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おススメ3機種、docomo IDのキャリアフリー――加藤社長の戦略

 NTTドコモは10日、2013年冬~2014年春にかけて発売する新機種群と、新たなサービスを発表した。加藤薫社長は、今回のラインアップのうち3機種がおススメ機種と紹介。サービス面では、かねてより示していた方針の通り、他社ユーザーもdocomo IDの利用できるようにして、誰もがドコモのサービスを利用できる環境にすることを明らかにした。

 今回は、12機種のスマートフォンのうち、3機種をおススメと紹介。またサービス面での拡充も紹介された。

「デバイス」「ネットワーク」「サービス」の3要素

 加藤氏のプレゼンテーションは、同社が掲げる「スマートライフ」とは、ユーザーや社会に幸せを感じてもらうこと、と定義付けることからスタートした。

 やや唐突にも思える話だが、同氏は、「幸せの内容は人それぞれによって異なる」としつつも、ドコモとしては電話やメールといったコミュニケーション、各種サービス、それらを利用しやすくするスマートフォンを通じて、幸せを実現するパートナーでありたい、と述べる。

 また、ネットワーク設備の拡充を語る場面でも「音声でも、データ通信でも、あるいは都市部や郊外というあらゆる場所で、そして平時でも災害時といったどんな時でも、繋ぐ技術、繋ぐ努力でお客さまの期待に応え続けたい。スマートライフを力強く支えて、ハッピーにしていきたい」と紹介する。

 またプレゼンテーションの後半では、「デバイス」「ネットワーク」「サービス」という3つの要素を重視するとした。

 加藤氏は、「幸せ」というワードを使うことで、NTTグループらしい生真面目さを見せつつ、ドコモが目指す役割を端的に表現した。

おススメは3機種、価格は1万~2万円

 今回発表されたスマートフォンのうち、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「ARROWS NX F-01F」「Xperia Z1 f SO-02F」の3機種が「ドコモのおススメ」として紹介された。

 夏には“ツートップ戦略”として、ラインアップのうち2機種を安価にするキャンペーンを実施したドコモだが、今回の3機種も割引が適用された後の価格が1万~2万円程度になる。加藤氏は「この価格はそう簡単に出てくるものではない」として割引を重点的に適用する方針を示した。

 選ばれた3機種は、「ユーザーが端末を選ぶときの観点、つまり画面の美しさやコンパクトさ、防水性能といったあたり、そして今回は何よりも電池もち」(加藤氏)といった点が基準になって選出されたという。

 その一方で、囲み取材で「iPhoneの販売も始めたが、ドコモの“顔”となる機種はどれか」と問われた加藤氏は「今回発表した機種を含めて、それぞれ特徴を持っている」と述べて、いずれもが「ドコモの顔」とする。1機種だけあればいい、というユーザーは少なく、いろんなものを用意して、選択のバラエティを用意することが重要とした。

ウェアラブル端末、普及は……

 今回、腕時計型の「GALAXY Gear」の提供を発表したドコモだが、加藤氏は「先端的なユーザーはお使いになるだろうが、普及していくかどうかになると、まだまだ難しい」とコメント。

GALAXY Gearを身に着けて紹介する加藤氏

 メガネ型のウェアラブルデバイスも例に挙げつつ「生活シーンを見ると、既にメガネを使っている人がメガネ型デバイスに変えるのか。メガネをかけていない人がメガネ型デバイスを使うのか。時計にしても着けない人がいるし、着ける人にはこだわりを持つ人もいる。過去、PHSで(腕時計型をリリースして)それほど、ということもあったが、ステージは(かつてと)違ってきている。各社が取り組んでいることもあり、状況をじっくり見ていきたい」と述べた。

10月の純増/MNPは改善

 2013年9月の契約数で、ドコモは過去最大の純減を記録。MNPも10万件を超える形となった。

 iPhoneの効果が期待ほどではなかったのか? という質問に対して加藤氏は「そういうことではないと思う。いつも対前年、対前月で(数値を)見ており、特にMNPに注目しているが、10月は改善してきている。心配をかけているが、そこは大丈夫です」と胸を張った。

