ユーザビリティにこだわったau 2010年夏モデル

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 5月17日、auは2010年夏モデルとして、新たに販売を開始する端末10機種を発表した。すでに発表されているスマートフォンのISシリーズ2機種、フォトフレーム1機種と合わせ、合計13機種で夏商戦以降を戦い抜く構えだ。端末については、10機種をすべて防水対応としたことに加え、キーの押しやすさやユーザーインターフェイスなど、ユーザビリティの向上にこだわって開発されたことなどが特徴となっている。発表会の詳細は本誌のレポート記事を参照していただきたいが、ここではタッチ&トライで試用した端末の印象や発表内容の捉え方などについて、考えてみよう。

KCP+の熟成とKCP3.0への移行開始

 ここ数年、国内のケータイ市場では、スマートフォンをはじめ、通常のケータイとは異なるモバイル端末が話題になることが多い。2年前に登場したiPhoneを中心に、今年も4月から販売が開始されたNTTドコモの「Xperia」やソフトバンクの「HTC Desire」、今月28日から販売が開始されるアップルの「iPad」など、話題性のある製品の登場が続いている。しかし、その一方で、市場全体の流れとしては、まだ圧倒的に通常のケータイに対する需要が多く、各社ともスマートフォンに注力しつつ、通常のケータイも手を抜けない状態にある。話題性のスマートフォン、実を取る通常のケータイをいかにバランス良く取り揃えていくのか、各社のラインアップの内容が今まで以上の注目されるタイミングを迎えつつある。

 今回、auは通常の端末ラインアップ全10機種を防水対応とし、各機種ともユーザビリティの向上を図るなど、内容の充実に一段と力を入れてきた印象だ。なかでも注目されるのが約2年間、同社の端末プラットフォームとして、活用されてきた「KCP+」の熟成を図ったことと、これをベースにした次期主力プラットフォーム「KCP3.0」を採用した端末をラインアップに加えたことだ。




 2007年秋に発表されたKCP+は、米クアルコム製のチップセット「MSM7500」を採用し、端末に搭載されるソフトウェアなどの共通化を図ったプラットフォームとして展開してきた。KCP+は端末の開発コストの低減に寄与できた一方、当初の開発の遅れに始まり、不具合の頻発、パフォーマンスの低下など、au端末のイメージ低下にもつながり兼ねないほど、同社としては難産のプラットフォームでもあった。そんなKCP+も徐々に改善が進み、昨年後半あたりからは安定したプラットフォームとして、各社が開発した多様な端末がラインアップに展開されている。

 そして、今回はこのKCP+の後継プラットフォームに位置付けられる「KCP3.0」が発表され、早速、その採用端末2機種がラインアップに加わっている。KCP3.0はすでにIS01などのスマートフォンにも搭載されている米クアルコム製「SnapDragon(QSD8650)」が採用され、大幅なパフォーマンス改善が図られている。KDDIとしては、このKCP3.0を「LTE時代までのプラットフォームとして、継続的に進化させ、今秋以降にも導入が予定されているマルチキャリアrev.AもKCP3.0上で実現する」としている。つまり、今後のKDDIの主力プラットフォームに位置付けられるわけだ。

 新プラットフォーム採用となると、ユーザーとしてはKCP+導入時の混乱が頭をよぎるが、KDDIとしてはKCP+採用スタート時の混乱を鑑み、今回はKCP+で採用されていたソフトウェアなどのライブラリをQSD8650上にそのまま、移植したのみで、後述するSDIO対応によるau Wi-Fi WINカード(microSDカード)を除き、基本的に新機能は何も追加されていない。パソコンの世界で言えば、OSはそのままで、CPUのみを高速化したような印象に近い。その結果、パフォーマンスについては、大幅に改善され、タッチ&トライコーナーで試用したKCP3.0採用端末も2007年以前の主力プラットフォームだった「KCP」、機種名で言えば、W5xシリーズやW4xシリーズ時代を上回るほどのサクサク感を実現できている。

 また、現行のKCP+についてもパフォーマンス面でのブラッシュアップが図られ、メニュー周りの表示などもグッと高速化された印象だ。さすがに、KCP3.0採用端末には及ばないもの、KCP世代に匹敵するパフォーマンスに改善されており、最近のサクサク感に乏しいau端末のイメージをほぼ払拭できた印象だ。ちなみに、KCP+とKCP3.0の関係については、チップセット供給の関係などもあり、当面、両プラットフォームが並行して開発される見込みで、KCP3.0上の新しいサービスなどが登場してきた段階で、本格的な世代交代が進められることになりそうだ。

