【ワイヤレスジャパン2015/WTP2015】
ミリ波で置くだけ高速転送、基地局内の通信効率化、NTT
(2015/5/27 21:17)
スマホを置くだけで大容量の動画をミリ波で高速転送
ミリ波帯(EHF)は、直進性が高く、到達距離が短いが、大容量のデータ転送に適した30GHz~300GHzの周波数帯。NTTは、無線免許が不要な60GHz帯のミリ波を利用して、スマートフォンを置くだけで、大容量データを高速に転送できる、無接点の高速転送技術を開発した。
キオスク端末の形で展示され、ミリ波の受信装置をつけたスマートフォンを置いて、転送したい動画を選ぶと、スマートフォン側に高速で転送される。転送には IEEE 802.11ad(WiGig)規格に準拠した1対1の通信となり、伝送レートは1Gbps程度。転送可能範囲は10cm以内。
NTTでは2020年を目途にWiGig対応のスマートフォンが発売されると見込み、この技術の商用化を目指している。駅に置いたキオスク端末で観光情報や地図情報を受信したり、スタジアムで試合をみた観客が帰りにその試合の中継映像をスマホに送って持って帰る、といった使い方を想定しているという。
基地局内部での通信容量を削減する新方式
将来の5G実用化によるネットワークトラフィックの増加を見据えて、基地局内部でのネットワーク転送量を削減する、改良された通信方式も展示されていた。現在LTEの基地局で採用されている「C-RAN」(Centralized Radio Access Network)方式では、実際に携帯端末とデータをやり取りする複数のアンテナ装置(子局)と、複数の子局を束ねてデータを処理する制御装置(親局)で基地局の機能を分担している。子局と親局は光回線で接続されており、子局-親局間の通信を「モバイルフロントホール」と呼ぶ。
従来の方式では、子局ではほぼアンテナの機能しか持たないため、受け取ったデータをモバイルフロントホールにそのまま転送している。新方式では、子局で転送データを「尤度」(「もっともらしさ」を表す数値)に置き換えて転送する。親局では、複数の子局から受け取った尤度化されたデータを合成して、本来のデータに復元する。この方法により、モバイルフロントホール内での伝送データ量を大幅に圧縮できるという。
デモでは、2つの子局から親局への転送を、新方式と従来のC-RAN方式で比較していた。新方式では伝送レートが若干低下するが、モバイルフロントホールでの伝送データ量が15分の1程度まで抑えられていた。