「IS03」ファーストインプレッション

スマートフォンも携帯も1台で楽しめる欲張りなAndroid端末


IS03

 11月26日、auから待望のスマートフォン「IS03」が発売された。仮予約とも言える「購入宣言」をしたユーザーは30万に達し、店頭では予約しなければ購入しにくい状況が続いているようだ。本稿では、auが1台目として投入した「IS03」についてファーストインプレッションをお届けする。

外観

 端末ソフトウェアプラットフォームはAndroid 2.1を採用する。素のAndroidとは異なり、ユーザーインターフェイスは「Ocean Observations」と共同開発したものが採用されている。また、KDDIでは、来春にも2.2へのバージョンアップも計画している。

 端末の大きさは約63×121×12.6(最厚部13.3)mm、重さは約138g。iPhone 4より一回り大きい程度で、iPhone 3GSと同程度のサイズ感となっている(IS03の方が数mm大きい)。ボディカラーはオレンジ、ホワイト、ブラックの3色展開、カメラのある背面部は、オレンジとホワイトが光沢感のある塗装、ブラックがマットな塗装と質感が異なる。カラーバリエーションの乏しいスマートフォンの中にあって、オレンジは印象に残る色合いと言えるだろう。

 端末はフルタッチタイプとなり、充電/着信ランプなども端末正面にある。背面部には、カメラのほか、おサイフケータイのロゴマークや、赤外線通信ポートなども用意される。

 端末上部にはアンテナが内蔵されているほか、ワンセグ用の伸縮アンテナやイヤホン端子などがある。スマートフォンではイヤホン端子がむき出しの製品が多いが、IS03にはカバーがついている。端末下部にはストラップホールも用意される。

 側面部には、カメラのシャッターキー、ボリュームキー、電源キーなどを配し、もう一方には外部接続端子としてmicroUSB端子がある。個体差や、使っていくことで使用感が変化する部分かもしれないが、充電する際などに利用する外部接続端子のカバーが硬く、若干開けにくい印象だ。


背面部ストラップホール
側面部側面部

高画素カメラ、ワンセグ、赤外線など対応

 フルタッチ端末の顔とも言えるメインディスプレイは、約3.5インチ、960×640ドットのNewモバイルASV液晶が搭載される。そのすぐ下には、常時表示が可能なメモリ液晶を装備しており、この組み合わされたディスプレイは「コンビネーション液晶」と呼ばれる。いずれもタッチパネル式のディスプレイで、上部のメインディスプレイはマルチタッチに対応している。

 カメラは957万画素のCCDカメラを搭載。側面部のシャッターキーを長押しすることでカメラ機能が起動するなど、一般的な携帯電話と同じような携帯電話の作法が踏襲されている。

 笑顔認識対応のオートフォーカス機能や、画像処理エンジン「ProPix」を搭載し、ISO12800相当の高感度撮影に対応するなど、シャープのカメラ付き携帯電話の特長がスマートフォンにも盛り込まれている。撮影シーンの自動認識機能や、ダイナミックレンジ補正機能など、充実したカメラ機能が魅力の1つとなっている。

 なお、カメラは動画撮影も可能で、720pのハイビジョン撮影にも対応するほか、QRコードリーダーや名刺リーダー機能といったOCR機能も用意されている。これまで携帯電話向けに提供されてきたこれら機能と同様に、テストした限りでは高い読み取り精度が実現されているようだ。

 スマートフォンでありながら、FeliCaチップを搭載し、おサイフケータイが使える点も大きな特長。おサイフケータイのアイコンをタッチすると、フェリカネットワークスが提供するおサイフケータイのポータル「ピットスクエア」に接続される。サイトはauのIS series向けに最適化されており、サービス提供している電子マネー「WAON」や、ビックカメラやヨドバシカメラのポイントサービスのアプリがダウンロードできる。

 また、12月以降の対応予定として、JR東日本の「モバイルSuica」や「Edy」や「nanaco」といった電子マネー、マクドナルドのクーポンアプリなどが紹介されており、早期の提供開始が期待されるところだ。

