法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「コマース戦略」で生活革命を目指す、au 2015 Summer Selection

 5月14日、前日のNTTドコモに続き、auは2015年の夏商戦へ向けた「au発表会 2015 Summer」を開催し、スマートフォン7機種、タブレット2機種、Android搭載フィーチャーフォン1機種を発表した。

 同時に、これまでの「3M戦略」に続き、auショップを活用した「コマース」(物販)に取り組む方針を示した。auと言えば、auスマートパスやauスマートバリュー、au WALLETなどで、新しい路線を切り開いてきたが、今回のコマース戦略はどう受け止められるだろうか。発表会の詳細については、本誌の速報をご覧いただくとして、今回の発表内容の捉え方とそれぞれの製品の印象などについて、解説しよう。

スマートフォンへの移行は進んだけれど

 この数年間、携帯電話各社はスマートフォンを積極的に展開し、多くのユーザーに移行を促した。その結果、市場全体としてはスマートフォンが半数近くまで普及し、KDDIとしてのスマートフォン浸透率も今年3月末の段階で、54.3%に達している。auがはじめてAndroidスマートフォンを世に送り出したのが2010年の「IS01」や「IS03」だったことを考えると、わずか5年で、よくここまで市場が大きく変わったなという印象だ。

 しかし、その一方で、スマートフォンの普及と利用拡大がやや頭打ちになってきたのではないかという見方もある。昨年、フィーチャーフォンがスマートフォンよりも出荷台数が多かった状況に対し、「ガラケー復権」などと騒ぎ立てるのは、いささか的外れな印象は否めないが、スマートフォンに移行してみたものの、あまり積極的に使っておらず、「とりあえず、通話とメールは使うけど……」「家族との連絡にLINEは使っているけど、ほかは……」「動画は見たいけど、お金もかかるので、ときどき」といったユーザーも少しずつ増えているようだ。特に、プライベートではあまりパソコンやインターネットを積極的に使ってこなかったユーザーは、スマートフォンでインターネットが身近になる一方で、報道などで個人情報漏えいなどのリスクなどが訴えられるあまり、スマートフォンを積極的に活用しようとせず、決まったことにしか使わないユーザーが増えているようにも見受けられる。

 今回、auは2015年夏商戦へ向けた新モデルの発表に加え、リアルサービスでの「生活革命」という方針を打ち出してきた。auはこれまで「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」という「3M戦略」に基づき、さまざまなコンテンツをいつでもどこでも最適なネットワークで、好みのデバイスで利用できる環境を構築することを提案してきた。その流れで、アプリなどが自由に使える「auスマートパス」に始まり、固定回線などと組み合わせることで料金を割り引く「auスマートバリュー」、スマートフォンやタブレットなどのauの利用料金で生まれたポイントをリアルの店舗で使ったり、ポイントを貯めやすくする「au WALLET」を提供してきた。改めて説明するまでもないが、いずれも実質的にNTTドコモやソフトバンクが追随しており、auは先陣を切って、モバイルサービスによる「生活革命」を実現してきた格好だ。とは言うものの、前述のように、スマートフォンを必ずしも積極的に利用しないユーザーが散見され、このままでは将来的な市場の拡大や成長が期待できなくなってしまう危惧もある。

 そこで、auは今回、「au WALLET Market」と題し、auショップを活用した物販に取り組むことを発表している。こう書いてしまうと、「auショップがスーパーやデパートみたいになるの?」と考えてしまいそうだが、お客さんがauショップに来店した際、待ち時間にお客さんの端末や店頭のデジタルサイネージなどを活用し、ショップスタッフのガイドを受けながら、Eコマース(オンラインショッピング)を実際に楽しんでもらおうという取り組みだ。

 おそらく、本誌読者のように、リテラシーの高いユーザーにしてみれば、「買うなら、自分でネットで買うから、別にガイドなんていらないよ」「なんで、わざわざauショップに出向いて、他のものを買わなきゃいけないの?」と言いたいところだろう。かく言う筆者自身もオンラインショッピングを積極的に利用しており、生活用品などもネットで買うことが当たり前になりつつある。特に、最近はAmazon.co.jpやヨドバシカメラなどが一定の条件を満たした注文に対し、送料無料で配送するようになってきたため、今まで以上に何でもオンラインショップで頼んでしまう傾向が強くなっている。

