スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

スマホより便利? デジタル簡易無線でクイックに通話♪

スマホより便利? デジタル簡易無線でクイックに通話♪

 一昔前と比べると、スマートフォンなどの携帯電話での通話はヒッジョーに実用的になりました。まあ街中ならどこでも通話可能。郊外でもだいたいOKで、住宅があるような場所なら通話・通信圏内だったりすることが大半です。一昔前は、都市部でも通話・通信ができない(基地局と端末が通信できない)場所が点々とある「穴だらけ」状態がアリガチでした。

 ただ、現在でも「スマホやケータイだと連絡を取るのに支障がある」というケースがけっこーあります。ちょっと山に入ると通話圏外とか。また、頻繁に連絡を取る場合、スマートフォンなどの携帯電話だと「いちいち電話をかけたり受けたりするのが面倒」みたいな面倒もあります。

 そんなときに便利なのが「デジタル簡易無線」! クリアな音声で比較的に遠距離間で使えるデジタルなトランシーバー! 書類申請程度で使えるハードルの低い無線なんです! てな感じで2008年くらいに登場したと思うんですけど、一般にはイマイチ認知されていない雰囲気です。が、使ってみるとヒッジョーに便利。場合によっては「ケータイよりずっと実用的な連絡手段」として使えちゃいます♪

デジタル簡易無線に対応した無線機(デジタル・トランシーバー)の例。写真左はどちらもアイコムの機種(IC-DPR3とIC-DPR6)ですが、ほかのメーカーからも多種多様な機種が発売されています。

 この「デジタル簡易無線」、いわゆるトランシーバーです。で、何がイイかを大雑把に書きますと、「山間部や海上や未開拓地でも使える」「比較的に長距離間で通信できる」「音声がクリア」といったあたり。端末どうしが直接通信するので、「基地局がないから通話圏外になっちゃった」といった携帯電話類にアリガチな問題とも無縁。トランシーバーなので「ボタンを押して話せば複数人の相手に声が伝わる」という簡便さもメリットかもしれません。

 ワタクシの場合、デジタル簡易無線を「広いショー会場」とか「クルマに分乗しての移動」とか「観光地での連絡取り」で使っています。使い始めて約1年くらい経ちますが、ヒッジョーに便利♪ 「声で連絡を取るにはスマホより便利!」と頻繁に思います。

 てなわけで今回は、ときとしてスマートフォンなど携帯電話類より便利かもしれないデジタル簡易無線についてアレコレ書いてみたいと思います。なお、以下で言う「デジタル簡易無線」とは、業務用通信やレジャー用通信に利用できるなどより一般的といえる「デジタル簡易無線・登録局」のことといたします(業務用の「免許局」もあります)。

デジタル簡易無線ってナニ?

 現在、免許取得などのハードルがない身近な「無線」いくつかあります。「特定小電力無線(特小)」や「市民ラジオ(CB無線)」がそうですが、以下で扱う「デジタル簡易無線(デジ簡)」もそのひとつです。レジャーやショップ内でよく使われている特定小電力無線と比べると、デジタル簡易無線は電波到達距離の長さや音質の良さなどで「圧倒的な優位性」があると思います。

 たとえば通信距離。電波が届く距離、つまり2つのトランシーバーがどの程度離れていても会話できるかですが、特定小電力無線が市街地でまあ100~400mくらいに対し、デジタル簡易無線だとフツーに1~2kmくらい届いたりします。実際に使うと、住宅地にある鉄筋コンクリート造室内と屋外の場合、特定小電力だと100m届かないこともありますが、デジタル簡易無線だと1kmくらい届いちゃうことが多かったりします。

 ちなみに、電波の送信出力は、特定小電力無線が0.01Wであるのに対し、デジタル簡易無線は最大5Wで、特定小電力無線の500倍あります。まずこの出力差で、デジタル簡易無線のほうが遠くまで電波が届くというわけです。

 ただし、その分、お値段や使用開始時の手間にも差があります。特定小電力無線の場合、対応トランシーバーを買うだけで使えます。免許などは一切不要。値段は機種により違いますが、1台6000円~1万円あたり。フツーに使うには最低2台必要ですが、それ以後かかるお金は電池代くらい。手軽に使い始められます。

