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「ポケポケ」開発陣が語る“紙とデジタルの融合”とは、App Store Awards受賞記念イベント
2025年12月11日 00:00
ポケモンカードをより多くの人に
10日にApple 表参道で開催された「Today at Apple」に登壇したのは、ポケポケを制作するゲーム制作会社クリーチャーズ 執行役員の岡本康太氏、同じくクリエイティブディレクターの辻川亮氏、シニアイラストディレクターの齊藤はる氏の3人。
「ポケポケ」はスマートフォン向けのアプリゲーム。クリーチャーズのほか、ポケモンとDeNAの3社により開発されている。リリースから1周年を迎えた「ポケポケ」だが、クリーチャーズ内では10年ほども前から構想はあったという。多くの世代に馴染み深い「ポケモンカード」だが、一時期は「まだあるんですね」「昔やってました」と言われることもあり、ホビーとしての認知度は低下していたこともあった。
そんな中「一般の人に手に取ってもらえるものを増やしていきたい」という思いを具体化したのが、現在の「ポケポケ」。辻川氏は「紙のポケモンカードの良さを分析して、それを損なわないように継承して、スマホだからできることを盛り込む」と開発に秘めた思いを語る。
「Pokémon GO」のヒットもあり「複雑なゲームよりも、多くの人が楽しめるもののほうがスマートフォンというプラットフォームに適しているのではないか」ということで現在の形を目指して開発されたと、岡本氏は説明した。
紙からの資産を継承しつつデジタルならではの要素も
紙のポケモンカードは60枚1組のデッキで対戦するところを「ポケポケ」では20枚として、1回の対戦が10分程度で終わるように作られている。辻川氏は「手軽に遊べるところとテンポの良さ」を重視したと振り返る。
ゲームの主役である「カード」にも、こだわりが垣間見える。齊藤氏は「実際のカードを持っているという気持ちをデバイス上で感じてもらえるか。厚みや触り心地、カードを裏返せるといったようなアナログな要素をデジタルに落とし込むところは、非常にこだわって作った」と話す。
一方で紙では不可能な、デジタルならではの表現も取り入れており、イラストに動きが感じられる「イマーシブカード」という形で表現されている。「カードの中に入る体験」を目指して作りこまれたもので、齊藤氏は「ポケモンカードらしさを大事にすることとデジタルだからできることへのチャレンジを両方入れた」と説明。苦心の末に完成したことを明かす。
「ポケポケ」では、無料で毎日2回までカードの「パック」を開封できる。開封時には、実際に紙のカードパックを開けるかのような演出が、画面を盛り上げる。パックを開封するときのサウンドは、実際に封を開ける時の音をいくつもサンプリングして出来上がった。齊藤氏によると「開封するときの気持ち良い音には非常にこだわった」と振り返る。
同じカードのパックでも、国内版とそれ以外では素材が違い、音も触り心地も違うのだという。ゲーム内でパックを開封できることを通知する音には、任天堂から発売された「ポケットモンスター 赤・緑」内のSEを用いるなど、古参ファンには嬉しい仕掛けも用意された。紙のカードではなかなか、外国語版を手にすることはできないが「ポケポケ」では「ゲットチャレンジ」というかたちで実装。サーバーのコストや維持管理コストがかさむものの、面白さ優先でこだわった部分だという。
プレイヤーとの「信頼関係」は
長く愛されるゲームになるためには、プレイヤーとの「信頼関係」を築けるかがひとつのテーマともいえる。その向き合い方について、辻川氏は「カードの価値を守り続ける」ことだと話す。
長く続くトレーディングカードゲームでは、ルール上使用が禁止されたり、調整が入ったりするカードもあるほか、性能の“インフレ”もあり得る。辻川氏は「(カードの)HPが最初は50くらいだったのに次のパックで100になると『前のカードの価値ってなんだったんだろう?』と思われる」と懸念を示す。
そこで、いろいろなポケモンへの愛着や価値を感じ続けてもらうために、過去のカードがすぐ使えなくなるというような事態は避けるようにしているという。その一方で、マンネリ化を避けるべく「遊び続けてもらうモチベーションのために新鮮な変化は作っていく」とその向き合い方を語った。
都度、新しい戦略のコンセプトを導入することなどを考えているという。一例としては、あるポケモンがいると、別のポケモンの能力が上昇するというような要素で、辻川氏は「過去の資産を大切にしつつ、新しい戦略的刺激を入れてバランスを保ち続けることが、プレイヤーへの信頼に応えることにつながるのでは」と展望を示した。
コミュニケーションを強化
「ポケポケ」は、これまでポケモンに馴染みがなかった層やゲームもあまりしないという層も取り込むことに成功したという。対戦ゲームであるがゆえに、対戦要素に目が行きがちだが、ライトユーザー層のフィードバックから辻川氏は「(カードを)集める喜びは、誰かと分かち合うともっと面白くできることがわかった」と実感を語る。
その一環として、トレード機能などで改良を加えており、辻川氏は「カードを手に入れる部分へのコミュニケーションを楽しくしていけば、対戦がなくても『ポケポケ』を楽しめるのでは。これらのアップデートはプレイヤーと作り上げた改善。より快適に楽しんでもらえるよう、開発に取り組んでいく」と話した。
さらに、今後もコミュニケーションの進化に注力していく。トレード機能なども含めて、他プレイヤーとの関わりが増えることで、ゲームが面白くなっていくという辻川氏。リアルなカードゲームでは、対戦相手を見つけるのが難しいからこその“熱”がある一方、デジタルなゲームではそこを再現できていないと分析する。
続けて「紙のカードが持つ特徴をどう『ポケポケ』に入れ込めるかをもっと考えていきたい。単なる(ゲーム)アプリに留まらず、コミュニケーションツールのような価値を高められたら」と語った。








