ニュース
配信スタジオを無償で貸し出す「THECOO」の取り組みを代表の平良氏に聞いた
2022年4月18日 00:00
新型コロナウイルス感染症により、人々の生活は大きく変わり、特に日本ではリモートワークが急速に普及。ちょうどそのタイミングで携帯各社では5G通信サービスがスタートし、エリアは限られているが超高速大容量通信を利用できるようになった。
一方、その「超高速大容量」通信を生かす場面はまだまだ限られているのが現状だ。そこで、携帯各社ではVRやARなど最新技術を使ったコンテンツの充実に力を入れている。
その一つであるドコモは、既存の自社コンテンツを拡充する一方、クリエイターやミュージシャンなどとファンとの交流に強みを持つTHECOOと連携し、コンテンツを拡充する方向を示した。
そのTHECOOとは一体どのような企業なのか。今回は、THECOO代表取締役CEOの平良 真人氏にTHECOOの事業内容や今後の目指す姿をはじめ、同社保有スタジオ「BLACK BOX(ブラックボックス)」について話を聞いた。
THECOOとは
THECOOは2014年1月に設立された企業で、平良氏が以前勤めていたグーグル(Google)時代に縁のあった経営陣で創業したという。平良氏の当時のチームでは、グーグルの企業向け広告サービス「Google AdWords」事業も立ち上げから展開したと話す。
平良氏は「個々の能力を最大限生かせるような会社作り」を目指したとし「できっこない」に挑み続けるビジョンを掲げた会社と話す。
主な事業は、インフルエンサーや俳優、スポーツ選手などのファンコミュニティサービス「Fanicon」と、法人広告事業の2つ。このうち、コンシューマーに近いサービスとして「Fanicon」が挙げられる。
「Fanicon」クローズコミュニティに近いサービス
「Fanicon」のサービスについて平良氏は「ファン同士がつながるファンコミュニティを大事にしたサービス」と説明。具体的には、インフルエンサーや俳優など(Faniconでは「アイコン」とよぶ)のファン同士がつながれるよう、「ファン同士のグループチャット」や「限定投稿」、「ライブ配信」機能など、さまざまな機能を備えている。もちろん、従来型のファンクラブにもある「グッズ販売」や「チケット販売」なども提供している。
「Fanicon」は無料でも開設できる。開設する際は、アイコンにとって必要な機能やその使い方などしっかりとヒアリングし、アイコン任せにしないコンテンツを制作していくという。
また、無料で開設できるため、これまでファンクラブを利益的に持てなかったアイコンでも、ファンクラブを持てるようになったと平良氏は話す。従来型のファンクラブではアプローチできなかった成長途中のアイコンでもマネタイズできるサービスだとしている。
「Fanicon」のビジネスモデルについて、「従来型のファンクラブがキャッチしていたトップアイコン(ヘッド)から、活動期間が短い成長期のグロースアイコン(ロングテール)まで、大小関係なくコンテンツを提供できる」という。
これは、平良氏がグーグル時代に関わっていた「Google Adwords」においても、大企業(ヘッド)から中小企業(ロングテール)までをターゲットにしてきたものと共通しており、グーグル時代の経験がヒントになったとしている。
ブラックボックスもアイコンの声を反映した箱
「Fanicon」のサービスのなか、新型コロナウイルス感染症の拡大により、アイコンの活動が大幅に制限された。特にリアルイベントでは、人数制限や外出控えの影響で、チケット枚数が売れなくなってしまうケースが多くなった。
インターネットを利用した活動として「オンラインイベント」を実施するケースが増えてきた一方、オンラインライブでは「チケット価格が低下する」こともあり、チケット枚数をこれまでよりも多くしないと、ビジネスとして成り立たないという側面もある。
そこで、オンラインライブなどさまざまな用途で利用できる場所として「ブラックボックス」を開設し、アイコンに機材や場所代を無償で提供する取り組みを進めている。
「BOXスタジオ」では、高さ6mと幅9mの空間に「背面」「右側面」「左側面」「床」の4面にLEDディスプレイを設け、さまざまな空間を演出する。
アーティストだけでなく、モデルや俳優、インフルエンサーといったアイコンが、トーク配信することもできる。
ドコモとの取り組みと今後に向けて
オンライン配信を活性化させるという共通の目標があったというTHECOOとドコモ。2021年春に両者はライブビジネスに関する業務提携を締結した。
ドコモとTHECOOがもつプラットフォームでさまざまな方面からアプローチに加え、ドコモのプラットフォームを活用した共同配信事業や5G通信を使ったコンテンツの作成などを今後実施していく。
世間では、NFTの活用などが叫ばれているが、今回の取り組みで平良氏は「あくまでファンのコミュニティ目線」で展開していきたいと話す。
その「Fanicon」事業だが、売上高は順調に推移しているという。2018年から前四半期を上回る売上成長を実現しており、2018年12月期から2020年12月期にかけての年平均成長率は+165%となっている。
営業利益率も年々改善を見せている。また、アイコンの領域も現在のアイドルや俳優女優といった枠組みから、文化芸能、スポーツと言った分野に裾野を広げるほか、海外展開をはかり、プラットフォームとしての可能性を追求していくとしている。