【IFA2014】

ソニーモバイルの考える「Xperia Z3」や「スマートウェア」とは

 既報のとおり、ソニーモバイルはIFAで、最新のフラッグシップモデルの「Xperia Z3」や、その派生機となる「Xperia Z3 Compact」、8インチタブレットの「Xperia Z3 Tablet Compact」を発表した。ソニーモバイルでプロダクト企画を務める伊藤博史氏は「Z1からのヒストリーは、『One Sony』のヒストリーそのもの」とこれまでの歩みを振り返る。

伊藤氏
「1/2.3型の大型センサーを搭載したXperia Z1を発表したのが去年のIFA。その後、春にデジタルノイズキャンセリングや4Kの動画撮影に対応したXperia Z2を発表し、今回のXperia Z3につながっています。今回は3代目になるので、プレミアムなフラッグシップとしての顔を作りたかった。そこで、徹底的な薄型化と軽量化にトライし、結果として7.3mmのボディと、152gという軽量化に成功しています」

Xperia Z3

 もちろん、単にボディをシェイプアップしただけではない。伊藤氏が「ユニークなソニーのエクスペリエンスとバッテリーライフを両立させるのがチャレンジだった」と語るように、機能面での大幅な進化やソニーのサービス、コンテンツとの連動はより深まっている。また、「頑丈さにもメスを入れた」といい、防水仕様も現行モデルより高いIP68に対応。「より深いところに沈めても、防水が担保される」ようになった。

UX Creative Design & Planning UX Product & Portfolio Planning Product Planning 統括部長 伊藤 博史氏

 薄型化を支えた技術の1つが、「カメラを0.7mm薄型化できた」こと。モジュールを薄型化するとの同時に、ISO12800への対応や広角25mmのGレンズを搭載し、機能面での向上も図られている。「新しいカメラモジュールを生かしたエクスペリエンスを提供したい」という発想の元、カメラアプリも充実させた。その1つが「ARファン」。空間を認識し、そこのスタンプや文字を浮かべることができるカメラアプリだ。

 また、伊藤氏が「One Sonyの下で、ふんだんにソニーのエクスペリエンスを盛り込んだ」というように、Xperia Z3では単体でのハイレゾオーディオ出力が可能になった。さらには、「ソニーのアセット(資産)の集約ということで、プレイステーション4のリモートプレイに対応した」。これによって、家の中で場所を選ばず、プレイステーションのゲームを遊ぶという提案を行っている。

 派生モデルのXperia Z3 Compactは、「Xperia Z1 fとまったく同じ寸法で、大画面化、バッテリーの増量、薄型化を果たしてさらに軽くなった商品」。もう1つのXperia Z3 Tablet Compactは「持つことを気にしなくなるぐらいの軽量なタブレットを目指した」という薄型、軽量なタブレットだ。

 このように、XperiaはZ1から徐々に既存のソニーの資産を取り込んできた。一方で「ほかの会社には真似できないソニーとしての“切り札”を出した」(シニアバイスプレジデント 田嶋知一氏)というように、スマートフォンに集約できる技術やサービスは、もはやあまり残されていない。そこで、ソニーモバイルが次の一手として考えているのが、「スマートフォン発のSony's Best」を提案すること。その一翼を担うのが、「ライフログとスマートウェア」だ。

 ソニーモバイルはIFAで、「SmartWatch 3」と「SmartBand Talk」という2つのウェアラブル端末を発表した。ここには、「みんなが至るところでスマートフォンに目を落とす社会はあまり健全ではない。ディスプレイに目をやらずにスマートフォンをコントロールできるようにしたかった」という思いがある。ウェアラブル端末のバリエーションを広げたのは、「商品バラエティを増やしているというより、提案するスタイルを増やしたかった」からだという。

