ニュース
旗艦モデルに注力するZTEの最新戦略
日本も含めた4市場を「コア」に
(2016/5/27 10:57)
ZTEは、5月27日(現地時間)に中国・北京で新製品発表会を開催。フラッグシップモデルの「AXON 7」を披露した。AXON 7については既報のとおりだが、イベントでは端末部門のCEO、曽学忠氏が、ZTEの現状や開発の経緯などを明かした。また、同日行われた曽氏とのグループインタビューでは、日本市場にかける意気込みも語られている。
失敗続きだったZTEのスマホ事業、その反省を生かした「AXON 7」
新製品発表会では、その会社の華やかな業績が語られることが多い。「出荷台数が伸びている」「○○○でのシェア1位」「パテントを多く持ち、技術に強い」といった具合にだ。ところが、ZTEの発表会は、異例の“反省会”で幕を開けた。曽氏は、過去の同社が発売してきた端末を挙げ、「マーケティングや、ビジネスモデルの構築に失敗した」などと、率直にその理由を語る。
4年前にリリースした端末に関しては、「デザインがNexus(6P)にそっくり(笑)」として、先見の明がありながらも、それをビジネスチャンスに結び付けられていない同社の体制を反省した。曽氏によると、「カスタマイズモデルを作りすぎたのが失敗の1つで、ビジネスモデルや人材のリソースの割り当て方を間違えていた」という。こうした数々の失敗の結果、ZTE端末の顧客満足度は、どんどん低下していってしまった。
一方で、こうした数値の高い「アップルやサムスンのような、イノベーティブな企業を尊敬している」という。ZTEもそうした端末を送り出さなければならない、というわけだ。ZTEは、海外でもキャリアブランドの端末を開発することが多く、フラッグシップモデルを持たなかった。そのせいもあって、会社としての“顔”がユーザーに見えづらくなっていた。この反省基づき、ZTEは方針を転換。モデルのバリエーションを「AXON」「Blade」「Nubia」の3種類に絞り込み、これらにリソースを集中させていく。
その一環として生まれたのが、AXONシリーズ。「AXON Elite」や「AXON Pro」など、市場によって名称や機能は異なるものの、大きな差はなく、これらがAXONの第一世代となる。初代AXONは、「ラッキーなことに、国際的なメディアからもいい評価を得ている」といい、顧客満足度も急上昇していることが語られた。
曽氏は中国ECサイトの発表している顧客満足度を引き合いに出しながら、「97を超える」と宣言。同調査では、サムスンが98、アップルが97となっており、曽氏の発言は、この上位2社を上回ることを意味する。その切り札となるのが、AXON 7というわけだ。
発表会では、この後、AXON 7の特徴や機能が紹介されていった。既報のとおり、ディスプレイは5.5インチの2Kで、Hi-Fi再生用に2つのオーディオ用チップを搭載。カメラの画素数は2000万画素で、光学手ブレ補正にも対応する。また、ライバルであるiPhone 6s(Plus)や、ファーウェイの「P9 Plus」などとの機能比較も行われた。
曽氏はデザインに関しても自信をのぞかせており、iPhoneのフォロワーが多い現状の端末事情に言及。ZTEはそこからの脱却を図っているとしながら、AXON 7のデザインはBMWのデザイン会社が担当したことを明かした。また、製造はシャープを傘下に収めたホンハイ(フォックスコン)が担当。グーグルやクアルコムのほか、中国のVR SEENなど、さまざまな企業とコラボレーションしていることも語られた。
日本は最重要拠点の1つ、端末は3キャリア発売を目指す
グループインタビューでは、曽氏から、AXON 7開発の狙いが語られるとともに、ZTEにとっての重点市場が明かされた。曽氏によると、AXON 7は「アフォーダブルプレミアム」(値ごろな特別感)という点が、最大の特徴。2Kディスプレイや「Snapdragon 820」を搭載、金属ボディを採用しながらも、価格は「他社のプレミアムモデルよりも大幅に安い」という。発表会で明かされた価格は、北米版が449ドル(約4万9300円)。北米ではiPhone 6sが649ドル(約7万1200円)のため、ちょうど200ドル(約2万1900円)安いことになる。
安価な理由を尋ねられた曽氏は、「競合他社の端末が高すぎるだけ」とかわしつつも、「アップルの利益やマージンを見ていただければ分かるだろう」と、他社よりも薄利で勝負に出ていることを示唆した。
AXON 7の販売目標は「200万台」だといい、この数字には派生モデルも含まれている。曽氏よると、「『AXON 7 mini』と『AXON 7 MAX』があり、この3機種トータルで200万台」とのことだ。初代AXONシリーズはグローバルで約80万台が販売されており、ZTEでは、その規模を2倍以上に拡大していく。
グローバルに端末を展開する企業としては、やや少なめの目標だが、ZTEでは規模だけをやみくもに追い求めない方針を掲げているという。曽氏は「顧客体験の向上がもっとも重要」だと述べていたが、数を増やすよりも、きちんとしたフラッグシップモデルを確立することに軸足を置いているようだ。
その目標を達成するために、ZTEではグローバルで4つの重点地域を定めているという。その4市場とは「中国、北米、日本、欧州のマーケット」(曽氏)。本社のある中国ではもちろんだが、ZTEは北米シェア4位で、サムスン、アップル、LGの次につけている。一方の欧州市場は開拓中といったところだが、特にロシア市場では急成長をとげた。日本でも、SIMフリー市場で存在感を出すために力を入れている。
同時に、キャリアとのビジネスも重視しているといい、「日本では、3つのキャリアと協力していく」(曽氏)と語った。端末はスマホとは限らないものの、「mamorino Watch」を発売したKDDIや、「モバイルシアター」を販売するソフトバンクに続き、ドコモが同社の端末を取り扱うようになる日もくるかもしれない。