第462回：Thuraya とは

　「Thuraya（スラーヤ）」は、アラブ首長国連邦のThurayaが提供している、衛星電話サービスです。Thurayaという名前は、「プレアデス（すばる）」を意味するアラビア語をアルファベットで表記したところからつけられています。

　静止軌道衛星により電波が中継され、Thuraya-2衛星により中東、欧州、アフリカなどが、Thuraya-3衛星により中国、マレー半島、オーストラリア、朝鮮半島などがサービスエリアとなっています。衛星通信を利用しているため、これらのエリアでは、通常の携帯電話の基地局が存在しない公海上や、奥地でも通話や通信が可能です。

　Thurayaでは、全ての通信端末が、GPS対応となっていて、衛星を使った通信時にはGPSと連携してユーザーの現在位置を知らせることも可能です。

　日本もThuraya-3衛星のカバーエリアになっていますが、電波法の規定により利用することはできません。ただし、日本の携帯電話や固定電話からThurayaへの発信、あるいはThurayaから日本の携帯電話や固定電話への着信は可能です。国番号は「88216」になります。

　ユーザが利用できる端末としては、通話用の携帯型端末、PCなどに接続する衛星通信モデムが存在します。携帯型端末では、通話とSMSが、また衛星通信モデムではパケット通信が可能になっています。

　スリーヤ用の多くの通話用携帯電話は、Thuraya衛星方式と、GSM方式のデュアルネットワークを利用できます。衛星通信事業者であるThurayaが、欧州・中東・アフリカなどを中心とした約200のGSM携帯電話事業者とローミング契約をしており、多くの国ではGSM方式の携帯電話として利用することができるのです。GSMモードでは、衛星モードと異なり、室内などでも通話できるというメリットがあります。

　ちなみにThuraya携帯電話用のSIMカード（Thuraya SIM）は、GSMのSIMカードと互換性があります。SIMロックされていないGSM対応の携帯電話に挿入すると、ローミングでGSM回線を使った通話が可能になります。

　なお、Thurayaから日本の固定電話や携帯電話に通話する場合、あるいは固定電話や携帯電話からThurayaに電話をかける場合、その通話は、UAEにある衛星電話設備を中継し、UAE-固定電話・携帯電話はUAEまでの国際電話、UAEの中継局からThurayaまでが衛星回線を使用します。

■衛星電話でパケット通信、写真付メールの送受信も

　Thurayaは、通信サービスとしては、通話やSMS、回線接続型の9.6kbpsのFAX/データ通信サービスを行っているほか、「ThurayaGmPRS」と呼ばれる下り60kbps・上り15kbpsのパケット通信サービス、衛星通信モデム向けの384kbpsの高速パケット通信をサポートしています。

　Thurayaでは衛星電話としては珍しく、カメラ付きの「ThurayaSG-2520」なども販売されています。このカメラ付携帯電話では、MMSとして写真をメールに添付して送信できます。

　また、ThurayaGmPRSではインターネット通信も可能で、ユーザーにはメールアドレスが無料で付与されます。携帯電話から送付した写真付メールなども、このメールアドレスで、他のユーザーに送ることが可能です。

　料金プランとしては、一般的なGSM携帯電話と同様、プリペイドプラン、後払いプランがあります。プリペイドプランでは、度数チャージはスクラッチカードを購入するか、あるいはスラーヤのWebサイトでチャージ用のコードを購入し、携帯電話から「150」をダイヤルして指示に従い、コードを入力することで行うことができます。ただし、プリペイドの場合、GSMローミングでは着信はできるものの、GSMでの発信はできないので注意が必要です。