 ところで、KCP3.0採用端末がサポートするau Wi-Fi WINカードについて、少し補足しておきたい。IEEE802.11b/g対応の無線LAN機能を収めたmicroSDカードで、対応端末に装着することで、Wi-Fi WINの機能を追加することができる。昨年のCEATEC JAPAN 2009で参考出品されていたもので、なかなかユニークな取り組みなのだが、実際の利用シーンを考えると、今ひとつ使いにくいような印象もある。というのも対応端末のmicroSDカードスロットは1つしかないので、au Wi-Fi WINカードとmicroSDメモリーカードは排他利用となってしまうからだ。「この際、microSDメモリーカードはなくても……」と考えてしまうかもしれないが、auは他社に先駆けて、機種変更時にもメモリーカード経由で着うたなどのデータを次機種に引き継げる環境を実現しており、メモリーカードの利用率が高いと言われている。au Wi-Fi WINカードを利用するとなると、このアドバンテージを諦めなければならないわけだ。本来、Wi-Fiは高速大容量の通信を可能にすることで、大容量のコンテンツを配信できることがメリットのはずだが、メモリーカードと排他利用の状態で、どうやって大容量のコンテンツを保存するのだろうか。ハードウェアとしては非常に興味深いが、au Wi-Fi WINカードは、どちらかと言えば、一時的にWi-Fi WINを利用したいユーザー向けということになりそうだ。

幅広いユーザーのニーズに応えるユーザビリティ向上

 プラットフォーム展開と並び、今回の発表のもうひとつのトピックは、全機種防水を軸としたユーザビリティの向上だ。元々、ケータイは常に持ち歩き、屋内外で利用することになるため、他の機器以上に雨などの水に関連するトラブルに遭うリスクがある。auの調査でも78.5%のユーザーが「水に困ったことがある」という結果が出たという。国内における防水ケータイの先駆者と言えば、やはり、auのカシオ計算機製端末「G'zOneシリーズ」になるが、auでは2007年夏に三洋電機製「W53SA」、カシオ計算機製「W52CA」を投入して以降、各シーズンごとに防水モデルを数機種ずつ展開してきており、これまでにauに端末を供給するほとんどのメーカーが防水モデルを開発した実績を積んだこともあり、今回の「全機種防水」につなぐことができたようだ。しかもこれまでに防水を実現したことがある折りたたみや二軸回転式、デュアルオープンといったデザインに加え、世界初となるスライド式ボディでの防水を実現するなど、技術的にも一歩、進んだ印象だ。明確な回答は示されていないが、auとしては今後、防水を標準機能として装備する方向で考えているとのことで、ユーザーとしても安心して、長くケータイを使い続けられる環境が整うことになる。

 ユーザビリティの向上という点においては、各機種ともキー周りの操作感に気が配られているのも注目すべき点だ。キー操作の改善は、auが端末メーカー各社に対し、各社なりのキー操作感の改善を図るように要望を出して、それを製品に活かしてきたものだという。なかでも日立コンシューマエレクトロニクス製の「beskey」は、ユーザーの好みに応じて、3つのキーパッドを交換できるという今までにない構造を実現している。キーの操作感はユーザーによって、指先のサイズが違ううえ、操作時の指の動きなども少しずつ異なるため、一概にどれがいいとは言い切れないのだが、beskeyのような象徴的なモデルを掲げつつ、全製品でキーの操作性を改善しようという姿勢は評価できるものだろう。

 この他にも赤外線通信時のガイド表示、端末とau oneカレンダーの連携、Karada Managerの刷新など、細かい部分でもユーザーの新しいニーズに応えようとしている。

 全体的なラインアップとしては、一般的な折りたたみデザインが3機種、二軸回転式が3機種、デュアルオープンが1機種、スライド式が2機種、ストレートが1機種という構成で、バランス良く取り揃えている。メーカー別ではソニー・エリクソンとシャープ、京セラが2機種(1機種は三洋ブランド)ずつを開発したのに対し、その他のメーカーは各1機種ずつという構成になっている。ちなみに、パナソニック モバイルコミュニケーションズは2009年冬モデルに引き続き、端末を供給していない。スペック的には簡単ケータイの2機種を除く8機種がVGA以上のディスプレイを採用し、カメラは12M以上と8Mクラスが4機種ずつ、国際ローミングはGLOBAL PASSPORT CDMA/GSM両対応が3機種、GLOBAL PASSPORT CDMA対応が5機種、おサイフケータイとワンセグが8機種と、全般的にハイスペックのモデルをしっかりと揃えてきたという印象だ。メカニズムやスペックでの派手さこそないものの、幅広いユーザー層のニーズに応えられるラインアップとなっている。

