スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」

緻密なフレーミングが素早くキマるギア雲台

定番のマンフロット「405」「410」

 も~かなり長いこと愛用しているのが「ギア雲台」です。モノとしてはマンフロットの「ギア付きプロ雲台 405」(公式ページ)や「ギア付きジュニア雲台 410」(公式ページ)です。

マンフロットのギア雲台各種。左が「ギア付きジュニア雲台 410」で、質量1.22kg・耐荷重5kg、マンフロット直販価格は税込3万1104円です。右が「ギア付きプロ雲台 405」で、質量1.6kg・耐荷重7.5kg、マンフロット直販価格は税込6万8256円。どちらも三脚の上に装着し、その上にカメラをセットするための「台座」です。

 これらのギア雲台は、普通の雲台とはちょっと違います。具体的には、前方と側方のティルトおよび左右パンの角度を微調節できるんです。つまり、レンズの上向き・下向きの角度や、カメラの左右傾き、それから水平の向きを細かく調節可能。どういうコトか、写真で見てみましょう。

レンズの上下角度(フロントティルト)を微調節している様子。調節範囲は-30°~+90°です。レンズを真下に向けることもできます。
カメラの左右の傾き(側方ティルト)を微調節している様子。調節範囲は-90°~+30°です。カメラを縦位置にすることもできます。
カメラの水平方向の向き(パン)を微調節している様子。360度の回転が可能です。
ノブの回転で微調節でき、ノブ根元をひねればロックが外れて一気に角度を変えることも可能。

 何が便利なのか? たとえばフツーの雲台が付いた三脚で、水平を調節する場合、パンハンドル(パン棒)やティルトハンドル(ティルト棒)などと呼ばれる2本のハンドルを使います。ハンドルを回して緩め、角度を調節して、角度が決まったらハンドルを逆方向に回して締めて固定します。これをカメラの前後方向と左右方向で行い、水平を出すわけです。

 ただ、実際にやってみると、水平を正確に出すのは意外に面倒です。使う雲台にもよりますが、ハンドルを締めた瞬間に角度が僅かにズレてしまうとか、カメラ・レンズの重さのバランスが悪くてなかなか水平が決まらないとか。慣れた人でも気を抜くと失敗しやすく、意外に手間と時間がかかる作業だったりします。

 でもギア雲台(が付いた三脚)を使えばカンタン♪ 大雑把に水平を決めて、後はノブを回して微調節。まず失敗がないので、非常に効率よく水平を出せます。三脚を使った風景写真撮影などではこの「水平出し」が「撮影前の必須作業」になりますが、これをかな~り素早く済ませられるというわけです。

 ほか、カメラ向きを少しだけ左右方向に変えたいとか、レンズ上下向きを僅かに変えたいとか、被写体に合わせてカメラの傾きを微調節したいとか、そういう場合にことごとく便利なギア雲台。要するに、水平出しや緻密なフレーミングが必要な撮影には超便利な雲台なんです。

 ただ、デメリットもあります。ギア雲台は緻密な角度調節は得意ですが、素早く動かすのは苦手。右から左に走る人など、動きのある被写体を追いながら撮影するようなことは、できなくはないですが、全然快適ではありません。斜め方向に動く被写体を追って撮影……などは、できなくはないですが、デキると「ギア雲台でよくそんな器用なコトできますね~」と驚かれる……というより呆れられると思います。

 もうひとつ、ノブの数や安定性の関係で、ゴツくて重いこと。軽快に移動しながら撮影するような場合、邪魔だし重いしで、撮影の足を引っ張りがちだと思います。

 でも、風景撮影をするとか、定点を狙う望遠撮影をするとか、ブツ撮りをするとか、長時間露光をするとか、わりとドッシリ構えて緻密なフレーミングを行う撮影にはよく向きます。また、フレーミングをラクに行えるようになりますので「なんで今までコレを使わなかったんだろう!」的にギア雲台の機能性に喜べたりもします。

 ちなみに、上の2製品はわりと定番のギア雲台です。価格的にもまずまず買いやすいレンジ。さらに高品位な製品として、ARCA-SWISS(アルカスイス)ブランドのギア雲台も存在します。

ARCA-SWISSの「D4ギアヘッド」(公式ページ)。非常に高精度なうえに比較的に小型・軽量です。実勢価格は18万円前後。

 ほかにも、ARCA-SWISSの「C-1 Cube」という最高峰のギア雲台も存在します。ですが、実勢価格は30万円以上。一度触れてみたいものです。

ミラーレス時代の軽いギア雲台

 前出の2台のギア雲台は、どちらも重めでゴツめ。三脚に装着して外に出掛ける……となると、ちょっと躊躇してしまうレベルです。重さは、「ギア付きプロ雲台 405」が1.6kg。「ギア付きジュニア雲台 410」は1.22kg。雲台のみの質量です。この重さの雲台を乗せる、そこそこ頑丈な三脚も要るので、気合が必要な感じ。