 一方、出力が大きいデジタル簡易無線ですが、使うには総合通信局への申請が必要です(方法は総務省Webサイトに書かれていますのでご参照ください)。申請に使う書類は総務省ウェブサイトより入手できるほか、購入した無線機に付属していたり、無線機メーカーのウェブサイトから入手できたりもします。

 ……って、何となく非常に面倒臭そうな雰囲気ですが、基本、書類に書き込んで郵送するだけです。書き込み方の例なども開示されていますので、実際にやってみるとカンタンです。

 なお、わりと多くのケースで「包括登録」(2台以上のデジタル簡易無線の無線機を一括して登録すること)で申請すると思いますが、その場合、(1)包括登録申請(送付)→(2)登録状交付(受け取り)→(3)開局届けの送付、という流れになります。包括登録の場合、開局届けに無線機のシリアルナンバーなどを書き込むことにありますので、(3)より前のタイミングで使用する無線機を買うなどして用意することになると思います。

実際に送付した申請書類(包括登録)。赤い部分が自分で書き込んだ(使用者毎に違う情報)で、ほかはだいたい同様の内容になると思います。左と中央を送付して問題なければ、「無線局登録状」が送られ、登録の番号が得られます。その登録の番号や使用する無線機の情報などを書き込んだのが右の「開局届」です。開局届は「登録状を取得後、無線局を開設した日(つまり通信を始めた日)から15日以内に提出」する必要があります。

 それから、デジタル簡易無線は無線機本体がちょい高価です。機種により幅がありますが、1台2万5000円~4万円少々くらいのレンジ。使用には2台以上必要ですので、最初に5万円くらいはかかる計算です。ちなみに、ほかにかかるお金は、年間の電波使用料(包括登録は1台540円・個別登録は1台600円)です。

 あと、デジタル簡易無線はアンテナを市販品へと交換できます(合法)。長いアンテナに交換したりすると電波飛距離UP! ビックリするほど遠くまで届くようになったりするので、使っているとアンテナを買い増すなどのお金もかかってくるかもしれません。

 なお、特定小電力無線でもデジタル簡易無線でも、使う無線機は日本国内で合法である製品を選んでください。非合法品を使用すると、使用者が処罰されます。詳細は総務省Webサイトにありますが、「3000円なのに電波到達距離5km」とか超絶お得感と高性能感を醸し出している製品はだいたい違法品って感じ。商品説明に小さく「国内では使用できません」「海外仕様」とか書いてあったりする「知ってて売り逃げ」な品もあったりします。国内で使える「合法品」の商品説明には「総務省技術基準適合品(海外では使用できません)」と書いてあったりもします。

使い方は?

 デジタル簡易無線での会話はトランシーバーと同様。話すときにはPTT(Push To Talk/Press To Talk)ボタンを押します。ボタンを押しながら話すと、その声が相手に伝わります。こちらの声を伝えている間は、相手はこちらに声を伝えることはできません(半二重:half duplex)。

 通話する無線機は同じチャンネル(CH)に合わせておく必要がありますが、ひとつのチャンネル(周波数)のなかでは、どれか1台だけが送信しはじめると、ほかは受信しかできません。携帯電話のように「コチラもアチラも同時に話せる」ものではなく、順番に発言して会話していくわけです。

 使い方が携帯電話とはちょっと違うにしても、「ボタンを押して話せば声が伝わる」というシンプルさと素早さ。これは便利です。「あっ」と思ったらボタン押して「はいソコで止まってください!」などと「今すぐのタイミング」で指示を出すこともできますし、「うわーっ」と思って即ボタンを押して「見ろっ空から巨大な隕石が!」と言えばメンバー全員に地球への隕石激突を知らせることも可能です。携帯電話だとずっと通話し続けている必要があるので、こういう使い方には向きません。

 ご参考までに、ワタクシが使用中のアイコム「携帯型デジタルトランシーバー IC-DPR6」(公式ページ)の場合ですが、バッテリー持続時間は思ったより長いという印象です。泊まりがけ2日間のロケで使いましたが、電源をオンにしていた時間は1日目が10時間+2日目が6時間の計16時間、通信回数は50回程度で、それぞれの通信時間は10~20秒程度。その結果、バッテリー残量表示はフルで、まだまだ使えるという印象でした。

 もちろん、用途によってさらに通話し続ける必要があれば、バッテリー持続時間はグッと短くなると思います。ただ、連絡を取る回数がそれほど多くなく、会話自体も短くて済んでしまうような使い方なら、意外なほど長時間使えてしまうという感じです。

どのくらい飛ぶ?