高機能カメラから高画質映像、簡単ケータイまで、10機種をラインアップ

 さて、ここからは発表会のタッチ&トライコーナーで試用した印象などについて、お伝えしよう。ただし、タッチ&トライコーナーで要された端末は最終的な製品ではなく、実際に発売される製品とは仕様や印象に違いがあるかもしれない点はお断りしておく。各端末の詳しいスペックなどについては、本誌の発表会レポート記事も合わせて、ご覧いただきたい。

beskey(日立)

 ユーザーの好みに応じて、3つのキーパッドを交換できるというユニークなしくみを採用した端末だ。四角いキーにキートップを膨らませた「Float key(フロートキー)」、丸く小さなキーで間隔を開けた「Waterdrop key(ウォータードロップキー)」、キーの左右を盛り上がらせて、波形を形成した「Wave key(ウェーブキー)」の3種類が同梱されている。Float keyは「決め打ち」と呼ばれる打ち方をするユーザーに適しており、キーからキーへ指を移動するとき、少しキーから指を離すような操作をする。Waterdrop keyは両手の親指でそれぞれのキーを押す「両手打ち」に適した構造で、Wave keyはキートップから指を離さず、すべらせるように打つ「流し打ち」を想定している。

 どのキーが適しているのかはユーザー次第だが、ちなみに筆者はWave keyの装着された状態が好みで、最近、触った端末の中ではトップクラスの打ちやすさだった。

 キーパッドの交換はキー面のヒンジ部分近くを押すと、キーパッドのみが外すことができ、電池カバーを取り付けるときのように、キーパッドを面に合わせ、小さくスライドさせると、キーパッドを装着できる。着脱そのものは非常に簡単だが、装着時の安定感は通常の端末とほとんど変わらない。デザインやコンテンツは女性向けだが、筆者のように、指先の太い男性ユーザーにもおすすめできる端末だ。

EXILIMケータイ CA005(カシオ)

 カメラ付きケータイの最高峰となる13Mピクセルカメラを搭載したモデルだ。昨年発売されたEXILIMケータイ CA003の後継モデルに位置付けられ、防水性能を実現するほか、ボディも全般的にスリムに仕上げられている。キーはCA001のときに採用されていた「Intrecciato Key(イントレチャートキー)」を進化させ、操作しやすい環境を実現している。カメラ機能も超解像デジタルズームや3Mサイズでの高速連写などが充実しており、EXILIMケータイ CA003でも好評を得たDynamic Photoも切り抜き操作を簡単にするなど、楽しみやすくしている。

 細かいところでは、KCP+の採用により、文字入力時の文字種切り替えや変換候補の選択方法が従来のCAシリーズと違ってしまっていたが、これを現行方式と従来方式で切り替えられるようにしており、W52CAなどのユーザーも乗り換えやすい環境を整えている。

 ちなみに、今回発表された端末の内、EXILIMケータイ CA005とbeskeyの2機種は、「クイックアドレス」機能やメール作成時の「よく送る人」タブの追加などをサポートしており、ソフトウェア面での先行開発モデルとなっている。

Cyber-shotケータイ S003(ソニー・エリクソン)

 昨年、発売され、ロングセラーを記録したCyber-shotケータイ S001をベースに、スライド式ボディながら、防水性能を実現した端末だ。基本的なボディ構造は従来モデルを踏襲しているが、レンズカバーを上下方向で開閉するようにしたり、キーを押しやすい形状にするなど、全体的にリニューアルした印象だ。

 特徴的なのは一部のデジタルカメラでも採用されている高輝度LEDによるPLASMAフラッシュで、キセノン式フラッシュとは少し光り方が違う印象だが、暗いところでの撮影には威力を発揮する。

 今回発表された中ではBRAVIA Phone S004と並び、数少ないGLOBAL PASSPORT CDMA/GSM対応モデルとなっている。

AQUOS SHOT SH008(シャープ)