 このほか、ワンセグや赤外線通信機能、歩数計、FMトランスミッター機能なども用意されており、“1台目”の携帯電話として使いやすいよう配慮されていることがうかがえる。

3つのアプリポータル

Android Market

 スマートフォンは、ユーザー自身が自分のライフスタイルに合ったアプリを設定していくことで、より快適に、より便利に、より楽しい端末にと育てていける点が魅力だろう。IS03では、Androidのアプリ配信プラットフォーム「Android Market」のほか、auのアプリ配信マーケットである「au one Market」、そしてメーカーであるシャープのAndroid向けポータル「GALAPAGOS SQUARE」が利用できる。

 「Android Market」は、通常「ダウンロード履歴」の項目が配される位置に「au」という項目が用意され、若干カスタマイズされたものとなっている。「Android Market」におけるauの推奨アプリが紹介されるようで、「ダウンロード履歴」はサブメニューから呼び出す形なる。こうした試みはソフトバンクモバイルのAndroid端末でも導入されている。

 「au one Market」では、auが携帯電話向けに提供しているサービスのAndroid版アプリや便利ツール、ゲームコンテンツなど、無料/有料を含めたさまざまなアプリが用意されている。課金については、au携帯電話で有料サービスを契約するのと同様に、毎月の携帯電話料金と合算して支払える。

 なお、プリセットの状態で「au one ナビウォーク」「au one 助手席ナビ」「LISMO」といったauの各サービスのアプリがダウンロードできるショートカットが用意されている。アクセスすると「au one Market」のダウンロードページに飛び、各アプリがダウンロードできる。

 「au one Market」でアプリをダウンロードする際は、通常の携帯電話と同様に端末暗証番号が必要で、このほか、au one-IDとパスワードが必要となる。au one-IDとパスワードがない場合、ダウンロードページから新たに取得できる。

 シャープの「GALAPAGOS SQUARE」は、通常の携帯電話でいうところのメーカーサイトにあたるものだ。シャープはiモード向けに「SH-MODE」、EZweb向けに「SH@ez」、Yahoo!ケータイ向けに「SH-web」というメーカーサイトを展開しており、これまでAndroid向けサイトは「SH!SH!SH!」という名称で運営されてきた。11月15日より、Android向けメーカーサイトは「GALAPAGOS SQUARE」にリニューアルされ、「GALAPAGOS」ブランドを打ち出している。

 サイトでは、絵文字や待受画像、ダウンロード辞書などのコンテンツが用意されている。また、IS03にシャープとしてプリセットしているアプリやウィジェットもダウンロードできるので、端末をオールリセットして初期状態に戻した際などに活用できそうだ。

au one MarketGALAPAGOS SQUARE

jibe、セカイカメラ

 このほか、auのサービスではないが、ソーシャルサービスをまとめて表示できる「jibe」や、auが“禁断のアプリ”と位置付けるVoIP&メッセンジャーアプリ「Skype」、拡張現実(AR)アプリ「セカイカメラ」などのショートカットも用意されている。これらのアプリはauのオススメアプリに位置付けられている。

 「jibe」は、TwitterやFacebook、mixiといったソーシャルサービスへの投稿を統合し、1つのタイムライン上にまとめて表示可能なアプリとなっている。Twitterやmixiなどで友人知人らが投稿した内容が1つの時間軸上に表示でき、まとめてその内容をチェックできる。また、各サービスに同時投稿が可能で、グルメ情報やブログなどもチェックできる。

 「セカイカメラ」は画面に表示された現実の世界に、さまざまな情報が配置できるアプリ。各情報には位置情報が付加されており、カメラを向けた方角にある情報を3Dマッピングして表示するというものだ。


jibejibeのアカウント管理画面

Skype

Skype

 「Skype」は、パソコンの世界で言わずと知れたコミュニケーションツール。通話やメッセンジャーとして活用できる。通常のSkypeと異なるのは、auの場合、回線交換網と呼ばれる携帯電話網で通話ができる点だ。