 誰もが気にするのが「電波が飛ぶ距離」=「話せる距離」こと通信距離だと思います。デジタル簡易無線のトランシーバーの最大出力は5W(機種によってそれ以下のものや、それ以下の出力に切り換え可能のものもあります)ですが、たとえば5W出力のアイコム「携帯型デジタルトランシーバー IC-DPR6」(公式ページ)の場合、メーカー公称の通信距離が「1~4km」となっています。

 ただ、障害物の多寡や地形などによって距離はけっこー大きく変わってきます。トランシーバー本体付属の短いアンテナを使用した場合で、たとえば市街地で室内・屋外の通信だと数百メートル程度しか通信できないことがありますが、部屋から外に出たらいきなり2~3キロの通信距離が伸びたりすることもあります。ビルがあまりない場所なら、3~4階のベランダから6~7キロ離れた距離の相手と会話できるようなことも。環境や条件によって通信距離はけっこー大きく変わります。

 そこで、ワタクシが試した範囲での通信距離をご参考までに少々ご紹介。使用したのは前述のアイコム「携帯型デジタルトランシーバー IC-DPR6」×2台(両方とも5W出力に設定)で、アンテナは付属品で試しました。4つのケース別に見ていきましょう。

ケース1 鉄筋コンクリート造建物室内と屋外での通信

 室内側は2階で、南側に横3.6×縦1.8mの開口部(サッシ)があるのみです。屋外側は自転車で移動しての通信です。まず、屋外側が建物から北へ約800m離れたところで通信が途切れがち(声が断片的にしか伝わらなくなる)になり、さらに900mくらいまで離れると通信できなくなりました。屋外側がビルの多いエリアに入ったら通話不能になった感じ。ビルなど障害物の影響が大きいと思われます。

 続いて、移動側が建物の東方面へ移動していくと、建物から900mくらいの地点で問題なく通信できました。声もクリア。今度は建物の南方面約1.4kmの地点に移動しましたが、そこでも問題なく通信できました。さらに西側約1.1kmの地点に移動しましたが、そこも問題ナシ。ちなみに、最初の北方以外は、ビルなどが少ない住宅地です。

 ちなみにこれ、拙宅とその屋外での通信テストです。自宅と屋外(よく移動するエリア内)でのトランシーバー通話ができたら便利だな~と思って試したんですけど、駅前のビル群エリア以外ならだいたい通信できました。買い物に出掛けた家族に「ついでにコレ買ってきて~」などと伝えられたりして、実用的かも! みたいな。

 注目していただきたいのは、「鉄筋コンクリート造建物室内と屋外での通信」ということです。同じ条件で「特定小電力無線」のトランシーバーで実験すると、屋外側が建物から200m程度離れたあたりで通信不能になってしまいます。特定小電力無線トランシーバーでも、開けた場所なら500~600mの通信はわりと楽勝で、条件が良ければ2km近い距離での通話も可能。ですが、鉄筋コンクリート造室内と外となると、わりと最悪の条件なので、あまり実用的には使えません。その点でけっこー実用的な通信距離が得られるデジタル簡易無線トランシーバーは、さすが高出力という印象です。

ケース2 イベントホールでの通信

 幕張メッセやパシフィコ横浜にて各種イベントが開催されるとき、たまに同行者とはぐれてしまうことがあります。そこでデジタル簡易無線トランシーバーを使ってみました。

 結果だけ書きますと、幕張メッセの1-8ホール(公式ページ)では、1ホールと6ホールの間で通信できました。7~8ホールは入れる機会がなくテストできず。

 それから、パシフィコ横浜の展示ホール(公式ページ)。こちらでは、HALL AとHALL Dの間で、双方がどこに居ても通信できました。

 こういった展示場などで、複数グループに分かれて取材するとか見物して歩くという場合、デジタル簡易無線トランシーバーだと手っ取り早く連絡できて非常に実用的。3人(3グループ)以上なら、ボタンを押して話すだけで全トランシーバーに声が届きますので、携帯電話類とは違った利便があると思います。

多用しているIC-DPR6。多くのデジタル簡易無線トランシーバーは小型で持ちやすく、非常に手軽に操作できます。クリップで胸元やバッグに装着しておき、必要があれば即、相手と通信できてとても便利です。

ケース3 移動中のクルマどうしでの通信

 2台のクルマのなかでそれぞれトランシーバーを使い、移動中に連絡を取るという使い方です。クルマの距離は離れても1km程度で、距離的には大したことはありませんが、「車内」「移動中」というのはどうなんでしょう?