 慣れてしまえば、どんどん使うようになるが、まったくの未経験者にとっては、クレジットカード情報をインターネット上に入力することをはじめ、どうやって目的の品物をネット上で探せばいいのかがわからないなどの障壁があり、「au WALLET Market」では、その部分をショップスタッフのガイドによって、クリアしていこうという考えのようだ。言わば、ユーザーのリテラシーの底上げを狙おうとしているように見受けられ、だからこそ、auスマートサポートが関わることも示唆されているのだろう。ただ、ガイダンスが受けられるだけではあまりメリットがないため、発表会のプレゼンテーションでも触れられていたように、auならではの「ちょっといいもの」を販売することを考えているようだ。どういった商品が調達されてくるのかは、お手並拝見といったところだ。

 こうした取り組み自体は、全国に2500店舗のauショップがあり、月に1000万人が来店するという状況を考えれば、面白いアプローチと言えそうだが、いくつか気になることもある。たとえば、この取り組みは当然のことながら、ショップスタッフへの負荷がかなり大きく、auとして、そこをしっかりフォローできるのかが気になる。携帯電話販売店のスタッフはあまり定着率が良くないと言われ、ただですら光回線の販売などで、取り扱うメニューが増えている状況において、さらに新しい販売項目を増やし、ショップスタッフが対応できるのだろうか。特に、携帯電話とは無関係のお米やミネラルウォーター、特産品などをまったくの素人であるスタッフが説明して、専門店やデパートに迫る買い物体験を提供できるのだろうか。

 また、お客さんがauショップに訪れたときの待ち時間に体験してもらうというアプローチは、時間に余裕のある人ならいいだろうが、少しでも早く手続きを済ませたいと考えている人にとっては、ちょっと不親切な印象が否めない。なかなか手続きの時間を短縮することは難しいのかもしれないが、待ち時間にau WALLET Marketの対応をしてもらうくらいなら、さっさと手続きを進めてくれよと考える人も多いはずだ。いずれにせよ、実際の展開はもう少し先になるため、とりあえずはトライアルをやっていたau SHINJUKUの様子などで判断するしかないが、ユーザーとしてはauショップでの物販がどのように展開されていくのかをじっくり見極めるようにしたい。

auオリジナルモデルをラインアップ

 今回の発表会では「au WALLET Market」の説明に時間が割かれたが、プレゼンテーションでは冒頭から端末ラインアップを説明するなど、端末にも力が入っている。

 まず、スマートフォンについては、既に4月24日から販売されている「Galaxy S6 edge SCV31」も夏モデルとして扱われ、合計8機種が新たに店頭を賑わすことになる。今回の夏モデルのテーマとして、auが掲げたのは「カメラ」で、センサーのスペックだけでなく、レンズでは「isai vivid LGV32」がF値1.8、「Galaxy S6 edge SCV31」がF値1.9、機能では「AQUOS SERIE SHV32」のスーパースロー映像、「Xperia Z4 SOV31」のプレミアムお任せオートの料理モード、「HTC J butterfly HTV31」のリアルタイム美肌、「TORQUE G02」の海中撮影など、各モデルに個性的なものが搭載されている。ちなみに、カメラで撮影した写真にも少し関わりがある点として、今回の夏モデルから「データお預かりアプリ」を標準で搭載しており、写真や動画、アドレス帳、アプリ一覧などをauのサーバー上やメモリーカードに保存しておくことができる。このアプリの標準搭載に伴い、これまでauのスマートフォンにプリインストールされていた「Friend Note」は搭載されなくなる。Friend Noteを否定するつもりはないが、他社のクラウドを利用した電話帳サービスに比べると、使い勝手が良くない面もあり、現実的な判断と言えそうだ。

 次に、ネットワークについては、全機種が受信時最大225Mbpsのau 4G LTE、受信時最大220MbpsのWiMAX2+に対応しており、音声通話についても全機種がau VoLTEに対応し、シンクコールを利用することができる。VoLTEについては、4月にiPhone 6/6 Plusも対応し、今回同時に発表されたAndroid搭載フィーチャーフォンの「AQUOS K SHF32」も対応しているため、比較的新しい機種のauユーザー同士は高音質通話を楽しむことが可能だ。

