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グーグルのハードウェアデザイン責任者が語るAIとデザインの関係性

 グーグルのハードウェア責任者であるIvy Ross氏が日本に来日。10月18日には、アート事業を推進するへラルボニー代表の松田崇弥氏、Takram Japanのデザインエンジニアである田川欣哉氏とともに、AIとデザインについてのトークイベントに参加した。

Pixelシリーズのデザインはどうやって考える?

 最初のトークテーマである、「感情をデザインするエモーショナルデザインとは?」では、Ivy氏から「色は周波数」という印象深いコメントが聞けた。色は、音と同じように波長や周波数のようなもので、人はそれを振動で感じているという。そのため、デザインの際には、個別の色が人に何をもたらすのか、どのような色が調和していくのかを考えるとのことだ。

Google Hardware Product Group Chief Design Officer of Consumer DevicesのIvy Ross氏

 Pixelシリーズのカラーリングについては、トレンドカラーを意識しつつも、社会の方向性も確認する。発売の1、2年前には色を決めないといけないため、ワクワクする色を求めているのか、落ち着いた色彩を求めているのかを予測しながら、本体カラーを決定するようだ。また、Pixelのカラーでは、定番カラーに加え、毎年ユニークな色をラインナップすることで、ユーザーにサプライズを与えたいとも話した。

 前世代から大きくデザインを変更したGoogle Pixel 9 Pro Foldについては、ユーザーの声を聞き、より薄く、持ちやすい縦長のアスペクト比にすること、ベゼルを細くすこと、ヒンジの改良に努めたとのこと。Pixel 9シリーズの中では唯一、Pixelシリーズの特徴であるカメラバーデザインを採用しなかった点については、「搭載カメラの大型化によるスペースの問題」と回答している。

イベントが開催された銀座蔦屋書店ではPixel最新デバイスの展示も行われている

AIと人間の正しい付き合い方とは

 近年、さまざまなシーンで活用されるようになっているAI。中でもイメージしやすいのが、画像や音声を作り出す生成AIだろう。生成AIは、デザインやクリエイティブな仕事を奪っていくとも言われているが、Ivy氏は違う考えを持っていることが、「AI時代、デザインはどう変わる?」というテーマで語られた。

 Ivy氏「私はAIの台頭は恐れていません。AIはあくまで道具で、これまでにあるツールの数々と変わらないと思っています。

AIは、我々が面倒だと感じることを代わりにやってくれるもので、人間が想像力やクリエイティビティに費やす時間を与えてくれるものです。人間は、AIを活用しながら、想像力という筋肉を鍛えていかないといけません。テクノロジーの素晴らしさと、デザインの美しさの両方をリスペクトすることが大切です」

 また、今後AIと人間は、飛行機に一緒に搭乗する操縦士と副操縦士のような関係になるので、人類に与えられたギフトにもっと時間を費やせるようになるとコメントしている。

デザインとこれからの社会

 最後のトークテーマ「エモーショナルデザインとこれからの社会の可能性」では、Ivy氏のデザインに対する熱い想いが聞けた。

 「人類の歴史を見ると、99.8%は自然の中で生きてきました。テクノロジーが生活に入っていくと、より自然を求めるようになります。産業革命から、人間は合理性や効率性を追ってきましたが、人間は元々クリエイションの塊です。アーティストの脳波を調べると、リハーサルよりも本番のセッションの方が、脳が活性化するという科学的な証明もされています。

 アートというのは、子どもたちの手元に残るようにするもので、子どもたちにアートの重要性を伝えていくことが、私の一番やりたいことです。たくさんの人とビジョンを共有して、何が世界に必要とされていくことを具体化していくことが大事です。感覚的、抒情的に訴えるデザインが社会に求められており、それを、テクノロジーを通して届けていきたいです」

 最後にIvy氏は、「クリエイションを止めず、自分の感情を表現することを忘れないで」と締めた。