 結果、どんな状況でも通信できました。高速道路で移動中、起伏の多い山間部のワインディングを走行中、やや見通しの悪い市街地~ビルが多い市街地まで、会話が途切れがちになるようなこともなく通信できました。

 じつはコレ、クルマ関連のロケ撮影時の通信。被写体になるクルマと、カメラマンが乗った撮影側のクルマで、走りながら撮影するような状況です。カメラマンが路傍で構えて走り抜けるクルマを撮ることもあります。そういう場合には、トランシーバーの「ボタンを押して話すだけで伝わる」という即時性が非常に役立ちます。走行中に「少し車速落としてください~」と指示を出せたり、「赤いクルマが通り過ぎたら走り始めてください」などと合図したりできます。

 あと、片方のクルマの事情で急に立ち寄る場所を変えるときなども便利。高速道路走行中に「すいませんが次のサービスエリアに入ってください、トイレ休憩です~」みたいな。複数台のクルマで出掛けるときにも、かな~り役立つデジタル簡易無線です。

ケース4 ホテル4階とクルマでの通信

 取材時にツイデ的に行った実験ですが、ホテル4階と買い出しに出掛けたクルマ(車内)での通信です。場所は長野県中野市で、志賀高原の麓の街という感じのエリアです。ホテルは標高700mくらいのところにあり、通信相手が移動する街は標高400mくらい。高いビルはなく、見通しが良いエリアです。

 結果、6.5kmくらいの距離で問題なく通信できました。ホテル側は窓際での通信ですが、見通しが良いと付属アンテナのみでもかなり電波が飛ぶようです。音声もクリアです。

 ただ、山をひとつ挟むと急激に通信状況が悪化します。ホテルの南側には標高1200mくらいの低山がありますが、その向こうにクルマが移動すると、通信は途切れがち。やり取りする言葉も断片的にしか聞こえず、実用レベルでは会話できませんでした。

 てな感じで電波が飛ぶデジタル簡易無線。付属アンテナだけでも、けっこー活用幅が広いと思います。また、これに加え、アンテナをより長いものに交換したりすると、もっと電波が飛んでくれるようです。じつはそういうのも使用中で、アンテナを長く高性能なものに変えるだけで「あらま!」というほど飛びがよくなったりするんですけど、今回はそこまで掘り下げません。デジタル簡易無線トランシーバー用として、もちろん合法的に使える各種アンテナが発売されていますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

携帯電話類との違い

 最後に、デジタル簡易無線と携帯電話類の違いを見てみましょう。デジタル簡易無線のメリットとデメリットを見ていく感じで。

 携帯電話類は、基本的に何かしらの「インフラ」が必要です。敷設する通信回線が必要ですし、通信回線と端末を結ぶ電波をやり取りする基地局やアンテナも必要です。そういったインフラがないと携帯電話類は「圏外」となり、通信できません。

 一方、デジタル簡易無線は端末と端末が直接電波で通信しますので、いわゆる「インフラ」は不要。端末と端末が「電波をやり取りできる距離内にある」なら使えます。また、インフラを使う必要がないので、そのためのコストもかからず、基本的には充電に必要な僅かな電気代と年間の電波使用料くらいしかランニングコストはかかりません。

 通話という観点では「無料でいくらでも話せる」というシクミではありますが、連続して電波を出せるのは5分以内(つまりこちらが話し続けられるのは1回5分まで)などの制限がありますので、携帯電話類の感覚で長電話はできません。会話も一方通行で順番に行うので、普段&普通の会話をするような用途にも向きにくいでしょう。

 PTTボタンを押して話せばその声が即伝わるというのも、デジタル簡易無線の大きな利便です。何しろカンタンでお手軽。スマートフォンにあるような高機能で便利なコミュニケーション機能はありませんし、アプリを入れて機能拡張というようなモノでもネットに接続して云々というモノでもありませんので、通信手段としては原始的。でもその分、陳腐化しにくい通信機器と言えるかもしれません。

