ケータイ用語の基礎知識

第713回:Windows Phone 8.1 GDR2 とは

「GDR2」とも呼ばれるUpdate2

 2015年6月、マウスコンピュータから「MADOSMA Q501」が発売されました。日本向けとしては約4年ぶりに、Windows Phone搭載の新機種が登場したことになります。「MADOSMA Q501」には、Windows Phone 8.1 Updateが搭載されているほか、OTA(Over The Air、通信経由)によるアップデートで最新のWindows Phone 8.1 Update2にすることができます。

OTAアップデートによってMADOSMAのシステムを「Windows Phone 8.1 Update2」にすることが可能。Update2はGDR2とも呼ばれる

 Windows Phone 8.1 Update2は、Windows 8.1の「GDR2」と呼ばれることもあります。GDRとは、一般向けリリースを意味する「General Distribution Release」の略で、多くのテストなどのプロセスを経て広く一般の利用者向けに提供される、アップデート版を意味します。

 ちなみに、特定の問題を解決するために局所的な修正を行うアップデートは「Limited Distribution Release」、略して「LDR」と呼ばれます。LDRがどちらかといえば応急処置的なものであるのに比べると、GDRは、Windowsを利用する全てのユーザーに向けて提供することを目的としており、じっくりと広範にテストを行ったうえでリリースされます。

 このためGDRにおける不具合の修正は、同じ箇所の修正でもLDRより後になって適用されることがほとんどです。また、同じ箇所の修正でもGDRではLDRとは修正の方法が異なっている場合もあります。たとえば、LDRでは機能の停止のみを行っていたが、GDRでは実装の修正が行われる、といった形です。

 なお、LDR、GDRのほかにWindowsでは「サービスパック」と呼ばれる機能修正プログラムが配布されることがあります。これは、LDRで提供される不具合解消、それにGDRで提供される不具合解消、それに機能拡張などを含めひとつのパッケージにまとめて、全てを適用したものになります。

Windows8.1 GDR2では「緊急地震警報」などへの対応が追加

 2015年5月から提供されているWindows 8.1 GDR2では、GDR1からさまざまな不具合修正や、機能追加がされています。機能追加の主なところとしては「Video over LTE」「Wi-Fi calling」「BluetoothでのMessage Access Profile (MAP) 1.1のサポート」「緊急通知」「IMSサービスの許可」「ベンガル語やラオ語などの対応」「リセットプロテクション(キルスイッチ)」などが挙げられます。

 上記の追加機能は「リセットプロテクション」を除いて、OEM提供先(製造メーカー)がオプションとして有効/無効を選べる機能です。たとえば、あるメーカーではベンガル語やラオ語といった言語を利用できるようにする一方で、他のメーカーでは設定できないようにしておく、といったことも可能です。

 新機能の1つである「Video over LTE」は、ViLTEとも呼ばれ、テレビ電話や複数の人が参加するビデオ会議が利用できます。

 日本のユーザーにとって気になるであろう機能は「緊急通知」でしょう。Windows Phone 8.1はGDR2から、「CMAS(Commercial Mobile Alert System)」「ETWS」「Netherlands Announcements 」「LatAlert」「CMAS(台湾版)」の利用が可能になっています。

 このうちETWSは、本連載の「第544回:ETWS とは」で説明したように、「緊急地震警報」に使われている仕組みで、「Earthquake and Tsunami Warning System」の略です。その名の通り、地震や津波などの災害が発生した際に、ユーザーに大きな音と画面上のメッセージで、緊急地震速報や避難情報などを知らせます。非常に短時間で、携帯電話へ警報が一斉配信される仕組みなので、GDR2で、もしONになっていれば、日本国内で利用している場合、使えるようになっています。

 ちなみにCMASは米国内で使われている警報です。ETWSのような速報性はありませんが、竜巻や洪水などの発生の際にユーザの避難を呼びかける仕組みになっています。「Netherlands Announcements」はオランダ、「LatAlert」はチリの警報システムです。台湾で使われている「CMAS(台湾版)」に関しては、特にメーカー側での設定は必要なく、GDR2では必ずONになっています。メーカーオプション設定有無に関わらず、Windows Phone 8.1 GDR2の携帯電話を持って、台湾にいるときにアラートが配信され、なおかつ、これをサポートする携帯電話事業者の電波を利用している場合、必ず鳴るようになっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)