健全なソーシャルゲームの環境を~業界団体「JASGA」発足


 8日、ソーシャルゲームの健全な環境作りを目指す業界団体「ソーシャルゲーム協会(Japan Social Game Association、JASGA)」が発足した。同日午後、都内で会見が行われた。

 発足にあたって、業界団体の設立を主導してきたNHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ディ・エヌ・エー(DeNA)、ドワンゴ、ミクシィの6社、そして、ゲーム関連の業界団体であるコンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)のほか、ソーシャルゲームを提供する各社が参画する予定となっている。

左から中村氏、田中氏、堀部氏

 団体設立の契機は、今年3月、6社によって設立された連絡協議会。この協議会はリアルマネートレード(RMT、ゲーム中のアイテムを現金でやり取りすること)などの課題に取り組むものだった。当時は、グリーで提供されていたコンテンツにおいて、システムの不具合を突いてアイテムが複製され、RMTが盛んに行われた。その一方で、RMTを活発化させた背景には、「コンプガチャ」と呼ばれる仕組みが存在していた。ランダムでアイテムを入手する“ガチャ”という仕組みに加えて、複数のアイテムを入手すると、より希少なアイテムが手に入るという「コンプガチャ」は、ゲームへの熱中度を高め、今年5月には消費者庁から「コンプガチャは景表法で禁じられているカード合わせにあたる」との見解が示された。

 こうした流れから、業界各社は、自主的な取り組みを積極的に実施する姿勢を示しはじめ、今回、JASGAが設立されることになった。

 会見には、共同会長・代表理事でグリー代表取締役社長の田中良和氏、事務局長の慶應義塾大学大学院教授の中村伊知哉氏、準備委員会座長で新団体の諮問委員会メンバーでもある一橋大学名誉教授の堀部政男氏が出席して、説明を行った。なお、当初出席予定となっていたDeNA代表取締役社長の守安氏は急遽、欠席。その理由は「諸事情のため」とされている。

これまでの経緯JASGAの概要

まずは自主規制、啓発活動などを実施

 ソーシャルゲームを安心して利用できる環境を――そうした目標を掲げて発足したJASGAは、まず「ソーシャルゲームに対する自主規制」「青少年などに対する啓発活動」、「カスタマーサポート品質の向上のための活動」を行う方針を示している。

 自主規制については、まず主導役である6社が策定した「コンプガチャガイドライン」「ゲーム内表示に関するガイドライン」「リアルマネートレード対策ガイドライン」をベースに、JASGA内部で議論をして、12月にも新たなガイドラインを示す予定。このガイドラインによるコンテンツの審査は第三者に委託して行われる予定で、年明けから運用される見込み。

組織自主規制について

 今回の会見は、あくまで団体の発足をアナウンスするものとされ、12月に策定予定のガイドラインの具体的な中身について、詳細の説明は行われなかったが、先述した通り既存のガイドラインをベースにしたものになる見込み。団体側は、各ソーシャルゲームに対するパトロールを行うほか、ユーザーからの指摘なども受け付ける体制になるという。

 また、啓発活動については、来年1月~2月にはパンフレットを作成する予定。その後のスケジュールは明らかにされていないが、青少年に向けてお金や時間の使い方、コミュニケーションのマナー向上などをテーマに、Webサイトでの情報発信、シンポジウムなどを行う。ソーシャルゲーム事業者にもサービス健全化を図るための勉強会などを実施する。

 カスタマーサポート関連では、ユーザーからの相談を受け付け、消費者センターと協力したり、各事業社のカスタマーサポート体制の強化に向けた取り組みを行うとのこと。

啓発活動カスタマーサポートについて

関連省庁ともやり取り

 諮問委員会のメンバーに就く堀部氏は、冒頭、インターネットと規制の在り方について説明。同氏は、2009年より施行されている「青少年インターネット環境整備法(青少年ネット規制法)の成り立ちに触れて、「法的規制を強める意見がある中で、関係者の自主規制で進め、ネット上は原則自由であるべきとして、規制の少ない法律になるよう国会議員、関係省庁とも話をした」と語る。

 今回も、急激に事業規模が拡大する一方で、コンプガチャなどが問題視されたソーシャルゲームに対して、法規制ではなく、「自主的な対応がベストではないかという考え方で、7月から準備委員会を開催して細部を詰めてきた」と振り返った堀部氏は、「世界から評価される日本のソーシャルゲーム、ひいては情報産業の発展を図りたい」と述べ、青少年保護の取り組みに各社が尽力することへの期待感を示した。

 事務局長の中村氏は、収益を追求する事業である一方、自主的な規制を行っていくという2つといかに両立されるのか、という質問に対して「さまざまなエンターテイメント産業が歩んできた道。まずは基盤固めをしていく」とコメント。JASGAの設立にあたっては、消費者庁、総務省、経済産業省ともやり取りを行ったとのことで、今後、官庁側の取り組みにも参画していく意向を示した。

 なお、今回、対象となるソーシャルゲームとは、いわゆるソーシャルネットワークサービス上のゲーム、という緩やかな定義にとどめられている。JASGA自体は、年間1億程度の費用をかけて、当面は専従職員2名で運営していく。




(関口 聖)

2012/11/8 18:59