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通信技術で大阪マラソンを支えるケイ・オプティコム

ウェアラブル機器の実証実験などの取り組みを紹介、arrows M02も一般公開

ケイ・オプティコムブース

 ケイ・オプティコムは、インテックス大阪で開催されている「大阪マラソンEXPO」において、同社がメインスポンサーを務める大阪マラソンへの取り組みなどをアピールしている。MVNOサービスの「mineo」を提供している同社だが、mineoとは直接関係ない分野でモバイル・ウェアラブルを使ったユニークな取り組みがなされており、それらをレポートする。

SCOUTER

 ブースでは、ケイ・オプティコムがミズノと共同で実施する、ミズノのウェアラブルデバイス「SCOUTER」(スカウター)の実証実験についての展示や体験会が実施されていた。

 ミズノが開発中の「SCOUTER」は、ソニー製のディスプレイモジュールを搭載する、メガネ型のヘッドマウントデバイス。サングラスの左右両端にデバイスユニットがあり、その片方がディスプレイとなって、視界の隅に情報を表示する。ディスプレイは片眼・カラー・透過型表示。ヘッドマウント部だけでデバイスとして独立しており、スマートフォンなどとはBluetoothで接続する。

表示は宙に浮いて見える(カメラだと一部しか写せない)
トレッドミルを使った体験デモ
SCOUTER装着イメージ

 ディスプレイ自体は2015年1月の展示会(CES)でソニーが「SmartEyeglass Attach!」として展示していたもので、ミズノがアプリやサングラスの開発・デザインを行い、来年までの製品化を目指している。

 ディスプレイ部は非常に小さく、瞳孔の位置に合わせないと表示が見えないが、位置が合うと十分な大きさになって見える。走りながら利用できるよう、サングラス部分のデザインや重量バランスが作られている。ブースでは来場者が装着したままトレッドミルで走れる体験展示が用意されており、筆者も試してみたが、そこそこしっかり走ってもディスプレイ部がぶれて見えなくなることはなかった。こうしたデザイン面で、スポーツメーカーであるミズノのノウハウと技術が活かされているという。

心拍数測定ユニット

 左右のユニットを接続するラインは頭の後ろを回すようになっており、そこに心拍数測定ユニットを引っかけられるようになっている。このユニットからはクリップ型センサーが伸びており、このクリップを耳たぶに挟むことで、心拍数を測定する。センサーは光学式で、腕に巻くものよりも高精度な測定と胸に巻くものよりも高い利便性を実現しているという。

 今回の大阪マラソンでは、参加者からモニター希望者を募り、抽選で2名にこのデバイスを貸与して大阪マラソンを走ってもらうという試みを実施している。モニター2名のほかにも、ウェアラブルデバイスの研究者である神戸大学の塚本昌彦教授など数人がSCOUTERの実証実験としてフルマラソンに参加する。

開発中の連携アプリ

 なお、SCOUTERのバッテリーの持ちは表示頻度などによるが、現行の実装仕様ではフルマラソンに耐えられるほどではないため、一般参加者は途中でデバイスを回収、塚本教授は途中でデバイスを交換して対応するという。

 今回のシステムでは、親機となるAndroidスマホを同時に持ち歩き、そちらからのデータをSCOUTERに表示する形式となる。ディスプレイには走行距離や順位、速度、タイム、心拍数などが表示される。順位の算出にはケイ・オプティコムが提供するシステム「ランナーズ・アイ」が利用される。

 現状の用途としてはランニングが想定されているが、このほかにもゴルフや自転車、登山などでの利用が想定されている。

ランナーズ・アイ

 「ランナーズ・アイ」はケイ・オプティコムが開発運用し、全利用者向けに提供される公式Webサービスで、従来からの引き続きの提供となる。これは参加者が靴に装着するRFIDとコース5kmごとのセンサーで全参加者のラップタイムを計測し、それをさまざまな情報をネット経由で共有するというもの。RFIDとセンサーは大会運営側が配布・設置しており、その測定結果をケイ・オプティコムが見やすくなるように流用している。

 まず競技中、ラップタイムが計測されると、その時刻に基づき参加者のペースが推測され、そこからさらに参加者のバテなどを考慮して現在位置が推測され、ランナーズ・アイのWebページ上に表示される。このシステムは誰でも利用可能で、氏名で参加者を検索してフォローすることで、その参加者の位置がWebページ上に表示される。

 こうしたマラソン大会では、応援したいランナーがいつ通過するかがわからないため、沿道での応援は困難になりがちだが、このシステムを使うことで、応援対象がいつ頃どこを通過するかが予測可能となる。知人の応援のみならず、著名人の参加者をフォローして応援するのにも使える。

参加者検索画面
参加者が靴紐に結びつけるRFID

 この「ランナーズ・アイ」は、15/25/35kmとゴール地点に設置されたカメラを使い、参加者の競技中映像を見ることにも使われる。この映像の簡便な共有手段として、今年からは新たに「マイニュース」というシステムが導入される。

マイニュース映像。実際に投稿された応援コメントもテロップになる

 「マイニュース」はゴール後に利用するシステムで、アクセスすると、その参加者の各地点での映像をニュース風にまとめた45秒の動画が作成され、Web経由で視聴・ダウンロードが可能となる。作成は完全に自動で、最初は30秒ほどかかるが、以後は専用サーバーに一定期間(11月30日まで)保存されていつでもすぐに再生できるようになり、SNSなどで共有できる。

