第439回:顔自動認識機能 とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「顔自動認識機能」とは、デジタルカメラの機能の1つです。その名前の通り、人間の顔をカメラが認識するという機能です。

 被写体の中から顔を見つけ出すことによって、デジタルカメラは、人物撮影をする際にさまざまな補助機能をユーザーに提供します。

 具体的には、人物撮影をする際に、自動的にその人の顔にピントを合わせる「顔認識AF(オートフォーカス)」や、顔がもっとも綺麗に写るよう明るさを調整する「顔認識AE(自動露出)」などが挙げられます。

 あるいは、その特徴から、誰の顔であるか識別して、「自分の子供だけピントをあわせる」など、撮影人物を特定するというような用途に利用されている例もあります。

 撮影補助機能に関して言えば、それまでのデジタルカメラのオートフォーカスや、自動露出では、対象物を面積などで割り出していたりするため、たとえば撮影したい人の近くに大きなものがあるとそちらにピントを合わせてしまい、肝心の人物のピントがずれてしまうことがあります。また、窓際で人物を撮影すると背景の明るさに画像の明るさをあわせてしまうために肝心の人物の顔が真っ黒になってしまうというような失敗をしてしまいがちでした。

 被写体に人が含まれていれば、ポートレート写真である可能性が高まります。人物の顔が確認できたらそこを被写体と仮定して、ユーザーの補助を行うことができるようにしたのが、“顔自動認識”という機能なのです。

 顔自動認識を使ったオートフォーカスや、自動露出は、2005年頃からデジタルカメラに搭載され始めた機能です。現在では、市販されている多くのデジタルカメラにこの機能が搭載されています。

 デジタルカメラだけではなく、カメラ機能を搭載する携帯電話でも、同様の機能が搭載されつつあります。NTTドコモの機種ではSH-06AやN-06A、P-07A、F-09Aなど、auではCyber-shotケータイ W61Sなど、ソフトバンクではAQUOS SHOT 933SHや930SC OMNIA、VIERAケータイ921Pなど、非常に多くの機種で顔自動認識を利用したオートフォーカス機能などが用意されています。

方式は各社万別

 顔自動認識は、デジタルカメラに必要な機能である“デジタル画像処理技術”を応用したものです。

 画像をデジタルデータにした際、その画像には、さまざまな特徴が表われます。たとえば、色や明るさが極端に変わる点や線などです。

 人間の顔には、目や鼻、口があり、これらは構造上の特徴点になります。一般的に、顔認識は、画像上から特徴点を探し出し、それがデータベース上に登録されている特徴点と一致するかどうかを計算し、一致度が高かければ「これは人の顔だ」と判断することで実現しています。

 ただし、どのような特徴点で顔と認識するか、各社各様の技術が採用されています。あるメーカーの顔認識では、楕円形の“輪郭と思われる線”と目や口の形があれば「顔」として認識します。また別のメーカーでは目、鼻が形として存在して、頬と思われるコントラストの円形の変化があれば「顔」として認識します。色味が肌色で目、口があれば顔として認識することもあります。

 このようなアルゴリズムの違いで、壁のポスター、あるいはボールなどの物に顔を描いた場合、顔かどうか認識するのは、製品ごとに違いがあるようです。ピーナッツにマジックで目や口を描いたものを撮影しようとすると、あるカメラでは顔として認識し、あるカメラでは認識しません。ピーナッツの色味は肌色に似ていますが、頬の滑らかなコントラストの変化がなく表面がゴツゴツしていることから、カメラによって「顔かどうか」の判断が異なってきている、というわけです。

応用ひろがる

 最近では、多くの機種で顔認識機能が搭載されているためか、顔認識AFや顔認識AEだけではなく、顔認識を応用する機能が登場してきています。なかでも「笑顔」の特徴を登録した機能は多く利用されているようです。

 たとえばN-06Aや930NなどNEC製の携帯電話では、多くの機種で「スマイルモード」が、あるいはソニー・エリクソン製のS001では「スマイルシャッター」というモードが搭載されています。この機能は、シャッターボタンを押すと、カメラが自動的に被写体の笑顔を検出し、笑顔になった瞬間に自動的にシャッターを切るという機能です。

 F-09Aなど富士通製の携帯電話では「スマイルファインダー」機能が用意されていますが、こちらでは、被写体の笑顔度数が表示されます。カメラモードにして、携帯電話が顔を認識すると、その人がどの程度笑顔なのか「smile:○○%」と笑顔度がパーセントで表示されるようになっています。理想的な笑顔の特徴をデータベースに登録しておき、その笑顔にデータベースに一致するのかを数値で表わしているわけです。

 



(大和 哲)

2009/9/29 11:52