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auのスマホ出荷を支える最新の物流拠点が稼働

ヤマトと協力、ショップへの当日配送も可能に

 KDDIは、ヤマトロジスティクスと協力し、auショップなどへの商品配送の大部分を担う新たな物流拠点「KDDI東日本物流センター」の運用を開始した。同センターは神奈川県相模原市に建設された大型物流拠点「ロジポート橋本」内の4階に設けられた施設で、27日には現地にて竣工を記念した説明会と、すでに稼働しているラインの見学会が報道陣向けに開催された。

「KDDI東日本物流センター」が入る神奈川県相模原市の「ロジポート橋本」

 KDDIは、auショップにおいて、端末のみならず「au +1 Collection」などのアクセサリーのラインナップの拡充や販売を強化している。加えて、「au WALLET Market」が開始されたことで、auショップの店頭で、来店者に提案する商品ラインナップはますます増加している。

 KDDIではこれまで、auショップからの注文を、物流拠点にて基本的に手作業で仕分ける方法で配送を行っていた。また物流拠点は全国で83カ所、関東では47カ所(基地局用の建設資材なども含む)に上るなど分散していた。ショップからの注文に対し複数の物流拠点から発送されることも多く、ショップには1日に何度も荷物が届くことになるため、その度にスタッフが接客の合間を縫って検品・整理を行うといった作業が発生していたという。

従来の物流拠点における作業の様子

 新設の「KDDI東日本物流センター」は、こうしたauショップへの配送を中心とする、KDDIの中での物流を大幅に効率化するもの。スマートフォン、携帯電話、「au +1 Collection」などのアクセサリーについて、入荷から出荷までを一挙に担う拠点となる。複数メーカーからの商品の入荷や、ショップからの注文に応じたピックアップ、検品、梱包、出荷までの工程全体が、従来と比較して30%以上効率化するとしている。

 同センターの稼働により、即日配送といった迅速化や、これまで複数拠点から発送されていた梱包形態がひとつにまとめられるといった、ショップ運営に大きく関わるメリットが挙げられている。これらはヤマトロジスティクスの最新設備の導入や、ヤマトの物流システムと一体となった運用、庫内作業をヤマトロジスティクスに委託するといったさまざまな協力体制で実現され、将来的には東名阪エリアで即日配送を可能にする仕組みを構築する。KDDIの既存の物流拠点は、関東では2015度末までに13カ所以下を目指すなど、大幅に縮小させる見込み。

 また今後は「au WALLET Market」の商品を同センターで取り扱うことも検討されている。鮮度や温度の管理が必要な商品については、ヤマトの「厚木ゲートウェイ」をはじめとしたヤマトの拠点と連携することでカバーしていく方針。

 「KDDI東日本物流センター」が入居するロジポート橋本は、ヤマトホールディングスが全国規模の流通の新たな拠点として建設した「厚木ゲートウェイ」まで車で20分と近いことも大きな特徴で、「KDDI東日本物流センター」はヤマトの厚木ゲートウェイと一体運用される。ヤマトロジスティクスの「ゲートウェイ構想」ではほかにも中部と関西にゲートウェイがオープンする予定で、鉄道における新幹線のように、トラックで日中に、ゲートウェイ間の“多頻度幹線輸送”を行う仕組み。これにより、これまでなら夜間にまとめて輸送していた荷物も日中に何度も輸送できることになり、東名阪エリアで主要都市間の即日配送を可能にするとしている。

ヤマトグループの「バリュー・ネットワーキング」構想
ヤマトグループのゲートウェイ構想

KDDI田中社長「関東圏が身近に」

 KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、KDDIにおける物流改革は2012年に「3M戦略」を発表した頃にまでさかのぼる取り組みとし、この当時から「au WALLET Market」を計画し、さまざまな商品の取り扱いに対応できるよう改革を進めてきた様子を語った。「最新の物流ネットワークにつなぎ込める」と、ヤマトロジスティクスの厚木ゲートウェイに近い立地もポイントとし、「ここに構えることで、関東圏を本当に身近にできる」と期待を語った。

挨拶するKDDI 代表取締役社長の田中孝司氏
左から、KDDI側の説明を行ったKDDI 理事 購買本部長の赤木篤志氏、KDDI田中社長、ヤマトホールディングス 代表取締役社長の山内雅喜氏、ヤマトロジスティクス 代表取締役社長の本間耕司氏

山積みのスマホ、流れるダンボール――物流拠点の内部を見学

 「KDDI東日本物流センター」ではヤマトロジスティクスが開発した物流拠点用の設備「FRAPS」(Free Rack Auto Pick System)と「マージソータ」が導入されている。

 「FRAPS」は、作業スタッフの前に流れてくるコンテナに対して、ランプが光っている棚の商品を指定数量だけ取り出してコンテナに入れ、棚のボタンを押して完了させるというもの。バーコードなどを駆使したデジタル管理が行われており、コンテナは1個が1件のauショップに対応する。従来は紙の伝票を見ながらスタッフが台車を動かし棚を回っていたが、「FRAPS」ではスタッフは移動せず、コンテナが必要な場所に移動していく形になっている。熟練のスタッフでなくても作業を行え、ピックアップだけなら従来の倍以上に効率化されているという。

FRAPS
1)ピックアップが必要なコンテナが本線から外れる。コンテナは側面のバーコードで管理されている
2)青いランプが点灯した棚の商品を、表示されている個数だけピックアップ
3)ピックアップが完了したらボタンを押す
4)コンテナを本線に戻す
点灯するボタンと数量表示
各エリアでは進捗状況が「見える化」されている

 ショップから複数回の注文があった場合などは、出荷用のラインの前で一時待機する「マージソータ」によって、ショップのコンテナが再びピックアップ用のラインに戻され、商品がなるべくひとつのダンボールで出荷されるようになっている。マージソータは最大2000個のコンテナをプールできる。

 「FRAPS」と「マージソータ」は、ヤマトロジスティクスが提供するものとして最大規模になっているという。これらの最新の設備により「KDDI東日本物流センター」全体では30%以上の効率化を実現し、1日7時間の運用で10万ピースの処理が可能になっている。

マージソータ
注文に応じて店舗に対応するコンテナが再度ピックアップエリアに戻され、複数商品を同梱して出荷する
マージソータの奥行き。最大2000個のコンテナをプールする
そのほか
入荷エリア
入荷した商品の在庫スペース。多くはスマートフォンだ
最新のスマートフォン「Xperia Z5 SOV32」(ピンク)も、関東の中心となる物流拠点では山積み。手前に写っているだけで300台以上ある
こちらは従来のピックアップで使われていた台車。KDDIでは「ゴロゴロシステム」と呼んでいた
商品がピックアップされたコンテナの検品エリア
検品の進捗状況も「見える化」
「ROM書き」エリアも
梱包され出荷エリアに移動していく荷物
出荷のエリアの最終段階。貼られた伝票のバーコードを読み取る
出荷する荷物を台車に載せていく
台車のままトラックに積み込む。この後、ヤマトの厚木ゲートウェイに運ばれ、全国に配送される
「ロジポート橋本」内でトラックが移動する通路

太田 亮三