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リアルとネットでau経済圏を拡大へ~KDDI定時株主総会

au WALLETは流通総額8500億円が目標、定款にヘルスケア関連事業を追加

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 KDDIは、第31期定時株主総会を開催した。第1号から第5号までの議案はすべて決議された。株主総会では、代表取締役社長の田中孝司氏を議長として、第31期の報告と第32期(2015年度)の課題や取り組みが説明された。また株主からのいくつかの質問に回答した。

 第31期(2014年度)の業績や活動内容は、ビデオにまとめられ、順調に業績を伸ばしたことなどが報告された。第32期の目標は、営業利益の2桁成長、配当性向の30%を掲げており、営業利益は8200億円を見込む。

 同社は第32期までの3年間を中期計画としてまとめており、第32期はその中期計画の最終年度にあたる。田中社長は、「新たな成長ステージに向けた取り組み」として、3M戦略、グローバル戦略をさらに進化させるという、中期計画の最終年度の方向性を示す。

 具体的には、マルチデバイスなどの取り組みで、端末のバラエティを拡大させた上で、快適に使えるよう取り組んでいくとした。マルチユースという切り口では、「物販、金融、損保も、リアルとネットの世界でau経済圏を拡大する」と、2015年夏モデルの新商品発表会でも触れられていた、リアルコマースや金融関連でもサービスを拡充していく方針が改めて示された。

 株主からは後の質疑応答の時間に、利益の伸びに対して売上が伸びておらず、売上の伸びは頭打ちなのかと聞かれたが、田中氏はこうしたマルチデバイス展開や、金融、物販への事業の拡大で、売上高やARPUの向上を図っていくと回答している。

 このほか、グローバル戦略として、ミャンマーや米国での取り組みを引き続き拡大していく方針。ICT分野では、テレハウスブランドのデータセンター事業など法人向け事業を拡大させていく。

定款にヘルスケア関連事業を追加

 この日に決議された議案のうち、第2号議案は、定款の一部変更を提案したものだった。この議案の中には、将来の事業展開に備えるためとして、定款で定めるKDDIの事業に、医療機器などの販売およびヘルスケア関連事業の企画・運営・商材販売という事業を追加するという内容が含まれている。

au WALLET、初年度は赤字

 2014年5月にサービスを開始し、2014年度の累計申込数が1000万枚(現在までに1200万枚)という「au WALLET」は、2014年度で「流通総額」が3800億円だったとし、2015年度は流通総額で8500億円を目指すとした。

 au WALLETに関しては、後の株主からの質問に回答する形で、決済手数料が主な収入源になることや、2014年度はプラスチックカードの発行や送付料などで173億円のコストが発生、最終的には赤字だったことも報告された。今後は決済手数料による収入を伸ばし、黒字化を図っていくとしている。

設備投資は減少もトラフィック対策は継続

KDDI 代表取締役執行役員副社長の両角寛文氏
KDDI 代表取締役執行役員専務の石川雄三氏
KDDI 取締役執行役員常務の内田義昭氏
株主総会の様子

 株主総会の会場に出席した株主からの質問では、基地局への投資とその方針が聞かれ、他キャリアと同質化が進む中ではあえて積極的な投資をするべきではないかと問われた。

 回答したKDDI 取締役執行役員常務 技術統括本部長 兼 技術企画本部長の内田義昭氏は、LTEの人口カバー率が99%を超えるなど広がっていることに加えて、都心などの局地的にトラフィックが集中する場所に投資しなければいけないという最近の環境を説明。「基地局だけでなく、(その後ろ側の)ネットワークにも適切な投資をしていかなければいけない。品質を重視するために、電波の調整もさらに工夫が必要。通信量と投資のバランスをとっていく」と、“基地局への投資”だけでは語れない複雑さを示した。田中社長は、「設備投資額が下がっている大きな要因は、LTEのエリアがある程度構築できたため。トラフィック対策として容量を増やすのは、新規の基地局ほどの投資にはならない」と補足し、設備投資額が減少する要因を解説した。

700MHz帯は2015年度、3.5GHz帯は2016年度以降に導入

 「AWA」「Apple Music」「LINE MUSIC」といった、ストリーミング型の音楽配信サービスが立て続けに発表・リリースされていることを受けて、株主から通信品質への対策が聞かれると、KDDIの内田氏からは「4G LTEとWiMAX 2+を十分に活用して、品質を確保していく」と当面の方針が語られた。加えて、「700MHz帯は、2015年度から基地局を立ち上げる。3.5GHz帯も2016年度以降、基地局を立ち上げて活用していく」と、新たな周波数帯を活用していく方針も示された。

SIMロック解除義務化、ネットワークとサポートで差別化

 総務省から改正ガイドラインが示され、SIMロック解除の義務化が改めて導入された件では、株主から、MNOとしてどう対応していくのかが聞かれた。田中氏は、ガイドラインに従って対応すること、5月以降に新発売のモデルが対象で、180日後に解除できることから、影響が出始めるのにはまだ時間がかかるとした上で、「ネットワークだけでも差別化できる。サポートでも、MNOのほうがいいと理解が得られるよう頑張っていきたい。端末がMVNOに流れることはなきにしもあらずだが、KDDIバリューイネイブラーも立ち上げた。準備はしていきたい」と語られた。

株主総会 プレゼンテーション

太田 亮三