世界のケータイ事情

色いろ電話

 世の中にはさまざまな電話がある。今回は「色」に注目して世界各地の電話を紹介しよう。

 まずは「赤」。赤と言えば「赤電話」。というと、今の若い人たちは、赤電話のことをよく知らないかも知れないが、街のタバコ屋さんの店先にある赤電話は代表的な「昭和の風景」と言ってもいいだろう。

退役した赤い公衆電話ボックスは30万円くらいで買うことができる。電話ボックスの販売サイト

 赤+電話とくれば、イギリスの公衆電話ボックスが赤。携帯電話に押されて公衆電話ボックスが少なくなっているのはイギリスも例外ではないが、赤い電話ボックスは街角のアクセントだ。

 ところで、赤い電話ボックスの中にある電話が何色かといえば、これも赤、と言いたいところだが、80年くらいの歴史の中で、赤はあまり使われなかったようだ。

 もうひとつおまけ。“red telephone”という言葉は、“俗に”ホワイトハウスとクレムリンの間のホットライン(直通回線)を意味するようだ。公式にそう呼ぶわけではないが、小説や映画の中では“red telephone”が符牒になっている。50年前にできた時はテレタイプでやりとりしていたが、今ではセキュアなコンピュータ回線となっているらしい。

 赤の次は「青」。青電話といえば、これも昔、公衆電話であったが、これは青というより水色なので却下。で、見つけたのが、アイビーリーグの雄、イェール大学の青電話。これはブルーブラックと言ってもいいくらい、しっかり青い。この青電話、何かというと緊急電話で、エマージェンシーボタンを押すとすぐに警察につながる。学内のあちらこちらに500台ほど設置されている。夜には、青いライトで照らされていて、近くの青電話の場所がすぐに分かるようになっている。

 赤、青とくれば次は「黄色」。黄色と電話で思いつくのは、そう「バナナ」。小さい頃、誰もがバナナを受話器に見立てて電話ごっこしたことがあるんじゃないかな。

 20年くらい前、カナダやアメリカで流行った“bananaphone”。RAFFIというエジプト生まれのカナダ人が子ども向けに作った歌。“ring ring ring ring ring ring ring bananaphone ♪”とリズミカルな曲で、一度聴くと耳に残って離れなくなりそうフレーズだ。バナナで電話するのは世界共通に違いない。

 次は「緑」。エコなイメージの緑とくれば、Greenphoneというスマートフォンがある、というかあった。筐体ももちろん緑色だ。ノルウェーのTrolltechという会社が2006年に開発したもので、Linuxをベースに全身オープンソースを身に纏ったスマートフォン。オープンソースを推進するTrolltech社が認知度を高めようとして作ったものらしい。実験的な製品だったのか、1年で在庫がなくなり、販売も終わってしまった。もし持っている人がいたら、将来プレミアがつくかも?

 最後は、今の季節に相応しく「ピンク」。カンボジア中部のコンポントムというところで、“Pink Phones”というプロジェクトがささやかに進んでいる。貧困の克服を目指す国際団体Oxfamが展開しているもので、ノキアの支援を受けているが予算が少ないため、数十という単位で村の女性にピンク色の携帯電話を提供する。当初の目論みでは、嵐が来る前に農作物を収穫するとか、市場価格が高いときに市場に持ち込めるとか、農家の経済状態を改善するのに役立てると考えていたのだが、それだけではなく、女性たちのネットワークに効果があったという。

 具体的には、身重の人が急に具合が悪くなったときに助けられるとか、家庭内暴力の仲裁に入れるとか、身近な男性には持って行きにくい話を近くの頼れる女性に相談できるようになったことが、彼女たちの生活で一番インパクトがあったことのようだ。

 そう、なぜピンク色かって? もちろん女性が好きな色だっていうこともあるのだろうが、ピンク色だと、男性が使おうとしないから。つまり、いつでも女性が使えるから、だからピンク!