【Mobile World Congress 2016】

エプソン、ディスプレイ部が大幅に進化したスマートグラス

BT-300

 セイコーエプソンはMobile World Congressにおいてプレスカンファレンスを開催し、Android搭載のスマートグラスの新製品、「MOVERIO BT-300」を発表した。今秋発売予定で価格は現行製品(BT-200、市場価格5万円程度)よりも少し高くなる見込み。日本でもグローバルと同じタイミングで発売される。

 MOVERIOシリーズはメガネ型のヘッドセット部とコントローラー兼用の本体がセットとなったウェアラブルデバイス。業務用途でも使われているが、コンシューマー向けにも販売されている。

ヘッドセット部

 ディスプレイは両眼対応の透過型フルカラーで、ARや映像コンテンツ視聴、業務用途など、さまざまな用途で使えるようになっている。ヘッドセット側にはディスプレイとカメラが搭載されていて、有線でつながるコントロールボックスが本体となっている。

 OSはAndroid 5.1。Google Playには対応しないが、エプソンが提供するMOVERIOシリーズ向けアプリストアを利用できる。Androidアプリのインストールパッケージ(apkファイル)も利用可能。従来のMOVERIOシリーズはARM系のプロセッサを搭載していたが、BT-300はインテルのAtom 5(1.44GHz/クアッドコア)を搭載し、グラフィック性能などが向上しているという。

 BT-200までのMOVERIOシリーズに比べると、BT-300ではディスプレイ性能が大幅に進化している。いままでは液晶ベースのディスプレイだったが、BT-300ではエプソンが独自にBT-300のために開発したシリコンOLED(有機EL)を搭載する。これにより、明るさやコントラストが格段に向上し、色も鮮やかに表示されるようなった。

表示のイメージ。肉眼ではもっと鮮明で鮮やかな印象を受ける

 Oculusなど非透過型VRゴーグルの場合、有機ELパネルが使われることが多く、非透過の片眼ディスプレイでも採用例があるが、まったく構造の異なる透過型のヘッドマウントディスプレイで有機ELが使われるのはおそらくBT-300が初だという。

 液晶ディスプレイは、黒い表示部分もうっすらと発光するため、透過ディスプレイで使うと、暗い場所では真っ黒な表示でもディスプレイの輪郭が見えてしまう。しかし有機ELはその特性上、黒い表示部分は発光せず、BT-300ではほぼ完全に透過して見えるので、AR表示などへの適性が高い。また、黒い表示部分は電力をほとんど消費しないので、黒地に時刻などの文字情報だけを表示することで省電力化できるなど、液晶に比べると多くの優位点がある。

エプソンが独自開発した有機ELモジュール

 BT-300では有機ELベースのディスプレイを使うことで、ディスプレイ光学系の大幅な小型化にも成功しており、ヘッドセット部はBT-200より20%軽量化したという。

 ディスプレイの解像度は1280×720ドット(BT-200は960×540ドット)。左右眼で別々の映像を表示できるので、3D表示もできる。コントラストは10万:1以上。視野角は従来製品と同等だという。

暗い部分が背景を透過する。文字も肉眼だとしっかり判読できる

 実際に装着してみたところ、BT-200に比べて明らかに映像の見やすさ、鮮明さ、色の鮮やかさが改善されていると感じられた。BT-300は従来モデル同様、瞳孔間距離の調整などはないが、着用すればほぼ違和感なく映像を見ることができた。

 ヘッドセット側に搭載されるカメラも強化されていて、BT-200では30万画素だったが、BT-300では500万画素になっている。これにより、ARマーカーなどもより遠くまで認識したりできるようになるという。

コントローラー部

 操作はヘッドセット側と有線接続するコントロールボックスで行なう。コントロールボックスにはタッチセンサによるカーソルキーとトラックパッドがあるほか、Android標準のホーム/バック/タスクキーと音量キー、ユーティリティキー、電源キーがある。バッテリーはコントロールボックス側に内蔵される。

コントローラー部の側面。やや厚みがある
ヘッドセット部とコントローラーをつなぐケーブルの中間あたりにイヤホンマイク端子がある

 通信機能としては、IEEE802.11a/b/g/n/acのWi-FiとBluetoothに対応。BluetoothはAndroid 5.1になったことでビーコンにも対応する。このほかGPSや地磁気センサ、加速度センサ、ジャイロセンサも搭載する。

 メガネ部は通常のメガネの上に着用することも可能で、そのための交換ノーズパッドも用意される。また、BT-200同様、度入りレンズを付けるためのフレームや外側に装着するスモークシールドなども同梱される予定だという。

レンズ部はプリズムが入っているためやや厚みがある
ディスプレイは従来製品より大幅に小型化している
左からBT-100、BT-200、BT-300
過去のモデル(発表会資料より)
右は業務用途を想定して装着部分を変更したBT-300のコンセプト試作モデル
BT-200同様、BT-300でもサードパーティによるレンズなどが予定されている

白根 雅彦