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ソフトバンクG孫氏、国内最高益更新も「株式公開のラッシュを創りだす」
2021年5月13日 06:00
ソフトバンクグループは12日、2020年度の業績を発表した。4.9兆円という純利益は国内企業として史上最高額の更新となるが、孫正義代表取締役社長は「投資家は一時益と見るかもしれない。しかし個人的にも反省点はある」として、AIを活かしテクノロジーへの投資を進め、継続して新興企業の株式公開で利益を生み出せるようにすると意気込みを示した。
またプレゼンテーションの後半は、孫氏が注目する投資先の新興企業が連続して紹介された。
「史上最大の黒字と言っても」
プレゼンテーション冒頭、孫氏は、ソフトバンクを創業したという福岡県福岡市の雑餉隈駅(ざっしょのくま えき、西鉄天神大牟田線)周辺という、40年前の写真を示す。
創業当初から、豆腐を数えるように業績もいっちょう、にちょうと数えていた――自身が幾度となく触れてきたエピソードをあらためて紹介した孫氏。
同氏は、2020年度の業績を踏まえ「やっと売上も利益も、一兆二兆(一丁二丁)と数えられるレベルになった。しかし1年前は赤字だった。この程度で驚かないほうがいい。40年のソフトバンクの歴史を1枚の写真で表わせ、と言われたらこれ。絶頂に達することもあれば落ち込むこともあった」と振り返り、さらに反省点もあった、と戒めるように語る。
孫氏
「史上最大の黒字と言っても、投資家の評価は諸手を挙げて褒め称えるものではない。今回の業績には、スプリントの一時益、世界的な株高、クーパンなどの大型新規上場があった。(投資家は)たまたまが重なって膨れ上がったという見方だろう。
私にとっても反省点はあった。WeWorkなどの投資の失敗があった。それ以上に反省しているのは素晴らしい会社に対する投資の見逃し。そういう打席がいくつもあった。いろんな意味で仕組みがまだまだ欠如していた。
ソフトバンクグループは、4年ほど前から事実上の投資会社に軸足を移した。事業会社は(子会社の)ソフトバンクで宮内(謙氏)に任せ、今年から宮川(潤一氏)に任せた。
いろんな会社を持っているが、これからは継続的に利益を出せるよう、投資会社といっても博打のような相場の上げ下げで一喜一憂するのではなく、新しいビジネスモデル、新しい技術をAIで再定義するような会社に投資し、相乗効果含めて応援していく。株式公開のラッシュをグループで創っていく」
そして同氏は、ソフトバンクグループの投資先の時価総額や、同社の株価などの状況を説明。投資先のうち、注目株となる企業群の紹介に移った。
gopuff
「わかりやすく言えばオンラインコンビニ」と孫氏が呼ぶサービスが「gopuff」だ。月額5.95ドルという海外のサービスで、月額会員であれば送料無料で利用できる。
スマホアプリで欲しい商品を選ぶと、購入から平均23分で配達してくれる。現在は全米に430カ所に拠点を設け、650の都市で展開。最近は欧州でも展開している。
商品数を絞り、人気ブランドだけを扱う。AIで在庫の適正化、配送ルートの効率化などを進めている。
better
米国では生涯のうち10回ほど家の売買をするのでは、と語る孫氏。その不動産売買の手間暇を、購入するユーザーとローンを貸し出す金融機関にとって軽減するサービスが「better(ベター)」だ。
孫氏は、審査や登録などの手続きをワンストップ、オンラインで進められるサービスと説明。ユーザーと資金を貸し出す金融機関をマッチングするとのことで、金融機関にとっては、審査などの手間が省かれ、クレジットスコアや住宅価値をマッチングするところへすぐ貸し出せる。
融資までの手続き、時間を減らし、その結果、ローン貸出額が1年で5倍に増えた。betterはあくまで金融機関に、住宅を買う人をマッチングするだけで、その手数料を得るかたちだが、その手数料収入も10倍に成長した。
JELLYSMACK
「21世紀型のクリエイター集団をマネージするのがJELLYSMACK」
孫氏がこう表現した「JELLYSMACK(ジェリースマック)」は200人ほどの動画クリエイターを抱え、その創作物の編集や、クリエイターのさらなる発展をAIを駆使してサポートする。
たとえばYouTubeで100万人フォローされているクリエイターでもが10分の動画を制作した場合、JELLYSMACKのサービスを通じて、サムネイルや字幕などを最適化して動画を短縮し、短尺動画に適したサービスへ投稿しやすくする。JELLYSMACKが動画編集にかかるコストをサポートすることで、人気クリエイターが複数の動画プラットフォームへ展開しやすくする。
米国のYouTuberであるBrad Mondoの場合、1年でFacebookでのフォロワーが4倍、Snapchatで10倍に増えた。YouTubeだけの収入から横展開とフォロワー獲得で一気に収入を伸ばした。
trax
画像認識に代表されるAIの能力を、ビジネスモデルとして、棚卸しに特化させたサービスが「trax(トラックス)」だ。小売店でいかに自社商品を置く場所を確保するか、という取り組みに役立つとのことで、商品棚を撮影し、売れ行きが伸びる場所、価格、POPの飾りなどを提案する。
たとえばスマホで商品棚を撮影し、traxへアップロードするとアドバイスがもらえる。競合製品にどれくらい並び、売れているか分析してくれる。これで品切れの時間が減少し、棚の確認時間も減り、営業スタッフが担当できる店舗数も向上する。コカ・コーラやネスレ、ハイネケンなど、米国の人気ブランド企業が導入しており、孫氏は「traxがルート営業を変える」とその進化感をアピールする。