本日の一品

描くだけで配線ができる不思議なペン「テクノペン」

見た目もペン先も修正ペンのようなテクノペン

 電子工作をやっていると、たまに電気回路にどうしても欠かせないものとはなんだろう、などと小難しいことを考えたりすることがある。あまり意味のないことのように思えるが、必要なものについて考えることにより、無駄を洗い出すことにもなるので、簡潔な回路を作るためには重要なことなのだ(ということにしておく)。

 まずどうしても必要なものは電源だろう。電源といえば電池だったりコンセントから来る100VのACだったり、最近ではUSBだったりするわけだが、これはさすがになくすわけにはいかない。いくら優れた回路でも電源なしではただの物体でしかない。

 そして次に必要なのはと考えると、「配線」ではないかと筆者は考えた。電源とさまざまな電子部品をつなぎ、回路としてひとまとまりのものとするための重要な構成要素、それが配線だ。また、回路設計者の意図や思想が最も強く出るのも配線だろう。電子工作とは、配線を行う工作だと言っても過言ではないかもしれない。

 すでに配線が済んでいるプリント配線基板を使わない場合、配線には銅線を使うのが一般的だと思うが、ちょっとした回路を試してみたい場合やプリント基板の配線をミスで少し壊してしまったという時に便利だと思われるものがあったので紹介したい。谷口インキ製造株式会社が製造している「テクノペン」だ。

 テクノペンの見た目はペンというより“赤い修正液”だが、中には白色ではなく銀色の導電ペーストが入っている。この導電ペーストの中には銀粒子が含まれており、乾くと電気が流れるようになっているわけだ。使い方も修正液と同じ要領で、回路にしたいところに塗り、自然乾燥かドライヤーで乾燥させれば電気が通るようになる。ボールペンのようにさらさらと回路が描けるわけではないが、扱いに慣れれば手早く回路が描けるようになるだろう。

 今回は試しということで、厚手のメモ用紙の上に簡単な回路(配線)をテクノペンで描き、その上に「Lilypad Arduino」という衣服に縫い付けることのできるマイコン基板用の周辺基板を載せて、LEDを光らせてみた。Lilypadは電気が通る糸を使って配線を行うことを前提としているため、基板の表側と同じ端子が裏側にも露出しているのだ。その端子とテクノペンの配線が接触することにより電気が流れ、無事LEDが点灯した。端子との接点部分は導電ペーストを厚めに塗って盛り付けるのが成功のポイントだ。

 導電ペーストには耐熱性が無いため、テクノペンの配線にハンダごてを当てると線が蒸発してしまい、配線が切れてしまうということだが、ハンダ付け済みのプリント基板やフィルム基板の補修に使うのも便利そうだ。

 実際に使ってみて、さすがにテクノペンだけですべての電子回路を作るというのは難しいと思ったが、あると便利なものであることは間違いないと感じた。導電ペーストには有効期限(5度以下推奨、家庭用冷蔵庫で保存した場合で1年)があるため、常備しておくのは難しいかもしれないが、こういうものがあると知っておくと何かの時に役に立つかもしれない。

導電ペーストで回路を作成してみた。大きい基板には電池(CR2032)と電源スイッチが、小さい基板には白色LEDが搭載されており、基板の端子は裏面にもある
描いた回路上に基板を載せて電源スイッチを入れたところ。テクノペンの線に接触していれば電気が通り、このように置いただけで点灯した。長い方の配線で8.7Ω、短い方で3.3Ωだった。なお方眼は5mm
製品名製造元購入価格
テクノペン谷口インキ製造2780円

大木真一