トピック
ソフト更新でAIを身につけた「LG V30+」
法林氏と本誌編集長が語る未来のスマートライフ
2018年6月29日 12:00
NTTドコモが2018年1月に発売した「LG V30+ L-01K」にソフトウェア更新が配信され、新たにAIカメラ機能などが加わった。すでにau版「isai V30+ LGV35」には先行して同様のアップデートが提供されているが、ほぼ同様の機能追加となる。
今回カメラに追加される主な新機能は「AIカメラ」と「Qレンズ」、「ブライトモード」の3つ。このほかにもGoogle アシスタントとの連携機能も拡充される。「AIカメラ」と「Qレンズ」はAIを使った画像認識機能を活用する。とくにAIを使って被写体に最適な撮影をする「AIカメラ」は、最新世代のスマートフォンで流行りの機能だが、これをソフトウェア更新で後から追加するというパターンは新しい。「ブライトモード」は4つの画素をまとめて感度を上げるという、センサー・ハードウェアと密接に関わっている機能だが、やはりこれもソフトウェア更新で追加されるというのは珍しい。
今回、ソフトウェア更新で大きな機能追加となったAIカメラなどについて、本誌でもおなじみの法林岳之氏と、本誌編集長の湯野康隆に語ってもらった(以下、敬称略)。
ディスプレイ、カメラなど全方位でポテンシャルの高い端末
湯野
1月にドコモからLG V30+が発売されて5カ月が経過しましたが、そこに最近、ソフトウェア更新でカメラ関連の新機能が追加されました。こうした新機能を追加するソフト更新自体、珍しいですよね。ソフト更新の前から使われているかと思いますが、まず、法林さんにとって、LG V30+ってどういった印象の端末ですか。
法林
LGの端末は去年のモデルの「LG V20 PRO」も使っていて、もちろんV30シリーズは取材もして実機も誌面で取り上げてますが、ディスプレイもキレイだしカメラもデュアルで、とにかくポテンシャルの高い端末だと思ってます。
湯野
標準レンズ+広角レンズの構成や明るいレンズのおかげで、いろいろなものが撮影できますね。
法林
そもそも最近のスマートフォンのトレンドである18:9ディスプレイ。これを一番最初に見たのは2017年のバルセロナのMobile World Congressですが、その中でも先陣を切っていたのはLGでした。ここは、ディスプレイを作っているLGの強みですよね。他社はそれを追っかけた印象もあります。
今回のLG V30+は有機ELを搭載してます。好みがあるので有機ELと液晶のどっちが良いか、評価しづらいですが、最近はスマートフォンで色鮮やかなコンテンツを見る機会が増えているので、そこは有機ELに大きなアドバンテージがあるかな、と。高性能なカメラで撮った写真や動画を綺麗なディスプレイで見る、というトレンドをしっかりサポートできてますね。
湯野
あと音に関しても、前のモデルからハイレゾ対応などに力を入れていて、マルチメディア系の機能が充実してますよね。
法林
以前からBang & Olufsenとコラボしたりと、音響は強化されてます。オーディオについても人によってハイレゾコンテンツを楽しむ人、ストリーミングで十分な人といますが、どちらにせよ端末の音響性能が良いことは絶対条件なので、そこはしっかり作られているかなと。
ソフトウェア更新でAIカメラを追加
湯野
そんなV30+ですが、今回はソフトウェアアップデートによってカメラに「AIカメラ」と「Qレンズ」、「ブライトモード」の3つの新機能が加わりました。どれもユニークですね。
法林
どれも面白いですが、やはりトレンドを考えるとAIカメラが注目のポイントでしょうね。フィーチャーフォン時代から自動シーン認識機能は搭載されてますが、いまは被写体や構図をAIが機械学習したデータを参照し、撮影時に反映して最適な写真が撮れる、と。
AIカメラはいろいろなスマートフォンが搭載してますが、判別する被写体やシーンが多すぎると、逆に誤認識も起きやすくなってますね。料理を撮っているのに建物と認識したり、人が動物として認識されたりとか。LG V30+のAIカメラは判別カテゴリーが8つに絞ってあるからか、比較的正確に被写体やシーンを認識して最適化してくれます。あとはV30+のAIカメラは何を見ているかが表示されるので、ユーザーとしてはより安心して使えるかなとも思いますね。
湯野
カメラのAI活用については、今後、業界全体でどんどん進化しそうですね。あとはトレンドにどれだけ合わせていけるかといった各社の競争になりそうです。
法林
