英国第5位の都市シェフィールドのモバイル事情

KDDI総研 白井大介
KDDI総研 総務企画部 企画G。新市場の動向調査や新しいマーケティング手法導入などに取り組んでいる。昨年は英国に滞在し、学生生活を満喫した。日本に帰ってからは妻に対する罪滅ぼしの意味も込めて、週末は一日中子どもと遊んでいる。


シェフィールドの町並み

 イングランドの中部に位置するシェフィールドは、人口50万人程度の英国第5の都市である。シェフィールドは、英国の中で、ロンドン、バーミンガム、リーズ、グラスゴーに次いで人口が多い都市であるが、人口が多いのは非常に面積が広いためであり、隣接するマンチェスターなどと比べると、繁華街の大きさなどでは見劣りする。街を歩いていると時々狐に出会ったり、家の庭にはリスが来たり、石造りの古い家並みがあったり、地元住民が非常に親切だったりと、良い意味でのイングランドの田舎を感じる土地でもある。

 かつて工業都市であったシェフィールドは、市内の中心にある大きな2つの大学を中心に、教育産業を中心とした都市になっており、学生が非常に多いという特徴がある。市の中心部を歩くと、スマートフォンを利用している人をよく見かける。iPhoneのほか、LGやHTC、サムスンなどアジア系の黒色を基調としたスマートフォンを利用している人が多い。

 パブなどに入っても2店に1店くらいの割合でWi-Fiが無料で利用でき、ビールを飲みながらネットを利用している学生を良く見かけ、一見すると日本とそれほど変わらない。また、私は昨秋の英国滞在中、モバイル事業者「3」のMiFi(いわゆるモバイルWi-Fiルーター)で、市内のさまざまな場所でインターネット接続を試みたが、どこでもほぼ問題なく接続でき、利用エリアもしっかりと整備されている印象を受けた。

 シェフィールドに住む人々の携帯電話の利用の仕方をよく観察してみると、日本人の使い方と大きく異なる部分も見られた。まず驚くのが、通話時間の長さと、電車・バスの中でもかまわず話す光景である。特にスマートフォン保有率が高い若者は、Skypeを利用し、バスに乗ってから降りるまで、数十分話していることもある。日本のように、電車・バスの中で携帯電話を使いゲームをしたりメールを書いたりしている人は非常に少なかった。英国人は読書好きで有名だが、バスの中でも本を読んでいるか新聞を読んでいるか、おしゃべりをしているかのいずれかの人が圧倒的に多い。さらに、留学生が地元の友達などに電話をかけるときにもSkypeを利用し、数時間おしゃべりをしている姿をよく見かけた。

Orangeのショップ

 シェフィールドの街を歩いていて気付くのは、携帯電話ショップの少なさである。日本のようにいたることころにあるという訳ではなく、私が見た限りでは市街地中心部にキャリア毎の専売店があるのみであった(ロンドン中心部には日本の東京並みに携帯電話ショップが並んでいた)。

 ところがバスの中で読んでいる人を良く見かけるMetroというフリーの新聞紙面を見ると、およそ2割は携帯電話会社の広告が占めていたこと、数は少ないが地元の携帯電話ショップはいつもにぎわっていたことなどを考えると、携帯電話自体の存在感は日本と似たりよったりかもしれない。

 ただ、現地の企業人らと話をする中では、携帯電話会社のカスタマーサービスやサポートは非常に評判が悪かった。また、テレビ広告を見ると、携帯電話のテレビ広告は日本ほど多くはなく、また地味である。有名な俳優はほとんど出てこず、料金プラン等のCMが流れるのみであった。これは、英国では、テレビ広告のプレゼンスが日本と比べて低く、タレントがテレビ広告に出演するのは落ち目のサインという事情もあるようだ。

(白井大介)

2011/4/27 12:31