DATAで見るケータイ業界

「端末と通信の分離」が市場に与えた影響を振り返る

“端末価格と通信料金が一体となっている事案が多数存在し、利用者から見て負担の透明性・公平性が十分確保されているとは言えない状況にある”

 現在の通信市場の状況を表現した文言に見えるかもしれないが、これは今から8年前の2007年9月、総務省が「モバイルビジネス活性化プラン」を公表し、携帯電話会社各社に向けて「端末と通信の分離」を要請した際の文言である。

 端末購入者(とりわけMNPによる契約者)への過度な優遇と、その裏返しである長期利用者との不公平性は、現在議論が大詰めを迎えている「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の論点にも通じるものがある。

 そこで、当時の総務省の要請で携帯電話会社各社が導入した「端末と通信の分離」が、携帯端末市場に与えた影響をここであらためて振り返ってみたい。

出典:JEITA「移動電話国内出荷台数」を元にMCA作成

 上のグラフは、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の統計資料「移動電話国内出荷台数」から、半期ごとの出荷台数推移を取りまとめたものである。単純化のため、2006年度上半期の出荷台数(約2620万台)を100として指数化している。

 携帯電話事業者各社が端末と通信の料金体系を分離し「通信料金が安くなる一方、端末料金が高くなる」制度を相次いで導入した影響が、端末出荷台数の急減として如実に表れていることがお分かりいただけるだろう。

 実際、出荷台数は2007年度の5172万台から2008年度は3583万台と約3割の大幅減に陥ったのだ。このような過去の経緯が、現在主流の「端末を割賦で販売し、通信料金に対して相当額の値引きを行う」方式を生み出したともいえる。

 なお、JEITAの統計は国内メーカーが調査対象のためアップルやサムスン電子などの数字が含まれない点には留意が必要だ。「iPhone 3G」の国内販売が開始されたのも2008年度であり、これも国内メーカー端末の販売数に少なからず影響を与えたとみるべきだろう。

 タスクフォースでは過度の販売奨励金を問題視する声が上がっている。携帯電話会社から極めて安価に端末が購入できる現状では、MVNO市場や中古端末市場の拡大にとって大きな阻害要因になっていると考えられる。その一方で、正常化に向けた取り組みが、8年前と同様の端末販売急減を招く危険性もはらんでいる。どのような施策が望ましいのか、非常に難しい舵取りが迫られている。

 なお、先々週の当コーナーにて取り上げた「MVNOへのデータベースの開放」は、11月27日に公表された改定案に「開放を促進すべき機能」として盛り込まれている。開放すべき機能には、電話会社の乗り換え後も従来のメールアドレスが利用できる「携帯電話のEメール転送機能」など計5項目が掲げられている。現在パブリックコメントを募集しており、12月25日に締め切られる予定だ。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。