 インターネット網ではなく、一般的に遅延が少なく安定していると言われる携帯電話網でSkypeが利用できるため、パケット通信網でのSkypeとはひと味違った音声のやりとりが利用できる。050で始まるSkypeの電話番号には電話できず、テレビ電話としても利用できないなど制限はあるものの、SkypeのIDでの通話が可能だ。

 長電話したいユーザーなら、話し相手がSkypeをインストールしておけば、au同士のみならず、パソコンやiPhoneなどのスマートフォンとも無料通話が可能だ。国内からの発信となるが、海外にいる友達と長電話する際にも、パソコンの前にへばりついてSkype通話する必要はない。ただし、通話無料は2011年11月30日までの時限的なものなので注意が必要だろう。KDDIでは、来年12月からの料金について別途案内するとしている。

 なお、Skypeアプリを利用して、国内の電話番号宛に電話がかけられる。その場合は、au携帯電話で通常電話をかけるのと同じ料金になるので、電話は全てSkypeアプリから行い、Skypeアカウントへの通話は無料になる、そう考えてもよさそうだ。

あれもこれもと楽しみたいユーザーに

 「IS03」は、「Android au」というキャッチコピーでauの復活を印象づけるための、いわば旗振り役のような存在だ。複数台の端末を所有できるユーザーならいざ知らず、大部分のユーザーは個人で所有する携帯電話は1台だろう。スマートフォンにおける、「ワンセグがない」「おサイフケータイがない」「赤外線通信機能がない」といったユーザーの気がかりを一掃し、スマートフォンでありながら「全部ありますよ」と売り込めるモデルとなっている。

 今回ファーストインプレッションということで、ざっくりと試用していくことになったが、その使用感を言えば、スマートフォンとこれまでの携帯電話の良いとこどりといった印象で、スマートフォンをこれから使ってみたいと考えているユーザーにオススメしたい。カメラや赤外線などの機能はシャープらしい細かい配慮が見られ、日本のメーカーらしいスマートフォンだと感じる。

 操作全体の快適さという面で言えば、タッチパネル操作に対応した一般的な携帯電話や、Android 1.6などのスマートフォンよりも快適な印象だ。その一方で、サムスン製の「Galaxy S」やHTC製の「Desire」のさくさく感、巧みな演出の「iPhone 4」に分があるかもしれない。「IS03」には、ワンセグや赤外線、おサイフケータイといったほかの端末にはない魅力的な機能があり、何を重視するかによって判断が分かれるところだろう。来春にはOSのバージョンアップも予定されており、バージョンアップでの改善にも期待されるところだ。

 なお、ユーザー個々人の使い方によって、動作の快適性に関しては感想が異なるはずだ。auショップや量販店の店頭には、「IS03」の実機が設置されている場合があるので、購入前に確認してみることをオススメしたい。

 KDDIでは、テレビCMや街頭ポスターなどで積極的に「Android au」を打ち出しており、Androidと言えばauという積極的なアプローチでユーザーを引きつけようとしている。「Android au」に「with Google」という言葉が付記されている通り、KDDI側がAndroidで勝負をかけようと念入りに準備してきたこともうかがわせる。

 仮予約とも言える「購入宣言」には、最終的に30万人を超えるユーザーが参加し、その9割はauユーザーだという。KDDI自体が認めるように、スマートフォン市場への参入に当初つまづいたauだったが、9割という数字はauユーザーが待ち望んでいた結果ともいえるだろう。

 これまでauが携帯電話向けに提供してきたさまざまなサービスに対応しており、LISMOやau one ナビウォーク(EZナビウォーク)、au Smart Sportsなどをスマートフォンでも継続的に楽しめる。1台のスマートフォンであれもこれもと楽しみたいユーザーにはもってこいの端末といえるだろう。



 



(津田 啓夢)

2010/12/3 22:13