 ラインアップ全体については、auとして、「Galaxy S6 edge SCV31」「Xperia Z4 SOV31」「AQUOS SERIE SHV32」の3機種を『ハイスペックスマートフォン』、そのほかの5機種を『auオリジナルスマートフォン』と位置付けている。Galaxy S6 edgeやXperia Z4のように、各社が同じスマートフォンを扱う中、auが独自のスマートフォンを手がけていることを強調したいのだろうが、「isai vivid LGV32」や「HTC J butterfly HTV31」はハイスペックスマートフォンと比較してもほぼ同等のスペックであり、ユーザーにとっても今ひとつ不親切な区分と言えそうだ。

 ラインアップ全体のスペックを比較すると、画面サイズは7機種中6機種が5インチ以上のディスプレイを搭載しており、最大サイズは「isai vivid LGV32」の約5.5インチになる。画面サイズが直接、影響するボディ幅は、約70~76mmの範囲に収められているが、これ以上のコンパクトなモデルを望むのであれば、2015年春モデルとして登場した「AQUOS SERIE mini SHV31」や「INFOBAR A03」などを選ぶしかなさそうだ。解像度については、7機種中3機種がクアッドHDクラス、フルHDとHD対応が2機種ずつで、全体的にディスプレイはハイスペックな印象が強い。このあたりは過去の経験上、ディスプレイのスペックで遅れを取りたくないauの心情を表わしていると言えそうだ。

 CPUについては、NTTドコモの2015年夏モデルの発表会記事でも説明したように、「Snapdragon 810/MSM8994」が気になる存在だ。今回は7機種中3機種が「Snapdragon810/MSM8994」を搭載し、「Galaxy S6 edge SCV31」はドコモ版と同じくオクタコアの自社製「Exynos 7420」、「isai vivid LGV32」は「Snapdragon 808/MSM8992」、京セラ製の2機種は「Snapdragon 400/MSM8928」をぞれぞれ搭載する。「Snapdragon 810/MSM8994」については、今回、タッチ&トライで試用した限り、NTTドコモのときと同様、極端に熱くなるような印象はなかった。ただ機種ごとにCPUの実装状態が違い、筐体の材質や構造でも放熱状態が異なるので、熱が気になるユーザーは購入前にデモ機で、少し負荷の大きい動画再生などを試してみることをおすすめしたい。

 タブレットについては「Xperia Z4 Tablet SOT31」と「Qua tab 01」の2機種が発表された。auは従来からの3M戦略で「マルチデバイス」を提唱し、1人のユーザーがスマートフォンとタブレット、フィーチャーフォンとタブレットといった組み合わせで使うことを提案してきた。ただ、実際にはなかなかこれが浸透せず、最近ではMVNO各社のSIMカードを組み合わせ、SIMロックフリーのタブレットを利用するユーザーも増えてきていることから、携帯電話事業者が提案するタブレットとしての独自性が求められる状況にある。そのことを踏まえ、今回はタブレットでもauオリジナルのモデル「Qua tab 01」を開発したようだ。これに加え、タブレットの画面にスマートフォンの画面をMiracastを利用することで、ウィンドウ表示をして、新着の通知などを確認できる「auシェアリンク」という機能も提案されている。

 auとして、積極的にタブレットに取り組もうという姿勢は評価できるが、タブレットの普及には料金面でのサポートをはじめ、未経験のユーザーが具体的な利用シーンを思い浮かべられるようなアプローチが必要だ。auに限った話ではないものの、そういった取り組みがやや不足しているような印象は否めない。前述の「au WALLET Market」を展開し、auとして、オンラインショッピングをより幅広い層に展開したいのであれば、タブレットへの取り組みはもっといろいろな工夫が求められそうだ。

 そして、今年1月に引き続き、Android搭載フィーチャーフォンも発表された。プラットフォームにAndroidを搭載したフィーチャーフォンが登場した背景については、NTTドコモの発表会の解説記事でも触れているので、改めて説明しないが、基本的にフィーチャーフォンを構成する従来のプラットフォームやリソースが今後、継続できなくなる可能性があるため、Androidプラットフォームによるフィーチャーフォンを開発したというシンプルな理由がベースだ。既存のフィーチャーフォンユーザーに移行を促すため、Android搭載の折りたたみデザインのスマートフォンを開発したかったわけではない。そういった折りたたみデザインやスライド式ボディのスマートフォンは、すでに数年前に登場し、市場から消えている。

