第571回:音声アシスト機能 とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


クラウドが実現する「声でアシスト」

 最近のスマートフォンには、ユーザーが話しかけることで、端末の操作をしてくれたり、検索して教えてくれたりする機能が用意されています。たとえば、「iPhone 4S」で利用できる「Siri」や、NTTドコモのスマートフォン向けアプリ「しゃべってコンシェル」です。

 「Siri」では、iPhone 4Sのマイクで音声を入力すると、その音声データをクラウド上に送信、解析し、システムやアプリに対し命令を伝えます。iOS 5.1以上のiPhone 4Sでは日本語に対応しています。たとえば「明日10時から会議」と発声すると、内蔵のカレンダーに明日の10時からの予定を登録できます。あるいは、電話をかける、メモを作る、天気を調べたりといったことも可能です。ちなみにSiriを起動するにはiPhoneのホームボタンを長押しすることで起動できます。

 一方、「しゃべってコンシェル」もやはり音声でのアシストを実現しているアプリで。たとえば「佐藤さんにメールを送る」などとAndroidケータイへ話しかけると、その内容をクラウド上の音声認識エンジン、意図解釈エンジンに伝え、ユーザーの意図を解釈してAndroid上のメールアプリが起動し、「メール本文はどうしますか?」と聞いてくる、というような流れで利用できます。「調べたいこと」や「やりたいこと」などをスマートフォンに話しかけると、その言葉の意図を読み取り、サービスや端末機能の中から最適な回答を画面に表示してくれるわけです。

 「Siri」はiOSに組み込まれている機能で、もう一方の「しゃべってコンシェル」は1つのAndroid向けアプリとして提供されている、といった違いはあるものの、どちらもユーザーの音声による指示をネットワーククラウド上のシステムに送り、その内容にあわせて端末機能やサービスを利用できるという大枠の仕組みや流れは、同様の使い勝手になっているところがあります。そのためどちらも利用時には、スマートフォンがインターネットへ接続している必要があります。

「Siri」と「しゃべってコンシェル」の違い

 これまでも携帯電話やスマートフォンでは、音声で命令して機能を呼び出す、といった使い方ができるものがありました。

 たとえばiPhoneの場合、iOS 5以前から「音声コントロール」という機能が用意されています。iPhoneを機内モードにしているときなど、インターネットに接続されていないときでも「音声コントロール」は利用できますが、これはクラウドを利用していないために可能だったわけです。

 一方、今回紹介する「音声アシスト機能」は、先述した「Siri」「しゃべってコンシェル」のように、クラウドとの連携が大きな特徴です。通信技術の高速化、処理能力の進化がもたらした最新の機能の1つと言えるでしょう。

 「Siri」と「しゃべってコンシェル」は、クラウドを利用するという点で技術的に近いところはありますが、違いもあります。たとえばSiriは、基本的にiPhoneが持つ基本的な機能を補助するものであるのに対して、「しゃべってコンシェル」は、dメニューに登録されているコンテンツを表示できることが挙げられます。「しゃべってコンシェル」で質問をしてみると料理に関してはクックパッド、一般的な質問に対しては「教えて!goo」などコンテンツプロバイダの提供しているものが回答として示されることがあります。これは、dメニューが、iモードの公式メニュー(iメニュー)同様に、公式サイトという形で各種のコンテンツやサービスを登録する、という仕組みを持っているからこそできることであると言えるかもしれません。

 逆に「しゃべってコンシェル」になく、「Siri」が持っている機能としては、多国語対応が挙げられるでしょう。Siriは当初の段階で英語、ドイツ語、フランス語にのみ対応していましたが、2012年7月現在、日本語、フランス語、ドイツ語に対応し、iOS 6では韓国語、中国語にも対応する予定となっています。

 このほかヤフーもAndroid向けに音声認識を使ったアプリ「音声アシスト for Android」を提供しています。こちらは、天気予報や経路検索、キーワードによる検索などが可能となっているほか、カメラ、メールなど機能が起動できます。




(大和 哲)

2012/7/10 11:38