 今年3月に発売されたAQUOS SHOT SH006をベースに、防水性能を追加したモデルだ。カメラはおなじみの12.1MピクセルのCCDセンサーを採用しており、3.4インチのタッチパネル対応液晶、Wi-Fi WINなど、今回発表されたモデルの中ではトップクラスのハイスペックモデルとなっている。トップパネルには常時表示が可能なメモリ液晶が採用されており、時刻や電波状態、発着信などの情報に加え、EZニュースフラッシュのテロップやスケジュールなども合わせて、表示することができる。ボディはSH006に比べ、全体的に角が落ち、丸みを帯びた印象で、持ちやすくなっている。

 機能面ではメールの入力後に簡単に絵文字を自動追加できる「スマート絵文字」、撮影画像にタグを付けて分類できる「フォトビューアー」、アニメーション絵文字を作成できる「絵文字メーカー」など、ケータイを楽しむための機能も充実している。AQUOSブルーレイの連携については、従来モデルではau向けのみがQVGAクラスのムービーしか転送できなかったが、今回からはVGAクラス(640×360ドット)のムービーも転送できるようにしている。

 Wi-Fi WIN対応ということもあり、ハイスペック指向のユーザーにおすすめの端末だ。

REGZA Phone T004(東芝)

 今回発表されたラインアップの中で、BRAVIA Phone S004と並び、KCP3.0を採用した端末だ。東芝のテレビブランド「REGZA」の名を冠したモデルで、REGZAシリーズで培われた映像のノウハウを活かした「Mobile REGZA Engine2.0」を搭載することにより、周囲の明るさに応じた色表現を調整する「オート画質調整」、ノイズを低減する「ノイズリダクション」などの機能を実現する。

 最大1GHzで動作するSnapDragonを採用していることもあり、操作感のパフォーマンスは非常に軽快で、メールの起動だけでなく、データフォルダの一覧表示、メインメニュー起動など、あらゆるシチュエーションで速さを実感できるほどに仕上げられている。

 ボディは二軸回転式を採用し、SDIO対応のmicroSDカードスロットにau Wi-Fi WINカードを挿すことで、Wi-Fi WIN端末として利用できる。ただし、前述のように、メモリーカードとは排他利用になるので、注意が必要だ。

 キーについては、テンキー部分こそ、独立して押しやすくしているものの、方向キー周りはデザインが優先された印象もあり、今回試用した機種の中では唯一、今ひとつキーの操作感にやや不満が残った部分もあった。

BRAVIA Phone S004(ソニー・エリクソン)

 昨年12月に発売されたBRAVIA Phone U1に続き、ソニーのテレビブランド「BRAVIA」の名を冠したモデルだ。今回発表されたREGZA Phone T004と並び、米クアルコム製SnapDragonを搭載したKCP3.0採用端末となっている。

 ボディはソニー・エリクソンのau向け端末としては2009年2月発売の「Premier3」以来となるデュアルオープンを採用し、縦でも横でも端末を開けるようにしている。横方向に開くときもロックレバーなどを操作する必要がなく、デュアルオープンのための横方向ヒンジの突起も小さいため、そのままスムーズに開くことができる。ただ、この構造の場合、左手の片手で持って開こうとするとき、縦方向に開きたいのに、横方向に開いてしまうこともあるので、少し慣れが必要かもしれない。デザイン的にはトップパネルも緩やかな曲線で仕上げられ、今回発表された端末の中でも際立っていた存在と言えそうだ。

 キーはデザイン性を重視し、フレームレスで仕上げられており、他機種に比べると、押しやすさで一歩譲る印象が残った。au Wi-Fi WINカードの対応はREGZA Phone T004同様なので、使い方に注意する必要があるが、操作のレスポンスはこの2機種が抜きん出ており、パフォーマンス重視のユーザーにはおすすめだ。

SOLAR PHONE SH007(シャープ)

 ソーラー充電と防水性能を実現したモデルで、昨年夏に登場したSOLAR PHONE SH002の後継モデルに位置付けられる。ボディはスタンダードな折りたたみデザインを採用し、トップパネルにソーラーパネルを内蔵する。ソーラーモジュールは従来モデルよりも高効率のものが採用されているとのことだが、おそらく、昨年のCEATEC JAPAN 2009でシャープブースに参考出品されていた最大出力電力が450mW(従来モデルは300mW)の「高効率ソーラーモジュール」ではないかと推察される。

 ソーラー充電については従来が約30分の充電で約2分間の通話ができたのに対し、今回は約4分の通話が可能だそうだ。ソーラーモジュールが装備されたトップパネル部分も指紋や汚れが目立たないようにする表面加工が施され、サブディスプレイには充電状態が文字情報で表示される。