 今回のモデルは従来モデルと比較して、VoLTEに対応したことが最大の違いだが、わずか4カ月ほどの違いで、VoLTE対応の有無という違いができてしまったのは、やや残念な印象だ。発表会では「今度はVoLTEに対応させました」と話していたが、実状は昨年、au VoLTEのサービス開始が遅れ、春モデルの「AQUOS K SHF31」は開発中に接続試験ができず、VoLTEには非対応のまま、市場に送り出さざるを得なかったわけで、VoLTE対応は当初の計画から考えていたはずだ。同じフィーチャーフォンでも他社とはユーザー層が違うため、一概に言えない部分はあるが、一般的にフィーチャーフォンユーザーは端末のライフサイクルが長いことを考えると、今年1月の段階で購入したユーザーがわずか4カ月の差で、VoLTEの有無という差を生んでしまったのは、ちょっと不満を持たれてしまうかもしれない。逆に、料金プランについては、従来モデル登場時に聞かれた反響を踏まえ、ダブル定額(VK)と呼ばれるパケット定額サービスを新たに用意するなど、フレキシブルな対応ができているだけに、やはりVoLTE対応の有無がわずか4カ月で、というのは、ちょっと残念な印象だ。今後のモバイル市場全体を考える上でもAndroidプラットフォームを採用したフィーチャーフォンは、重要なカギを握ってくると考えられるだけに、auとして、もう少していねいな戦略が必要ではないだろうか。

2015 Summer Selection 10機種をラインアップ

 さて、ここからは夏モデルのスマートフォン7機種、タブレット2機種、フィーチャーフォン1機種について、個別に説明したい。各機種の詳しい内容については、本誌の速報記事を参照していただきたい。発売中のモデルを除き、いずれも開発中のモデルであるため、最終的な製品とは差異があるかもしれないことをお断りしておく。

Galaxy S6 edge SCV31(サムスン電子)

 今年3月のMWC 2015で発表されたサムスンのフラッグシップモデル(発表会速報)。他のモデルに先駆け、4月24日から販売が開始されている。世界初のデュアルエッジスクリーンを搭載し、メタルとガラスを組み合わせた美しいボディに仕上げられている。クアッドHD対応の約5.1インチSuperAMOLEDを搭載しながら、ボディ幅は約70mmに抑えられており、側面部分が薄いこととも相まって、非常にスリムで持ちやすい。純正のクリアビューカバーなどを装着してもあまり気にならない仕上がりだ。

 NTTドコモ向けと違い、本体のROM容量は32GBと64GBのモデルがラインアップされ、microSDメモリーカードには対応しない。従来のGALAXY S5で実現された防水対応がなくなってしまったが、ワンセグ/フルセグチューナー、おサイフケータイには対応しており、今回発表されたモデルの中でもトップクラスの仕上がりとなっている。

Xperia Z4 SOV31(ソニーモバイル)

 今年4月にグローバル向けモデルとして発表されたXperiaシリーズのフラッグシップ「Xperia Z4」のau向けモデル(発表会速報)。Xperia Zシリーズを中心に、ソニーモバイルが展開してきたオムにバランスデザインを継承し、基本的なサイズやボディカラーはXperia Z3に似通っているが、側面は少し光沢の目立つ仕上げで、四つの角には、傷がついても塗装が剥げないように透明な樹脂パーツと塗装した樹脂パーツを組み合わせて装備するなど、新しい工夫も見られる。従来モデルなどで採用されていた側面のマグネット式充電端子はなくなり、底面にキャップレス防水対応のmicroUSB外部接続端子を備えるが、他社の対応状況を考えると、ようやく対応したとも言える。構造上、少しユニークなのが側面に備えられたSIMカードトレイで、nanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを1枚のトレイに載せて、装着する。

 カメラは今回発表されたモデルでトップクラスとなる2070万画素CMOSセンサーを採用し、ソニー製デジタルカメラでおなじみの「Gレンズ」、画像処理エンジン「BIONZ for Mobile」を組み合わせる。インカメラはXperiaシリーズで最高峰となる510万画素のCMOSセンサーを採用し、25mm広角レンズを組み合わせ、背景を入れ込んだ自分撮りを可能にする。オーディオ機能も充実し、Bluetooth接続時の高音質再生が可能な「LDAC」に対応する。進化を続けてきたXperiaシリーズの「ひとつの完成形」を謳うだけに、スペックも機能も充実しているが、さすがに初代モデル以来、2年以上、同じ基本デザインのモデルが何度もくり返しリリースされてきており、あまり新鮮味が感じられないのも事実だ。