 これらのシステムはすべてパソコンおよびスマートフォンのブラウザから無料利用できる。サーバー側での動画の自動編集やデータの保存にはそれなりのサーバー側の負荷があるが、1時間に8000人分を処理する能力を準備し、全参加者が利用することも想定して対応しているという。

「マイニュース」を開発した赤井氏、上岡氏、鶴田氏(左から)

 ケイ・オプティコムではメインスポンサーの立場から、これらのシステムを無償で大阪マラソンに提供している。社内では半年前から企画を立案・検討し、プロジェクトチームを立ち上げ、通常業務と並行して各システムの開発を行ってきたという。

 このプロジェクトチームにはいろいろな部署から集められる。たとえば今回説明いただいた3氏、赤井夢佳氏は技術本部 技術システムグループ 監視運用システムチーム、上岡功氏は技術本部 サービスオペレーションセンター 局舎線路保全チームリーダー、鶴田真史氏は技術本部 計画開発グループ ネットワーク技術開発チームと、本来の所属部署はバラバラだ。このようにいろいろな部署からいろいろな技術やリソースを集めることで、プロジェクトを遂行するというわけだ。

ARお宝レーダーのアプリ

 このほかにも、家族の参加者を応援に来た子ども向けの企画として、大阪マラソンのゴール地点でもある大阪マラソンEXPOの会場において「ARお宝レーダー」というゲームを提供する(25日のみ)。

 これはBluetoothビーコンを使ったスタンプラリーのようなゲームで、2カ所に隠されたカギと宝箱を探しだし、景品を得るというもの。こちらもマイニュースのように、社内のプロジェクトチームで開発されたものとなっている。

ケイ・オプティコムの弓場氏

 このほかにもブースではステージイベントや体験ゲームに加え、mineoのプリペイドSIMカードやエントリーパッケージの販売も行われている。こちらについては、mineo事業を担当するケイ・オプティコムの経営本部 モバイル事業戦略グループ モバイル事業推進チーム チームマネージャー 弓場哲成氏にお話を伺った。

 プリペイドSIMカードとしては、訪日外国人向けの製品も用意されていた。大阪マラソンは参加者およそ3万2000人中、約6000人が外国人という。プリペイドSIMカードは訪日外国人への需要を見込んでおり、取材時は大阪マラソンの前々日の平日昼間で、比較的来場者が少ないにもかかわらず、すでに数枚が販売されたという(マラソン参加者はゼッケンなどを受け取りに事前に会場に来る必要がある)。

 また、mineoの通常契約についても、ネット経由だと新規・MNP契約手数料は3240円となるが、それが省けるエントリーパッケージが2160円で販売されている。

SIMカード販売コーナー

 これらのプリペイドSIMカードやエントリーパッケージは、グランフロント(梅田)にあるmineoのアンテナショップでも販売されている。大阪マラソンEXPOのブースにあるmineoコーナーは、アンテナショップの2号店のようになっており、端末も展示がされていた。

 アンテナショップではまだ端末の販売は行なわれていないが、こちらについては年内にグランフロントのアンテナショップで販売を開始し、それを皮切りにアンテナショップを増やしていく方針だという。

 ブースでは先日発表されたばかりの富士通製SIMフリースマホ「arrows M02」のmineo限定カラー「Pink」も展示されていた。こうした国産端末は、今後増えると見込まれている主婦層や中高年齢層に対し、国産の安心感を提供することを目的としているという。arrows M02は発表以来、mineo公式コミュニティーブログ「マイネ王」などで色などに好評の声をもらっているとのことだが、価格については「もう少しお待ちください」とのこと。

端末展示コーナー
arrows M02のPink

 mineoはもともと展開していたau網でのサービスに加え、ドコモ網でのサービスを追加し、それを記念し、10月いっぱいは新規加入(MNP含む)に対し、割引キャンペーンを実施している。このキャンペーンやドコモ網サービスの追加などが好評で、9月と10月は新規加入者がこれまでの数倍に伸びているという。au網のサービスでも、従来よりも加入の勢いが倍になっているとのことだ。

 今後の競争については、「価格競争をする気はなく、それより無駄なく使えるといった料金施策などを展開したい」という。その例としては、コミュニティーブログに有益なコメントを書き込んだユーザーに「チップ」として容量を贈る仕組みを作っているという。この仕組みも12月くらいの導入を目指しているという。

 mineoでは将来的に1つのSIMカードでマルチキャリアに対応させる仕組みの導入を検討しているが、これに関しては、「直近では難しい。まずはMVNOに設備を開放してもらわないと始まらず、それに伴う技術的なものも研究しないといけない。いつ始まるというようなことはいえない」という。

電力事業をPRする発電ゲーム

 また、2016年4月の電力小売りの自由化に向け、ケイ・オプティコムも電力小売りに参入することが発表されているが、こちらについては、詳細の発表は冬頃に予定しているという。ケイ・オプティコムには固定通信のサービスもあり、mineoもあるが、それらとどう組み合わせるかは検討中とのこと。しかし今回の大阪マラソンEXPOのブースでは、来場者が歩行運動器(ステッパー)で発電した電力で電動ミニチュアカーを動かして競うというゲームが行なわれ、電力小売り参入に向けたPRも開始されていた。

白根 雅彦