世界のケータイ事情
米国のペット向けサービス
(2013/3/6 10:00)
近年盛り上がりを見せているペットブーム。一般社団法人ペットフード協会の調べによると、平成24年度の犬・猫推計飼育頭数は約2128万頭。少子化の続く日本では15歳未満の人口(約1802万人)よりペット数の方が上回っているのが現状である。日本のペット市場は1兆円を超える中、さまざまなペットビジネスが展開されている。
留守中のペットの様子を外出先からスマートフォン等でチェックできる見守りカメラや、ドッグシッター、保育園サービス、ペットの高齢化に伴うデイサービスなど、人間と同様なサービスも最近増えつつある。愛犬や愛猫をペットとしてではなく家族と考える飼い主が増えていることが背景にあると推察される。我が家にも愛犬がいるが子供のような存在である。
日本でもさまざまなペット向けサービスが出現してきているが、市場規模が500億ドルを超える巨大マーケットとなっている米国では、さらに一歩進んだサービスが展開されている。
シアトルにある「PetHub」は迷子のペット向けサービスを提供している。スマートフォン用のQRコードと通常の携帯電話用のURLが記載されたIDタグを使い、迷子のペットを保護した人がIDタグをスキャンすると、飼い主の情報やそのペットの健康利用情報などを登録したオンラインプロフィールを閲覧できるようになっている。月額会員になると、スキャンした際にGPSの位置情報がメールで飼い主に届くそうだ。
先日、米国で迷子の猫が300kmもの長い距離を歩いて飼い主の元に帰ったという記事を目にした。米フロリダ州在住の老夫婦が外出先で愛猫とはぐれ、約2カ月後に老夫婦が住む家の近所で衰弱した状態で保護された。愛猫にはマクロチップが埋め込まれていたため、動物病院で確認し飼い主が特定できたそうだ。動物の帰巣本能は人間の想像を超えるものがある。
ペットが迷子になるのは珍しいことではない。私の知人の愛犬も、以前、雷の音に驚いて家から飛び出し、行方不明になったことがある。約1カ月後、保健所から似た犬がいるという連絡を受け、川の対岸側で愛犬を発見。その愛犬の場合は、帰巣本能より適応能力のほうが勝ったのか、すっかり地域になじみ、近所の方から毎日ご飯をもらい可愛がられていたそうだが……。
マイクロチップは安全で確実な個体識別の方法としてヨーロッパやアメリカ、日本など世界中で広く利用されているが、専用のリーダーがないと識別番号を読み取ることができない。迷子のペットを保護したとして、そもそもマイクロチップを認知している人はどれだけいるだろうか。「PetHub」のようなIDタグが日本でも普及すれば、専用のリーダーがなくても携帯さえ持っていれば簡単に飼い主を特定することができるので、迷子になるペットも心配する飼い主も激減するかもしれない。
また、外出時に犬を預かったり、飼い主宅で世話をしてくれるドッグシッターを求める飼い主とホストのオンラインマッチングサービスも増えている。従来のペットホテルはケージに入れ預かるケースが多く、飼い主としてはペットのストレスが心配であったが、このマッチングサービスでは、ケージではなく室内飼いの形で預かってくれる。「DogVacay」は、面接試験をクリアしたホストが料金や対象犬種などをリストに登録。飼い主は宿泊やデイケアなど希望のサービスをウェブ上で見つけることができる。万一の事故に備えて保険の提供や動物病院との提携も行っているから安心だ。
ちなみに我が家の場合は、かかりつけの動物病院内にあるペットホテルで預かってもらうのだが、うちの愛犬はケージに入れられると吠え続けるらしく、以降、スタッフの方のご好意で病院の事務室に放し飼いにしてもらっている。スタッフの方には申し訳ないが、こちらにとっては狭いケージに閉じ込めるのではなく自由にさせてもらっているのでありがたい話である。
他にも、犬に見せるTV番組もある。2012年に開始した「DOGTV」は留守番犬をターゲットにした犬専用TV番組で、犬の視覚や聴覚に合わせたリラクゼーション映像などを制作。有料CSチャンネルだが、ストリーミング配信も行っておりPCやスマートフォンでも視聴可能だ。多頭飼いをしているご家庭では愛犬同士で遊べるのでそれほど必要性はないかもしれないが、一頭飼いのご家庭では留守番している愛犬が退屈したりストレスを感じているのではと気遣うこともあると思うが、これも飼い主の心をくすぐるサービスである。
退屈といえば、ペットを連れて旅行・移動するのは苦労するし、いろいろと心配事も多い。筆者の場合は、新幹線での長時間の移動の際、愛犬がケージの中でじっとしているのに飽きてぐずり出したり、客室内の空調が暑くてバテてしまうことがあり、愛犬を入れたケージを抱え、デッキに立ちっぱなしになることがよくある。
通常、飛行機でペットを運搬する際、ほとんどの場合は貨物室に入れられ、温度変化などによるペットの体調不良が懸念されるが、ペット専用航空会社「Pet airways」は、客席部分にケージを設置し、飛行中はペット・アテンダントが常時モニターを監視、体調を管理してくれる。体調に異変があった際は最寄りの空港に緊急着陸し、獣医と連絡を取り対応してくれるそうだ。ペット専用なので飼い主は別途到着地でピックアップするシステムになっている。このようなサービスがあると安心して長距離の移動もでき、行動範囲も広がりそうである。このペット専用飛行機でペット専用TV番組が視聴できるとなおいいかもしれない。
ペットとの日常生活で、まだまだ不自由に思うことも少なくないが、このような充実したペット向けサービスがあれば、愛犬との生活をより快適に楽しむことができそうである。