 トランシーバーの類に初めて触れる人にといって戸惑うのは、基本的には「語りかける相手を選べない」という特性だと思います。携帯電話の場合は、コチラの端末から特定のひとりの端末に電話をかけて、2人だけで会話できます。が、デジタル簡易無線の場合は、基本的にはそういうコトはできないというか、「2人だけで会話するという思想ではつくられていない」というイメージです。

 デジタル簡易無線で通信する場合、コチラとアチラの端末は「同じチャンネル(ch)」に設定する必要があります。合計30ch(うち15chは通信開始時の待ち合わせ場所的なchなので連続使用は不可)あり、たとえばコチラのトランシーバーの設定を20chとしたら、アチラのトランシーバーの設定も20chにしないと、話せません。

 双方とも20chにすれば話せるわけですが、同時に、知らない人が20chに合わせた場合、通信(つまり会話)をその知らない人に聞かれてしまう状態になります。デジタル簡易無線などの無線機は、そういうモンであり、そんな特性を備えているんです。そしてそういった無線機での会話などを聞く(傍受する)ことは合法。会話内容を漏らしたり窃用したりすると「盗聴」ということになって違法なんですが、まあ要するにトランシーバーとかの会話は基本的に放送と同じで、受信できちゃうと聞けちゃうんです。

 ただ、この特性はある観点で非常に有意義です。たとえば「通信開始時の待ち合わせ場所的な役割をしている15ch」は、多くのユーザーが集いやすいCHです。自分になにか緊急事態が起きたとき、この15chで助けを求めれば、それを誰かが聞いてくれて、救助の手をさしのべてくれるかもしれません。

 まあそれはさておき、「会話とかぜーったいに聞かれたくない!」という人は、携帯電話などを使うのが無難です。って元も子もないコトを言い始めているワタクシですが、「通信は誰かに受信されるのがフツー」という、無線機の「時として有り難くない特性」を抑える機能は、あります。

 たとえばデジタル簡易無線にある「秘話キー/秘話コード」。3万2767通りの数値からひとつを選び、これを「秘話キー/秘話コード」とすることで、電波に乗って飛ぶデジタル音声が暗号化されて物凄く傍受されにくくなります。もちろん、コチラもアチラも無線機に同じ「秘話キー/秘話コード」を設定する必要がありますが、まあこれでだいたい、会話内容が聞かれちゃう可能性を下げられます(無線通信で傍受~盗聴を完全に阻止することはできません)。

 ただ、「秘話キー/秘話コード」を設定したとしても、同じchを使っている知らない人がいると、その人の声とかが聞こえてきちゃうことがあります。コチラとアチラで「次、どのアトラクション行こっか~」「その前になんか食べようよ♪」といったレジャーな会話をしているなか、突如「搬入開始ですー担当者は集合してくださいーどうぞ」とか「例のテトラポット付近でチョー釣れてるよートップでキてるからこっち来なよー」とか関係ない人の会話がガスガス入ってくることがあります。でも、そういうモンなんです。

 とは言え。そういう声が聞こえてきちゃうとイヤですよね? そんな場合は「ユーザーコード(UC)」を設定すれば、関係ない人の声が聞こえてくることがなくなります。「ユーザーコード(UC)」は511種類の数値からひとつを選べますので、それを仲間うちの各トランシーバーに設定。そこそこ独自っぽい数値を設定しておけば、要らない声が入ってくることをだいたい防げると思います。

 てな感じで、携帯電話類とは違い、デジタル簡易無線は基本的に会話などの内容は“放送されちゃう”モノです。自分の声がダダ漏れで、知らない人の声もこちらへダダ漏れで聞こえまくり。でも声を暗号化したり知らない人の声を聞こえないようにしたりする方法があり、そうすれば、携帯電話類っぽく2人以上にて順番で言葉のやり取りができるというわけです(同時通話はできません)。

 携帯電話類とはかなり使い勝手が異なるデジタル簡易無線。でも用途にハマれば確実に便利なデジタル簡易無線。携帯電話類より手っ取り早く連絡が取れたりしますし、防災方面の備えとしてもけっこーイケてると思いますので、興味がある方はぜひ一度調べてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。