基本の被写体としては人物やペット、食べ物あたりが王道ですが、シーズンによっては、たとえば正月なら日の出もあるでしょうし、夏休みの旅行なら日没なんかも撮るかもしれない。使う場所をイメージしやすい機能であることもポイントですね。グローバルでは5月に発表された「LG G7 ThinQ」(日本での発売は未定)では、AIカメラ機能はさらに進化していて、今回のソフトウェア更新はその機能の先取り的なものになってますが、今後も各社、継続した進化を期待しています。
湯野
今回のソフトウェア更新では、被写体をAIで認識し、類似画像をインターネットで検索する「Qレンズ」という機能も加わってます。こちらはPinterestとも連携するのですが、なにぶん日本ではあまりPinterestが使われていないせいか、日本独自の製品なんかは若干認識されにくいみたいです。
法林
そこはみんなが使っていけば、どんどん賢くなるでしょう。逆に、海外で中身がよくわからない食品とかを認識させることができると、お土産を買うときとかに便利とか、そういった用途もいいかもしれませんね。グローバルのデータを使う強みがあるかな、と。
あとQレンズではQRコードがそのまま読めるようになった。
湯野
従来は別アプリだったりしたので、そこが標準のカメラアプリに入ってぱっと読めるようになったのは良いですね。
法林
わざわざ別アプリを入れること自体、面倒ですからね。パッと認識させられるのがラクです。最近はQRコードの使用頻度も上がってきたので、とても良いんじゃないでしょうか。
湯野
決済サービスで使われ始めてますよね。
法林
決済もあるけど、お店の情報とかもQRコードで貼ってあったりと、利用頻度はこれからも上がっていくでしょう。
湯野
ユーザー側のQRコードを読ませる形式ですが、「d払い」などでもQRコード活用が広まってます。この広がり方によっては、QRコード読み取り機能は、いまさらではありますが、良い機能追加となりそうです。
あと今回のソフト更新では「ブライトモード」というのも加わりました。これ、ニュースリリースとかを簡単に読んだだけではわかりにくいのですが、けっこう面白いですね。後からこの機能が追加できるんだ、と思いました。
法林
これはカメラ技術としては「センサービニング」なんて言われてるもので、隣接する複数のピクセルを1ピクセルとして扱うことで、センサーの受光面積を仮想的に増やし、感度を上げる。これにより、暗い場所での撮影にさらに強くなった、と。
カメラの作り方にはいろいろな考え方がありますが、高解像度のセンサーを搭載し、明るい場所ではある程度の画質で撮影できても、暗い場所ではまったく撮れない、ノイズが多い、なんていうことが多々あります。それをこのモードを使えば、より明るく撮れるのが強みかな、と。しかもV30+は元から明るいレンズを搭載しています。これから夏に向けて、夜間の屋外なんかも撮影シーンとして増えると思うので、良いんじゃないでしょうか。
湯野
今までは明るいレンズや大きなセンサーを積んで頑張るといったやり方でしたけど、こうした形であとからソフトウェア更新で機能追加できるというのは面白いですね。
法林
高画質のために高解像度センサーを搭載すると、ピクセルあたりの受光面積が小さくなるし、かといってセンサーを大きくすると実装が大変になります。しかし「ブライトモード」のようにモード切り替えができれば、暗すぎる場所でも撮影できることになる。
これはデジタルカメラにもなかなかない機能です。ビニング自体は新しい技術ではないですが、誰もデジタルカメラに搭載しなかったし、ましてやソフトウェア更新で提供することもなかった。スマートフォンの普及により、デジタルカメラが“食われた”とも言われてますが、スマートフォンのカメラが急速に進化したのに対し、デジタルカメラがそこまで進化していなかったという面もあります。もちろんデジタルカメラは高画質化を追求していますが、たとえばV30+が搭載するようなデュアルカメラやブライトモードといった切り口には進化していませんでした。
湯野
シーン自動認識なんかはデジタルカメラの方が先に進化してましたが、現在のスマートフォンほど細かくはやっていなかった。このあたりはスマートフォンならではです。そういった面でみると、今回のAIカメラ、撮影中にAIによる認識が表示され、チラチラ変わるのが面白いですね。
法林
カメラのAIが仕事してる感じがして面白いですね。表示が出るあたりにスマートフォンならではの楽しみを感じます。
湯野
ここは、画面上のどの被写体をどう認識してるかを表示するとか、インターフェイスをもっと面白くしても、楽しいでしょうね。なんか近未来感ありますし。
カメラへのAI活用はスマートフォンメーカー各社が積極的に取り組んでいる分野ですが、そのあたりの業界の動きについてはどうとらえてますか。
法林