AQUOS SERIE SHV32(シャープ)

 三辺狭額縁によるEDGESTデザインを採用し、約5.0インチのIGZO液晶を搭載したモデル(発表会速報)。従来モデルに引き続き、まさに画面だけを持ち歩くような存在感が印象的。ボディも幅70mm、高さ132mm、厚さ9.6mmと、比較的コンパクトで、女性でも持ちやすいサイズにまとめられている。3つのカラーバリエーションの内、グリーンははTORQUE G02のモノと並び、今回発表されたモデルではかなり目を引く。注目はカメラで、NTTドコモ向けでも実現されていたリコーのGRシリーズの開発チームによる画質改善認証プログラム「GR Certified」を取得し、光学手ブレ補正にも対応する。動画撮影については、210fpsでのスロー撮影の映像を再生時に10倍のフレーム補完をすることで、2100fpsのスーパースロー再生を可能にする。夏のイベントなどで、決定的なシーンを撮影したいときにはおすすめの機能だ。

 従来モデルから好評を得ている「エモパー」も「エモパー2.0」にバージョンアップし、一段と楽しむことができる。エモパー2.0では自宅だけでなく、外出時もイヤホンを接続していれば、話しかけてきたり、いつも乗り降りする駅で反応するなど、利用シーンが拡大しているのも見逃せないポイントだ。

isai vivid LGV32(LGエレクトロニクス)

 auとLGエレクトロニクスのコラボレーションで生まれた「isai」シリーズの第4弾モデル(発表会速報)。今年4月にグローバル向けに発表されたLGエレクトロニクス製「G4」をベースにしており、防水防じん、おサイフケータイ、ワンセグ/フルセグチューナーなどの日本仕様を盛り込んでいる。ディスプレイはG4でも採用されているIPSクアンタムディスプレイを採用し、サイズは約5.5インチと、今回発表されたモデルでは最大級となる。

 クアンタムディスプレイは量子ドット技術を活かしたもので、色再現性などに優れており、映像コンテンツなどを楽しみたいユーザーには最適。カメラは1600万画素CMOSイメージセンサーを採用するが、F値1.8という最高レベルのレンズに加え、センサーサイズも従来モデルよりもひと回り大きい1/2.6インチを採用し、3軸の光学手ブレ補正にも対応する。カメラに詳しいユーザーのためのマニュアルモードも用意される。LGエレクトロニクス製端末ではおなじみのノックコードも継承されているが、新たにisaiシークレットという機能が搭載され、ノックコードによって、モード設定を切り替えたり、着信などの通知方法をカスタマイズすることができる。auの2015年夏モデルでは、もっとも個性的でオリジナリティのあるモデルと言えそうだ。

HTC J butterfly HTV31(HTC)

 HTCとしては、2014年夏モデルのHTC J butterfly HTL23に続く新製品で、HTCがMWC 2015で発表した「HTC One M9」をベースに、日本向けの仕様を搭載したオリジナルモデル(発表会速報)。基本的なデザインなどは従来モデルのものを継承し、すっきりとした背面、本体前面の上下部分も含めたボディカラーなど、HTC製端末らしい仕上がりでまとめられている。

 防水、おサイフケータイ、ワンセグ/フルセグチューナーなど、日本仕様も充実している。特徴的なのは2020万画素のDUOカメラ、1300万画素のインカメラで、「リアルタイム美肌」など、自分撮りを意識した撮影機能が充実している。デュアルフロントスピーカーを搭載し、Dolby Audioとの組み合わせにより、5.1chのバーチャルサラウンドを実現できるため、ビデオコンテンツなどを臨場感のある環境で楽しむことができる。HTC製端末ではおなじみの「HTC Sense」もバージョンアップし、ウィジェットでは自宅や外出先、オフィスなどに合わせ、よく使うアプリを表示するなどのカスタマイズも可能。これまでのHTC製端末同様、使い込むほどに楽しめるモデルに仕上がっているが、日本市場でのアピールが足りない印象も強く、店頭での反応が注目される一台とも言える。

TORQUE G02(京セラ)

