使われる機器をファーウェイがすべてカバーしている状況であり、それらを統合、連携して将来的に新しいUXを生み出す可能性は十分にある。その実現には馬氏の言う「多大な努力」が必要になることは言うまでもないだろうが、一見目立たないながらも各製品における堅実な「品質」への取り組みによって、一歩ずつ目標に近づいていることも間違いない。ファーウェイ製品が日本を含む世界を席巻することになるのか、今後の動向に一層注目したいところだ。