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通信キャリアの契約数が5万減? 総務省公表数値から実態を読み解く

通信キャリアの契約数「5万減」のカラクリ

 今回の発表で、契約数の純増減数を通信キャリア(MNO)とMVNOに分けて記載したグラフにはインパクトがある。2017年4~6月期、MNOは5万の純減を記録しているのだ。

「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する総務省データ」より

 MVNOの50万増とは対照的で、通信キャリアが追い込まれたかのように見える。しかしこれにはカラクリがある。

 このグラフに記載されている数字は「移動系通信の契約数」の増減で、携帯電話の契約数に限定されていない。具体的には、携帯電話・PHS・BWA(WiMAXなど)の合算となっているのだ。解約が続くPHSが全体の足を引っぱり、純減に転じたかのように見えているのが実情だ。

 では、PHSの影響を除外した場合、どのようなグラフになるのだろうか。

 上のグラフは、総務省データをもとに、携帯電話・PHSとMVNOの純増減数を示したものである。4~6月期、携帯電話の純増数はMNOとMVNOをあわせて61万だった。うちMVNOが45万増(※)と、大半を占めているのだ。

 一方のMVNOも、4~6月期の数字だけを取り上げれば、3年前が49万増、2年前が54万増、1年前が74万増と、前年同期比では右肩上がりで数値を伸ばしてきたが、今年は45万増となり、この4年間で最も低調な増加幅にとどまった。

 なお、総務省によれば、通信キャリアのサブブランドである「Y!mobile」も「UQ mobile」も、総務省データではMVNOではなくMNO側に組み込まれているという。この点も注意が必要だ。

 通信キャリアの契約数は純減には至っていないものの振るわない状況で、他方MVNOも増加ペースに陰りが見え始めたと言えるだろう。

※総務省データにおいて、MVNOの純増数は携帯電話とPHSの合算値として公表されているため、正確には携帯電話とPHSの合計値と比較する必要がある。グラフ内で17年4~6月期に「MVNO比率」が100%を超えたのは、減少するPHSも含めて計算している都合上である。

MCA 天野徳明

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。