 従来モデルの耐衝撃耐水性能を継承しながら、新たに世界初の耐海水性能を備えたタフネスモデル(発表会速報)。海水は利用する国と地域によって、濃度などが異なるが、今回は日本沿岸の組成を模した人工海水を使い、性能を確保している。水中撮影にも対応しており、水中であることを検知すると、カメラも色味や歪みを最適化したモードに切り替わる機能も搭載する。従来モデルのMIL規格クリアをベースにした高耐久性能は継承され、新たに耐海水、耐氷結、耐荷重に対応する。

 ディスプレイは約4.7インチのHD対応IGZO液晶を搭載し、解像度がHDまでの対応ということもあり、他モデルに比べ、ロングライフが実現可能。京セラ製端末ではおなじみのスマートソニックレシーバーを搭載し、ディスプレイ全体が振動する形で受話音が聞ける。背面には2つのスピーカーを搭載し、着信音なども大音量で鳴らすことができる。センサー連携アプリも搭載するが、カシオのG-SHOCKとの連携による通知などもサポートする。かつて、タフネスモデルとして、auのラインアップで人気を得た最終モデル「G'zOne TYPE-X」で採用されたライムグリーンを採用するなど、印象的な取り組みも好感が持てる。ディスプレイの大型化により、ボディがひと回り大きくなった感は否めないが、ユーザーが期待する機能をしっかりと充実させた印象で、「最強、再び」の名に相応しいモデル。アウトドア指向の強いユーザーはもちろん、タフな利用シーンが多い現場系、海水を扱うことの多い漁業やレジャー関係など、ビジネスユースも含め、確実にタフネス性能が求められるユーザー層におススメできるモデルだ。

URBANO V02(京セラ)

 落ち着いた「大人デザイン」を採用したURBANOシリーズの最新モデルで、従来モデルで好評を得た防水、防じん、耐衝撃性能に加え、新たに耐振動や温度耐久のMIL規格もクリアしたモデル(発表会速報)。本体の構造も進化しており、ディスプレイ部のボディ周囲をわずかに高くすることで、落下時などにガラスを保護できるようにしている。

 京セラ製端末でおなじみのスマートソニックレシーバーも継承され、VoLTE通話時の聞こえ方もカスタマイズできるようにしている。ボディ形状は基本的に従来モデルの流れを継承しており、メタル素材による高級感のある仕上がりが特長。従来モデルで採用されていたワイヤレス充電がなくなり、ボディは約8.2mmまでスリム化されている。ワイヤレス充電の代わりに、今回は同梱の卓上ホルダによる充電が可能。ソフトウェアも進化を遂げており、文字入力の画面ではケータイのダイヤルキーを表示し、フィーチャーフォンと同じレイアウトで入力できる「ケータイ入力」も搭載する。URBANOシリーズというと、シニア層が想定されがちだが、基本スペックも充実しており、若い年代層も含め、上質なデザインを求めるユーザーにおすすめのモデルだ。

AQUOS K SHF32(シャープ)

 今年1月に発表された初のAndroid搭載フィーチャーフォン「AQUOS K SHF31」の後継モデルで、新たにau VoLTEに対応した(発表会速報)。昨年来、auが展開するau VoLTEに対応するスマートフォンとの高音質通話が可能。ただし、au VoLTE対応スマートフォンで利用できるシンクコールには対応していない。

 ハードウェアの基本仕様は従来モデルと共通で、ボタン部をタッチパッドのように使うことができるタッチクルーザーなども搭載する。LINEアプリについてはシャープのメーカサイトからダウンロードすることで利用できる。Google Playには対応していないが、「auナビウォーク」や「au災害対策」など、auオリジナルアプリを利用することができる。「ダブル定額(VK)」など、新しい料金プランも提供され、従来よりも手軽に持つことができるようになっている。

Xperia Z4 Tablet SOT31(ソニーモバイル)

 今年3月に開催されたMWC 2015で発表された「Xperia Z4 Tablet」の国内向けモデル(発表会速報)で、NTTドコモ向けモデルとほぼ同じ仕様。10.1インチのタブレットとしては世界最薄・最軽量を実現し、わずか約6.1mmの薄さに仕上げられている。実機を手に取ると、本当に薄い板か、大判のノート程度しかない印象。