 でも重いレンズと重いカメラを使わなければ、ギア雲台もそこまでゴツめ重めである必要もなかったりします。ミラーレス一眼とかはボディもレンズも軽いですしネ。

 というわけで、そういう軽量なカメラ向けのギア雲台も登場しています。モノはマンフロットの「XPROギア雲台」(公式ページ)です。

マンフロットの「XPROギア雲台」。質量750g・耐荷重4kgと、同社のギア雲台のなかでは最軽量の製品です。マンフロット直販価格は税込2万5920円。
手前から見た様子。機能的にはほかのギア雲台とだいたい同じです。
水平器も見やすい位置にあります。
ノブを回せば角度の微調節ができます。ノブ近くのレバーをつまむようにすると、ロックが外れて角度を一気に動かせます。

 軽め小さめ値段も安めで、機構的にも使いやすいギア雲台です。軽量の三脚および軽めのミラーレス一眼と組み合わせて使っていますが、わりとラクに持ち歩けますし、屋外で手軽にギア雲台のメリットを享受できてイイ感じです。

 ただ、前出2台と比べると、すこ~し安定性に欠けるという印象があります。やや重めのレンズを装着したカメラを載せた場合などは、雲台の関節部に微妙なグラつきが見られたり。

 厳密に言えば前出2台も微妙なグラつきはあるんですが、雲台自体が頑丈で重いため、そ~んなには気にならないレベルという感じ。でもまあ、この「XPROギア雲台」も、重くないカメラやレンズをセットするなら十分実用的だと思います。

ギア雲台っぽい良さを持つフツーな雲台

 少し前述しましたが、ギア雲台にはデメリットもあります。動きの速い被写体を撮るのが苦手~無理ということです。

 フツーの雲台なら、たとえば斜めに動く被写体を追う場合、2本のハンドルを緩めればカメラの向きをわりと自由に変えられますので、被写体に追従して撮影できます。カメラの向きを変えられる自由度がありつつ、カメラは支えられているので不要なブレを抑えられるというわけです。

 微妙な角度調節を行いやすいギア雲台。動きのある被写体を追いやすく、クイックな動作も行いやすいフツーの雲台。両方のいいとこ取りした製品ってないの? というあたりの要望で登場した(と思われる)製品が、マンフロットの「XPRO3ウェイ雲台」(公式ページ)です。

マンフロットの「XPRO3ウェイ雲台」。質量1kg・耐荷重8kgの、ギア雲台ではないわりとフツーの雲台です。マンフロット直販価格は税込1万5552円です。
カメラを載せた様子。クイックプレートは前出の「XPROギア雲台」と同じタイプの「200PL-14」です。
丸いノブを回すと「フリクション」が機能し、ハンドルを緩めたときの関節の動きの滑らかさ・硬さを変化させられます。ハンドルは伸縮式で、移動時などは縮めてコンパクトにできます。

 フリクション(コントロール)という機能が備わっているのが特徴的。これは、ハンドルの緩み具合にかかわらず、一定の緩さ・硬さで関節を動かせるという機構です。少し硬めにすると、ハンドルを完全に緩めた状態でも、ゆっくり滑らかに関節を動かせますので、ギア雲台のような細かなフレーミング調整も行いやすいというわけです。

 フリクションを緩めると、ハンドルを緩めた状態では普通の雲台と同様に、雲台がスルスルと自由に動きます。ので、動きの速い被写体を追うとか、カメラの向きをクイックに変えるようなことも可能。ギア雲台っぽい良さと、普通の雲台の良さを両取りした雲台というイメージです。

 前出の「XPROギア雲台」と、この「XPRO3ウェイ雲台」、わりあい新しい製品で、どちらもまあまあ小型・軽量。ミラーレス一眼によくマッチする製品だと思います。また、これらのクイックリリースプレートは共通品。「200PL」と呼ばれるプレートで、カメラを素早く脱着できます。両方を併用すると、使い分けの面でも、プレート流用の点でも、なかなかスムーズに使えるのではないでしょうか。

 って、ワタクシはそうして使っていますが、なかなか便利でイイ感じです。ともあれ、ギア雲台周辺のマンフロット製雲台、選択肢も広いですし、わりと買いやすい価格でもありますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。