インタビュー

 田嶋氏、伊藤氏の2人はこのように商品の狙いを語ったあと、報道陣からの質問に答えた。主なやり取りは以下の通りとなる。

――これまで、半年に1回製品を出してきたが、今後もそのペースは続いていくのか。

田嶋氏
 過去2年を振り返ると、その都度、やりたいイノベーションは必ず入れてきました。プラットフォームやモデムの変更にも、タイムリーに対応できました。海外マーケットでは価格が下がっていくところに対して、新しい商品を入れて常に付加価値を取れたともいえます。一方で、マーケットの中でハイサイクルを続けると、国や市場によっては入れ替えのオペレーションが非常に大変で、そこは痛感しました。日本のようなところだと、3カ月、4カ月でぐるぐる回していくのがいいのですが……。いいところ、悪いところを両方経験した2年間でした。

 ここから先は、私が言ってしまうと株価が動いて大変なことになるので(笑)。通りいっぺんになってしまうかもしれませんが、プラットフォームとユーザーエクスペリエンスのイノベーション、そして商戦のサイクルを見て考えていきます。

 ただ、うちだけではなく、他社も春は小さめ、秋は大きめの端末を入れるところはあります。2つぐらいのラインナップで、2年間売り続けるところもあります。高付加価値をキープして、新興のプレイヤーが価格で攻めてくるところに、違うアプローチをしなければいけないと考えています。その高付加価値が、1年持つのか、6カ月持つのかという判断次第ですね。

――今回採用されたデザインについて、詳しく教えてください。

田嶋氏
 一番は、全体の筐体サイズを本当に詰めることができました。今までは1枚の板が大きいので、横をそいだり、顔を子顔に見せるような工夫をしたり、ちょっとしたデザイン上の技術を使っています。逆にこのサイズになると、デザイン上の過去もいらず、割と簡単に決まりました。エンジニアリングの進化があり、「Xperiaはこういうもの」という主張も浸透してきているため、自己主張をしなくても済みます。

 その中で、ライフログの流れを汲み、(スマートフォンは)ライフツールという色合いも濃くなっています。そこで、スタミナと防水をきちんと全世界でマーケットに向けて主張していく。生活ツールとして、世界中のお客様に受け入れられるようにしました(自己主張が少ないという意味)。

シニアバイスプレジデント デザイン・商品企画部門 部門長 田嶋知一氏

――ディスプレイサイズは、Xperia Z2から変わっていません。また、Xperia Z Ultraの後継機も出ていない中で、やはりこの5.2インチがスマートフォンとしてはベストということでしょうか。

田嶋氏
 Xperia Z Ultraには多くの学びがありました。ただ、あのサイズを使いこなすエンドユーザーは、やはりボリューム的に限られていました。その代わりというわけではありませんが、8インチで持ち歩ける十分なエクスペリエンスをご提案してみたいということで発表したのが、Xperia Z3 Tablet Compactです。

 最近では5.7インチのようなスマートフォンもあるので、そこも試してみたいとは思っていますが、一方でユーザーエクスペリエンスの一貫性とディスプレイサイズの関係には、常にこだわっていきたい。今回だと、たとえば8インチでゲームをするとすごくおもしろい。42インチの画面を遠くで見るのと、8インチの画面を近くで見るのでは、臨場感も変わりません。こういった提案も合わせて、ユーザーエクスペリエンスを作っていきたいと考えています。

――そのプレイステーション4のリモートプレイは、Wi-Fi限定になるのでしょうか。LTEで使いたいという要望もあると思います。

田嶋氏
 基本はVitaと同じしくみで、スループットさえ保障できれば(LTEでも)可能です。ただし、オペレーターとは相談しながらやらなければなりません。オペレーターのみなさんは、LTEという土管にどういうデータを流すのかに興味を持っています。特にハイクオリティのネットワークを提供して高いARPUを取りたいオペレーターさんは積極的になるかもしれません。

コントローラーにXperiaを取り付けられるアタッチメントを発売

――アメリカなどがそうでしょうか。

田嶋氏
 アメリカというより、ヨーロッパがそうですね。ARPUというのは、放っておくとズルズルと下がってしまうので、それを抑えるために音楽やゲームのストリーミングに対して期待を持たれています。各国のキーオペレーターと関わり、付加価値の高い商品とサービスとを一緒に提供できればと考えています。