クアルコムは最新のチップセットでAI対応を謳っていて、ファーウェイは自前チップセットでAI対応を進めてます。ハードウェアの環境が整ってきてるので、あとはどこまでAI機能が反映されるかがカギになるでしょう。
ユーザー的にみると、カメラの性能が上がったと言っても、細かくセッティングして撮るのはカメラが好きな人だけです。普通の人にしてみれば、「感度って何?」とか、そういったところからの話です。スマートフォンのカメラはデジタルカメラに比べて手軽さが重要で、その手軽さをより良くするカギがAIだと考えています。
湯野
そもそもスマートフォンのソフトウェア更新自体、通常はネガティブなイメージが多いです。バグフィクスとかセキュリティ対策とか。しかし今回のソフトウェア更新は、便利で楽しい機能が追加になっています。こんな形で、発売後半年とかのタイミングで機能追加されるのが面白いですね。
法林
今までのソフトウェア更新は、プッシュ通知されたらやる、くらいに思われていましたが、こうした面白いソフトウェア更新ならば、ユーザーとしても積極的にアップデートを確認したくなるでしょう。これは次にも期待したくなる。
湯野
一般ユーザーからしてみても、スマートフォンは1年くらい使っているとマンネリ化しがちですが、ソフトウェア更新で新機能追加は良いですよね。
法林
半年くらいで新機能を一通り使いこなせるようになり、使い方が固まってきた、そんなタイミングで新しい機能が追加されると、楽しみも増えるし、新しい機能を使ってみたいと思うでしょうね。
湯野
是非とも今後もこうしたアップデートを続けて欲しいですね。
法林
そう、他のモデルを含めて、お客さんが驚くようなアップデートを提供し続けていって欲しいです。
湯野
半年に1回とかの頻度は難しいでしょうけど、発売から半年から1年というのは良いタイミングですね。今回のアップデートがかかったことで、お買い得感が高まってます。発売当初よりは価格も安くなってますし、良いタイミングかと。
LGの家電製品との連携にも期待
法林
あと、今回の「AIカメラ」と「Qレンズ」に、LGが全社で使っているAIブランド名「ThinQ AI」を冠してますが、LGはグローバルではいろいろな家電製品にこの「ThinQ AI」を積んでいるので、そのあたりの展開も期待したいですね。
湯野
住宅事情がグローバルと大きく異なる日本では、あまりLGの家電ってラインナップが多くないですが、韓国や米国では一通りLGで揃えたりできるので、それらが「ThinQ AI」で連携したりしつつある状態のようです。
法林
日本に入ってきてるところだと、LGのテレビで番組タイトルの音声検索できるくらいですが、電源のオン・オフや音量調整はリモコンボタンでも問題なくても、文字入力になるとリモコンのボタンでは面倒なので、音声入力はかなりラクですね。
ほかの家電がどのくらい日本市場で展開されるかわからないですが、LGはCES(ラスベガスで開催されている総合展示会)でGoogleと共同で発表もしていますし、Googleの音声アシスタントとの機能連携もちゃんとしていて、AI関連はいろいろ便利になっています。このあたりも是非、日本でも使えるようになって欲しいです。
湯野
今回のソフトウェア更新で、Google アシスタントに「AIカメラで写真撮って」と言えばカメラが起動してシャッターまで切ってくれます。話しかけると、AIが被写体認識して撮影してくれるという、非常に理にかなった組み合わせです。このあたりの連携も深まって、コマンドが増えて、いろいろなことができることを期待したいです。
法林
もともと日本人ってなかなか音声コマンドを使わない傾向がありましたが、最近のスマートスピーカーの受け入れられ方を見ると、みんなAIに話しかけるようになったのかなと。LGもそこをキャッチアップできているので、ユーザーとしても今後が楽しみなところです。
湯野
ほかのLG製品が日本に入ってくれば、たとえばエアコンの電源をThinQ AIなりGoogle アシスタントなりでコントロールできたりするといいですよね。
法林
LGは過去に洗濯機も日本に投入しているけど、洗濯機が「そろそろ洗濯しましょう」とか提案してくれるとか、そこまでAIができると便利だよね。
湯野
冷蔵庫の中身を認識して、外出中に「タマゴ買ってきて」と言われるとか、そのあたりは近い将来あるかな(笑)。そういった機械とのコミュニケーションも面白いと思います。インターフェイスがスマートフォンならば受け入れやすいですし、そこはLGには総合家電メーカーとして期待したいです。
法林
もっといろんな製品を日本でも展開してもらって、よりユーザーが楽しく便利になる環境を実現していって欲しいですね。