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Google、「Chromeアイコンリニューアル」の背景を解説――さまざまな条件で最適なデザインを追求

 グーグル(Google)のWebブラウザ「Chrome」では、今年初めのアップデートで新しいChromeアイコンを導入した。新しいアイコン制作の舞台裏を、ユーザー・エクスペリエンス・インタラクション・デザイナーのエルビン フー(Elvin Hu)氏とビジュアル・デザイナーのトーマス メッセンジャー(Thomas Messenger)氏が説明した。

Chromeアイコン、初期デザインはロケットだった

 Chromeアイコンについて、トーマス氏は「2008年にChromeを発表したとき、私たちが目指したのは『速くて使いやすいブラウザ』を作ることでした。そして、速さを表すものとして、『ロケット』に勝るものはありません」とし、当初のアイコン案にロケットをイメージしたものが含まれていたことを明らかにした。

初期のChromeアイコン案

 しかし、最終的には「Googleのスピリットを受け継ぎつつ、親しみやすく、クリックしやすいデザイン」として、Chrome最初のアイコンが披露されたという。

アイコンを変更する理由

 アイコンを変更する理由について、エルビン氏は「Chromeのプロダクトとしての進化を反映させ、リフレッシュしたモダンなデザインにしたい」考えがあったと説明。

 また、近年のOSのビジュアルデザインは、スタイルが多様になっていることを踏まえ、「どのデバイスでも適応性が高く、新鮮に感じられる」アイコンにすることが重要だったとしている。

 OSによって、どのようにアイコンの見え方が変わるのか? エルビン氏はアイコンのリニューアルについて、「Googleの現在のブランドデザインに合わせて、影を消し、プロポーションを整え、色を明るくすることでシンプルにしました。また、特定の色調の緑と赤を隣り合わせに配置すると、2色の間に不快な「光り」が生じることがわかりましたので、メインアイコンに非常に微妙なグラデーションを導入し、目に優しいアイコンを目指しました」と説明。OSにあわせてアイコンのカスタマイズも行っている。

 たとえば、Windowsではグラデーションが採用されたアイコンを利用しているが、Chrome OSではシステムアイコンにあわせてグラデーションを使わない明るい色のものを使っている。

 また、macOSではより立体感のあるアイコンを採用しているほか、アプリのベータ版を示すリボンを付加している。大きなアイコンでは、細部まで表現し小さなアイコンでは、シンプルなバッジとしての視認性を確保している。

 iOSでは、ベータ版アプリのアイコンを、Appleの開発者向けアプリを意識したブループリントのようなデザインを採用している。

Windowsのアイコン
macOSのアイコン
iOSのアイコン

 一方で、これまでのデザインよりも大きく変更する案もあったという。トーマス氏は「コーナーをソフトにしたりジオメトリーを変えたりさまざまなアイデアを試しました。また、これまでのフォルムから逸脱したものも検討しましたが、Googleの4色と円形の構成が、どれだけ認知されているかわからなかったので、大きく変更しない判断をしました」と説明している。

アイコンデザインの過程

 アイコンデザインの過程について、エルビン氏は「関係者全員にとって楽しく、協力的なチャレンジ」だったと振り返り、さまざまなコンセプトが生まれた場所だったと分析している。

 全体の方向性が決まると、色やグラデーション、プロポーションなどさまざまなバリエーションでストレステストを実施するという。微妙な色の変化でも、アイコンが置かれた場所によっては、見つけづらくなるようで、たとえばアイコンに「微妙に異なる緑色のグラデーション」同士を、Windows 11に搭載されている壁紙の1つでテストすると、なじみに違いが生まれるという。

明るい緑(上)と深い緑(下)を採用したアイコン

 より多くのユーザーが利用しやすいように改善したことについて、トーマス氏は「弱視のユーザーでも認識しやすいよう、中央の青いボールの比率を見直した」旨を説明。また、アイコンの大きさによって、視認性を高めるため異なるバージョンのものを使っているという。

アイコンの大きさによっても、微妙にデザインが工夫されている

 最後に、「今後オリジナルのアイコンを復活させることはあるか?」という問いかけに対し、エルビン氏は「絶対にないとは言い切れない。アイコンがカスタムできるプラットフォームでは、オプションとして復活させるかもしれません」とした。