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「ローカル5G」普及は2025年以降か、カギは「中小企業の参入」

 5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアムは、ローカル5G関連市場の今後の見通しを示す調査レポートを公開した。概要は誰でも閲覧でき、同コンソーシアムのメンバーに全文が公開されている。

ローカル5Gとは

 ローカル5Gとは、企業や自治体などがそれぞれの敷地など特定のエリアに限って運用される5Gネットワークのこと。携帯電話各社などのインフラを利用することはなく、土地の所有者や利用者などが免許を受けて、エリアを構築する。

 工場内でのミリ波の安定した利用や高いセキュリティを実現できるといったメリットがある。ローカル5Gに対して一般的に携帯電話などで活用される5Gネットワークは「商用5G」「パブリック5G」などと呼ばれる。

5G開始も社会実装進まず

 国内では、携帯電話各社から2020年に提供が開始された5Gの商用サービス。高速・大容量・多接続といった特長があり、同時期に始まったローカル5Gでも、ビジネスに活用されることが当初より期待されてきた。

 実際に、通信各社や政府などがさまざまな分野で各種の実証実験を行ってきているものの、社会実装にいたったサービスは極めて限定的。5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム 調査WG 主査の小林康宏氏はこの状況を説明し「ローカル5G市場は黎明期を脱していない」と語る。

 その背景には「ローカル5Gでなければできないこと」が社会一般に浸透していないことやローカル5G自体の通信品質や安定性への不安があるという。こうした状況から小林氏は「ユーザーやサービス提供者、ITベンダーなどの事業者は今後何を見据えて事業をすすめればいいのか、普及が進む条件はなにかというところに関心が集中している」と状況を説明する。

中小企業の参入が普及へのカギ

 こうした現況を踏まえ、同コンソーシアムではローカル5G市場の立ち上がり時期から今後の見通しを把握するとして、2030年までのロードマップを作成した。小林氏はこれにより、各事業者のローカル5G利活用への機運を醸成し、今後のビジネス展開の加速を促すと意義を語る。

 同レポートによると、ローカル5Gの本格的な普及期は2025年以降の到来となる見込み。5Gが本格スタートした2020年~2022年までを黎明期と位置づけ、業界特化ソリューションの横展開体制などが進むとみられる2023年~2024年を導入期と位置づける。

 その後、2025年には市場の醸成が進み、本格的な普及期が訪れるとみられるが、小林氏によれば普及に向けた重要な要素(上画像中オレンジの囲いで表記)を早期にクリアできれば、普及期の到来も前倒しになり、遅れれば結果として普及も後ろ倒しになると予測する。

 当初は大企業による実証実験を主体として、商用導入が進むが、普及期においては中小企業の参入が必要不可欠。そのためには初期設定などが不要となる「ゼロタッチインストール」の実装に加えて、端末価格の低廉化、「All-in-One」仕様の小型基地局の普及などコスト削減もあわせて重要性を増してくる。レポートでは、普及期における導入や補修にかかる費用を、実証実験などの結果から1500~2000万円としている。

 小林氏は、普及に向けての課題解決にあたっては、事業者間のコミュニケーションがカギになると説明。コンソーシアムとしてさまざまな事業者と連携し、普及期を目指して一緒に活動していきたいと語った。今回のレポートの全文はコンソーシアムメンバーの企業に公開されている。