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楽天の保険事業に対する取組み、その事業拡大のポイントとは

 楽天は、同社の保険事業についての現状や今後の取組みなどについてメディア向けに説明会を開催した。

伸びる楽天エコシステム

 楽天カード 経営企画部長の久保達哉氏によると、楽天ポイントの総発行額は2兆ポイントにもなっており、総合満足度は1位という。「楽天エコシステムへのロイヤルティを高めることに寄与している」と語る。

 楽天スーパーポイントプログラムなどの影響もあり2つ以上の楽天サービスを利用するユーザーも多い。「ユーザー数を増やしクロスユースを促進。ライフタイムバリューを高めてメンバーシップ価値を高めることが経営目標」と語る。

 同社では、さまざまなフィンテックサービスを展開。複数のフィンテックサービスを利用するユーザーも増えており、カード、銀行、証券の3つを利用するユーザーは、前年同期比で95.9%超と大幅な伸びを見せた。

保険事業にも注力

 ネット通販や最近ではモバイルに力をいれる楽天だが、保険事業は同社が注力するビジネスのひとつ。

 楽天の保険は、楽天インシュアランスホールディングス傘下に楽天生命保険、楽天損害保険、楽天少額短期保険、楽天インシュアランスプランニングの各社を従えている形となっており、生命保険、損害保険、少額短期保険、保険代理店を自社で保持している。

 楽天グループにおいて、保険事業にかかわる従業員は、全体のおよそ5%。売上としてはおよそ250億円と銀行とほぼ同レベル。「利益としてはまだ小さいが、シナジーを含んでビジネスを拡大していきたい」と今後の方向性を語る。

成長の2つのターニングポイント

 保険事業の営業利益は、おおむね20億円程度の利益を出していたところ、2018年には大規模な最大が相次いだことにより、多額の保険金支払が発生。これによりマイナス成長となったものの、大規模な最大に対応する再保険の拡充や保険引き受けの厳格化などの手段を講じてプラス成長に押し戻した。

 楽天インシュアランスホールディングス 代表取締役社長の橋谷有造氏は、同社の成長のポイントのひとつを「楽天保険の総合窓口」の開設と説明する。

 生命保険や損害保険など、個別の会社が扱っているものはこれまで、他社と同じようにそれぞれの会社の窓口を通じて問い合わせる形をとっていたが、楽天では保険取り扱い3社共通の窓口を開設。

 これにより、楽天生命と楽天損保に加入するユーザーは、住所変更などの手続きで各社に連絡をとる必要がなく、利便性向上につなっているとしている。橋谷氏によれば、同窓口の開設後には新規契約や複数保険の加入者も向上したという。

 橋谷氏は、同時に楽天ポイントへの対応も成長へのきっかけのひとつという。同社の保険は2019年12月から保険料支払いでポイントがつけられるようになった。

 楽天の保険への加入検討のきっかけとしてもっとも多く挙げられたのが「楽天会員」だからというもの。次点では「楽天ポイントが貯まるから」という理由が挙げられている。楽天ポイント導入後は、インターネットにおける売り上げが前年同期比で、生命保険が25.9%、損害保険が93.6%向上したという。(21年第1四半期)

 橋谷氏によれば、楽天損保のゴルフ保険と自転車保険では、保険料を楽天ポイントで支払える。どちらの商品も3割強のユーザーが実際にポイントで支払っているとしている。

オフラインでも総合窓口提供

 インターネット上の施策のみではなく、リアル世界でもさまざまな取組みを展開している。

 楽天生命の代理店においても、損害保険とペット保険を扱うことで、ひとつの代理店ですべての保険サービスをワンストップで提供する。

日本郵政と提携協議開始

 楽天損保では日本初の試みとして、国土交通省のハザードマップに基づいて水害のリスクに応じた保険料を導入した。

 通常、建物がどこにあるかに関わらず全国一律となるが、所在地の水害リスクに応じて料率を算定。河川から離れた建物では保険料が割安に、逆に河川から近い低地などは高くなる。

 同社では、今後もさまざまな楽天エコシステムのサービスとのシナジーでサービスの拡大を図るとともに、日本郵政グループとの保険分野での提携協議を開始した。両社グループの連携で保険事業を発展させていくとした。