 暫定値ながら、重量は393gに抑えられている。ディスプレイサイズは従来モデルと同じだが、狭額縁の採用で、従来モデルよりもひと回りコンパクトになり、持ち歩きやすくなっている。デザインはXperia Zシリーズでおなじみのオムニバランスデザインを継承する。ただし、背面や側面は軽さとのトレードオフもあり、樹脂製パーツで構成され、防水やワンセグ/フルセグチューナーなど、タブレット向けの日本仕様は搭載される。バスルームやキッチンでの利用など、幅広いシーンでの活用を可能にする。別売のBluetoothキーボードを組み合わせたパソコンライクな利用環境も実現しており、プリインストールされているマイクロソフトのAndroid版Officeとの組み合わせにより、ビジネスシーンでも活用しやすくしている。

Qua tab 01(京セラ)

8インチのWUXGA(1920×1200ドット)対応ディスプレイを搭載したauオリジナルのタブレット第一弾で、京セラが製造する(発表会速報)。3色のボディカラーをラインアップし、防水防じん、濡れた手で操作できるディスプレイなど、ホーム環境での利用も意識されている。スマートフォンとの連携が可能な「auシェアリンク」に対応し、スマートフォンの着信や通知などをタブレット側で知ることができる。デザインやスペック面での強い個性はないが、幅広いユーザーに訴求したいタブレットという位置付けであり、auの新しいオリジナルモデルとして、注目される。

「生活革命」はどこからやってくる?

 auはここ数年、auスマートバリュー、auスマートパス、au WALLETなど、次々と新しい戦略を打ち出し、他社が追随するほど、確実に成功を収めてきた。そのベースには、冒頭でも触れたように、「マルチユース」「マルチネットワーク」「マルチデバイス」という「3M戦略」があり、サービスも端末ラインアップもそこへ向けて、充実してきたという印象だ。これらの成功をベースに、今回は新たにauショップを使った「au WALLET Market」という取り組みを発表し、これまでの携帯電話会社にはなかった新しい領域への展開を図ろうとしている。NTTドコモは「+d」や「dポイント」による新しい経済圏を作ろうとしているのに対し、auはauショップによる新しい経済圏を作ろうとしているという印象だ。

 こうした取り組み自体を否定するつもりはないが、auショップは商店街やショッピングモールなど、既存のリアルな商圏の中に存在するわけで、そこでauのコマース戦略による新しい商圏を生み出していくのは、そう簡単に実現できるものでもないだろう。インターネットでのオンラインショッピングという観点で見ても地域やユーザー層によって、利用頻度に大きな差があるものの、それをわざわざauショップに出向いて体験するというのも今ひとつリアリティに欠ける印象だ。一般ユーザーの中には携帯電話ショップ、特にキャリア系のショップは端末購入や手続きなどのために訪れる場所で、「ヘタをすると、何か買わされてしまうのでは?」的なイメージを持たれ、警戒する声も耳にするくらいだ。もし、本当に今回の取り組みを積極的に推し進めるのであれば、ユーザーとauの信頼関係を今まで以上に厚くする必要があり、そのうえで、もっと気軽に来店しやすいショップ作りにも取り組んでいく必要があるだろう。今回のプレゼンテーションを聞く限り、こうしたユーザーとの接点の部分について、新しい方向性が示せた印象はほとんどなく、リアル環境における「生活革命」にはまだまだ遠いように見受けられた。

 逆に、端末のラインアップについては、非常にバランス良くまとまっている印象で、幅広いユーザーがさまざまなモデルを選べるように取り揃えてきた印象だ。ただ、今回の各社の発表を見てもわかるように、Galaxy S6 edgeやXperia Z4は他社での購入できるようになっており、SIMロック解除義務化となった現在、auとして、こうした共通モデルをどのように扱うのかは悩みどころだろう。その分、auオリジナルモデルであるisai vivid LG32、明確な個性を持つTORQUE G02などに力を入れていくことになるのかもしれない。

 今回発表されたモデルはすでに一部の機種の販売が開始されており、その他のモデルも6月以降、順次、販売が開始される予定で、au SHINJUKU、au NAGOYA、au FUKUOKAの直営店ではすでにデモ機の展示も始まっている。本誌でも各機種の開発者インタビューやレビュー記事が掲載される予定なので、こちらも参照いただきつつ、ぜひ、夏のお気に入りの一台を見つけていただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。