――とすると、LTEでの利用の可否は、オペレーター次第ということでしょうか。

田嶋氏
 ふさいだり、デフォルトだけをオフにしたりといったことは可能です。そうしたことは、オペレーターさんと一緒に決めていきます。

――オペレーターとの関係という点では、先のソニーの決算会見で、より密接に連携していく旨が発表されていました。日本で発売した「Xperia ZL2」のように、ハードウェアまで専用にカスタマイズを加える動きは、今後増えていくのでしょうか。

田嶋氏
 ソフトウェアのカスタマイズは、今までのように当然やり続けます。その上で、ハードウェアに対しては、パートナーさんのコマーシャルコンディション次第――こう言うとかなりあれですが(笑)、お互いにボリュームをしっかり握れて、デザインを変える意義についての合意もできた場合にはご提供していきます。(これまでも)コアとなる思想や、商品については、わかっていただいた上でやっています。

――今回、Xperia Z3はフルHDでした。他社でQuad HDのディスプレイが出る中で、さらに解像度を上げる方向はなかったのでしょうか。

田嶋氏
 解像度については、プロ・コン(賛否両論)があります。上がっても、逆に輝度が落ちたり、消費電力が上がってしまったりといったこともあります。成熟度が上がり、メリットが出せるようになれば切り替えることもあるでしょう。今はちょうど端境期だと思っています。もちろん、スペックレースが進む中で、解像度が高いほうがいいというユーザーもいます。ですから、輝度、コントラストに対するこだわりがクリアできれば切り替えていきたいと思います。

――各社、Selfie(セルフィ、自分撮り)を強化する中で、ソニーモバイルはどう考えているのでしょうか。

田嶋氏
 うちも、グローバルの中級価格帯モデルには、Selfieを強化したものがあります。また、同時にアプリケーションの開発も進めています。Selfieには注目していて、アジア発で世界に広がっているユーザーエクスペリエンスとして、どんどん取り込んでいきたい考えです。自分撮りだけでなく、家族撮りのようにSelfieの中でも新しい提案が出てきているので、そういったところも含めて取り入れられればと思います。

 今回で言うと、「Multi Camera」や「Face in」というアプリがあり、それは自分が写ることを意識したものです。

カメラモジュール(左)を薄型化

――SmartWatch 3ではAndroid Wearを採用しました。逆に、これまでとの一貫性が失われてしまう点は、どう考えているのでしょうか。

田嶋氏
 確かに、SmartWatch 2までは(Androidベースの独自OSで)、エコシステムとして数百のディベロッパーにアプリを作っていただきました。Android Wearの採用で、その規模を一気に広げられると考えていますし、その広がったユーザーエクスペリエンスを経験してもらえればと考えています。

 今までの数百のディベロッパーの方々にも、スムーズにAndroid Wearに移行できるプログラムを用意していきます。

Android Wearを採用した「SmartWatch 3」

――ということは、今までのエクスペリエンスの維持はできる、と。

田嶋氏
 そうしたいですし、それができなければいけないと思っています。

バンドとコアを切り離すことができる

――他社もAndroid Wearを採用する中で、どう差別化していくのでしょうか。

田嶋氏
 これは、Androidのスマートフォンとまったく同じです。ユニークな、プロプリエタリーなユーザーエクスペリエンスを提供すること。たとえば、Walkmanやライフログ連動ができることだったり、ゼスチャーでの操作だった、それでAV機器がコントロールできたりといったことがそれです。つまり、ユーザーエクスペリエンスで差別化するということですね。

――より高級路線なデザインのスマートウォッチが出てくる中で、今回のデザインを採用した理由を教えてください。

田嶋氏
 思いっきり時計に寄せるのと、デジタルガジェットのようにして新しい道を作るという、2つの考え方がありますうちはバンドタイプがあり、コアタイプがあり、ウォッチタイプがある。その全体の中で、ライフツールのイメージですっと手につけてもらえるクセのないものにしたいというのがありました。

 ただし、(バンドから取り外せるSmartWatch 3の)コアの部分は非常にニュートラルです。このバンドでバラエティーはどんどんお見せしていける。ある決まったデザインがあるというより、(バンドの付け替えでデザインをガラッと変えられる)ニュートラルなプラットフォームを作ったと考えています。

ソニーのヘッドホンなどと一体となり、ハイレゾを訴求していく

石野 純也