ケータイ用語の基礎知識
第723回:位相差AF・コントラストAF とは
(2015/9/9 12:57)
デジタルカメラの代表的なオートフォーカスの仕組み
先日開催されたベルリンでの家電総合展示会「IFA」に合わせ、ソニーモバイルコミュニケーションズが「Xperia Z5」シリーズを発表しました。大きな特徴の1つとして、位相差オートフォーカスとコントラストオートフォーカスを組み合わせた「ハイブリッドオートフォーカス」を採用したカメラが挙げられます。
オートフォーカス(AF)とは、被写体へのピントを自動的に合わせる機能のことです。そして「位相差AF」「コントラストAF」のどちらも、オートフォーカスを実現する代表的な仕組みです。
「位相差AF」は、その原理上、画像のピントを合わせるのに必要な時間が短くなり、快適に操作できます。「コントラストAF」は、多くのビデオカメラやコンパクトデジタルカメラで採用されてきた一方、位相差AFはかつて一眼レフカメラなどでしか採用されませんでした。最近では、2014年に登場した「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」「GALAXY S5」など位相差AFが採用されています。
2つのAFの違い
コントラストAFの基本原理はシンプルです。「画像のピントが正しく合っている画像であれば、画像のコントラスト値が最も高いはずだ」という考え方に基づいています。
オートフォーカス機能が作動すると、カメラのレンズを動かしながら、カメラの中にある「イメージセンサー」からその画像のデータを得て、コントラスト情報を逐次解析します。このコントラストの変化の傾向から、ピントの合う位置を求めるわけです。
ピント合わせには時間がかかりますが、カメラに内蔵されているイメージセンサーと、レンズを動かすアクチュエーター、カメラやスマートフォンに内蔵されているコンピューターの組み合わせだけでオートフォーカスを実現できます。つまり部品点数を少なくでき、コンパクトデジタルカメラやスマートフォンでは、コントラストAF方式が主流です。
一方、位相差AFは、「画像のピントが正しく合っていると、撮像用センサーの後ろにセパレーターレンズを置いて画像を2つに分けたとき、2つの像の位置は一定になるはずだ」という考え方を基にしています。
位相差オートフォーカスを搭載するカメラでは、カメラの撮像用のレンズとイメージセンサーのほかに、「セパレーター」と呼ばれる2つのレンズと、オートフォーカス用のセンサーを用意します。
セパレーターと呼ばれる2つのレンズからは、2つの像を作ることができます。ピントが合っているときは、この2つの像の間隔は一定ですから、ピントが本来の位置より前に来てしまっている「前ピン」のときには像間隔は狭く、「後ピン」の場合は像間隔が広くなってしまっているわけです。2つの像のこれらの情報から、ピントが合うレンズの位置が、現在のレンズの位置からどれだけ離れているかを計算することができるので、あとは、この情報に合わせてレンズを移動してやれば、ピントのぴったり合った画像を撮影することができます。
両方式を組み合わせた「ハイブリッドオートフォーカス」がスマホに
位相差AFでは、仕組み上、一度、サンプル用像データを取得して、正しいピントの合わせ方を算出できます。つまり画像のピントを合わせるのに必要な時間が非常に短くなる、ということが特徴です。位相差AFを取り入れた「Xperia Z5」シリーズでは、カメラ機能のピント合わせがおよそ0.03秒とこれまでより大幅に短縮されています。
反面、位相差オートフォーカスでは、本来デジタルカメラ機能に必要な撮影レンズ、イメージセンサーに加えて、オートフォーカス用に別途、セパレーターレンズや位相差センサーといった部品が増えてしまいます。装置の小ささを保ったまま、位相差AF方式を採用するためには工夫が必要となります。また、ピント合わせのポイントが固定されてしまうため、たとえば「顔検出オートフォーカス」やライブビュー、画面でタッチした場所にフォーカスを合わせる機能である「タッチフォーカス」といった機能を実現するのは難しくなります。このような用途の場合はコントラストAFを使った方がはるかに簡単に実装できます。
このようにコントラストAF、位相差AF、両方にメリット・デメリットが存在するため、2015年現在、さまざまな工夫でその両方の要素を備えた製品が登場しつつあります。
その1つである「Xperia Z5」シリーズのメインカメラでは、「ハイブリッドAF」として撮影状況をカメラが判定し。位相差・コントラストを自動的に切り替えたり、組み合わせたりしています。