 またiPhoneを取り扱う店舗が、全国の約2400店のうち1000店舗強に限られていることを陳謝。10月末までに全店舗での取り扱いを目指すとした。

 店頭販売で、他社が多額のキャッシュバックを用意している、との指摘については「基本的に本来の競争の部分ではない。できるだけ是正したい。しかし私どもも対抗上、せざるをえないところもある。本当はしたくないなと思っている。長期利用のユーザーのことも考慮しながら進めたい。ドコモショップではホスピタビリティを築いてきた部分もある。iPhone販売については、今までの経験を元にキャッチアップしたい」と回答。iPhoneの在庫は「潤沢かというと、そうではないかもしれませんね」と明言は避けつつ、すぐ在庫状況は改善されないことを示唆した。

Tizenについて

 ドコモでは2013年冬モデルで、新たなソフトウェアプラットフォームである「Tizen」の搭載機種を投入する方針を示していた。しかし、今回は含まれていない。この点について、加藤氏は「現在開発中で、さらに強化すべき点を洗い出して、強化に努めている」と述べるに留まった。

 また他のプラットフォームについては関心が低いようで、「Tizenに集中しようと思っている」と述べた。

フィーチャーフォンは今後も継続

 1年に一度のiモード端末という、かねてよりの方針通り、今回もフィーチャーフォンの新機種が発表された。

 加藤氏は「ドコモとしては2015年度の段階で、スマートフォンが4000万契約になるという中期計画を出している。現在、6000万程度のユーザーがいて、差し引き、2000万ほどが(フィーチャーフォンに)残られるのだろう。その辺(が市場規模)ではないかなと。先日、大阪で講演したときにも熱心にiモード端末を出して、と何度も言われ、出し続けますと回答してきた」と述べて、今後も一定規模の市場が見込めることもあり、iモード端末を提供し続ける方針とした。

 ただ、コンテンツがスマートフォンへ偏重する流れもあることから、2台目として、スマートフォンやタブレットの利用を期待する姿勢を示した。

docomo ID、2000万件目指す

新サービスは、NTTドコモ マーケットビジネス推進部長の前田義晃氏が紹介。今日の服装は、新サービス「d fashion」の取扱ブランドで選んだという

 以前からの方針通り、今回、「docomo ID」のキャリアフリー化、つまりドコモ以外のユーザーも利用できるようにすることが発表された。キャリアフリー化自体は予定通りの流れとはいえ、サービスを使って回線契約を囲い込んで通信料増にも繋げるという、これまでの通信事業者の路線からは一線を画し、大きな変化がもたらされることになる。

 加藤氏は、「月々の料金がかかるサービスでは、たとえば現在、dビデオは450万契約を超えており、dアニメストアやdヒッツなどとあわせて700万契約に達する。既にこれらはマルチデバイス対応でタブレットでも楽しめる。docomo IDを使うことでキャリアフリーを模索していく。月額制サービスは、当然、近いうちに1000万を超えてもらう。やっぱり2000万件の達成を目指したい。そのときには、日本中のユーザーに楽しんでもらえるよう、サービスを作っていく。ただ、ドコモユーザーと他社ユーザーの比率は、まだ未経験のゾーンであり、冷静に見ていきたい」とした。

LTEの国際ローミングは来夏、1.7GHz帯/1.8GHz帯の追加割当も

 質疑応答でLTEサービスの国際ローミングについて質問が寄せられると、加藤氏は「ローミングは準備中。来年夏くらいを予定している」とした。

 また総務省が1.7GHz帯(バンド3とも呼ばれる、LTEでは1.8GHz帯)の追加割当を検討していることに関連した質問では、「モバイル通信は、爆発的に伸びていることもあって、基本となる周波数帯は確保したい。どんどんアピールしながらトライしたい」とした。

ソフトバンクは脅威?

 米Sprintを買収したことから、今後、端末の調達力向上に繋がるとアピールするソフトバンクモバイルについても質問が飛んだ。

 加藤氏は「数的には調達力が付くかもしれないが、日本のユーザーがどんなところに力点を置きながら選ぶのか。結果的に実売価格がどう推移するか、見守らせていただきたい」とコメント。日米両市場に共通する端末がソフトバンクから登場したとしても、ローカライズの点を指摘しつつ、価格面での競争を注視するとした。

関口 聖