 GPSによる位置情報が取得できるほか、地磁気センサー、加速度センサー、気圧センサーを内蔵しており、アウトドアでの活用を考慮した「フィールドロケーター」と呼ばれるアプリケーションもプリセットされている。位置情報を継続的に記録するGPSロガーも用意されており、ウォーキングやジョギングだけでなく、トレッキングなどにも便利なツールとして仕上げられている。

SA002(京セラ)

 昨年10月に発売された「SA001」をベースにした7色のカラーバリエーションを展開するモデル。Cyber-shotケータイ S003と並び、スライド式ボディでは初の防水対応モデルということになる。SA001との比較では防水対応となったほか、カメラのスペックも321万画素から808万画素CMOSイメージセンサーに変更され、その代わり、ボディの厚みも14.8mmまで増えている。ただ、持ったときの印象はわずかに丸みを帯びたボタン部の形状もあり、少し持ちやすくなったようだ。

 SA001でたいへん不評だったキーについては、キー形状そのものを見直し、狭いエリアながらもある程度、押しやすい環境を実現している。中央のジョグキーは操作感を安定させるため、SA001よりも若干、重く設定しているそうだ。7色のボディカラーはいずれも個性的で、一時期のau端末らしい楽しげなカラーバリエーションが揃ったように見える。

 スライド式の防水ケータイを求める女性ユーザーにおすすめできる端末だ。

簡単ケータイ K005(京セラ)

 auのエルダー層向け端末として、安定した人気を保っている簡単ケータイ初の防水・防塵対応モデル。昨年登場した簡単ケータイK004の後継モデルに位置付けられ、他の通常端末と違い、KCP+ではなく、簡単ケータイK004やPRISMOIDなどに採用されてきた米クアルコム製QSCチップによるプラットフォームを採用していると推察される。

 ワンタッチキーや切り替え式電源スイッチ、次の操作を光って知らせる光で操作ナビなど、従来モデルで好評を得た機能はそのまま継承されているが、簡単ケータイもユーザビリティを追求するとのことで、キーの凸量を少し増やし、キーの操作感を改善している。

簡単ケータイS PT001(パンテック)

 2005年に発売された「簡単ケータイS A101K」の後継に位置付けられるモデルだ。ディスプレイなども一切なく、ダイヤルボタンのみで操作する端末で、コードレスホンを持ち出す感覚で利用できる。開発メーカーは京セラからパンテックに変わったが、基本的なデザインも従来モデルを踏襲しており、電源スイッチやダイヤル式の呼び出し音量キーなども受け継がれている。

 5年ぶりに後継モデルが登場した背景には、CDMA2000 1Xが終了し、800MHz帯の再編が実施されることが関係している。積極的にアピールはされないようだが、このジャンルの端末でも防水は有利なアドバンテージと言えるだろう。

ユーザビリティ改善が実感できる新ラインアップ

 この約10年、ケータイは凄まじい勢いで進化を遂げてきた。しかし、その一方で、ここ数年、ケータイが機能やスペックを追求しすぎてしまったあまり、必ずしもケータイを十分に使いこなせないユーザーが増えてきたり、あるいは使っていてもストレスを感じてしまうようなシチュエーションが見受けられるようになってきた。そういった状況に対し、筆者は以前から「もっとユーザーに使ってもらうための工夫が必要」だと指摘してきたつもりだ。

 今回発表されたauの新ラインアップとユーザービリティ改善への取り組みは、まさにそうした状況に対するauなりの回答を示した格好だ。たとえば、ほとんどのユーザーが求める「防水」であったり、誰もが操作するときに気にする「キーの押しやすさ」であったりといった具合だ。赤外線通信を利用するとき、その端末のどこに赤外線通信ポートが装備されているのかを画面上にガイド表示するなどという工夫は、ごく当たり前のことなのに、今まではどの端末もほとんどできていなかったわけだ。こうした細かい部分の改善を積み重ねることにより、本当の意味で我々ユーザーにとって、役立つケータイに仕上がってくるはずだ。

 今回発表された端末は5月下旬以降から順次、販売が開始される予定だ。今後、本誌に掲載される予定の開発者インタビューやレビュー記事などをしっかりチェックして、ぜひ自分の好みに合ったau端末を選んで欲しい。

 



(法林岳之)

2010/5/18 11:24