ニュース

台風15号・19号の経験を活かし――ドコモが総合防災訓練を実施

 NTTドコモは19日、千葉県我孫子市において「NTTドコモグループ 総合防災訓練」を実施した。この訓練はドコモが毎年行っているもので、多くの招待客や関係者らが見守る中、ヘリコプターからの物資輸送や、災害時のドコモショップでの対応の様子などが公開された。

首都直下型地震を想定

 訓練の冒頭では、NTTドコモ 取締役 常務執行役員の田村穂積氏が開会宣言を行った。またNTTドコモ ネットワーク本部 サービス運営部 災害対策室 室長の瀧本恭祥氏が登壇し、訓練の内容を説明した。

田村穂積氏

 訓練の内容は主に、基地局の応急復旧と被災者生活の復旧支援に分けられた。

瀧本恭祥氏

 NTTドコモ ネットワーク本部 サービス運営部 災害対策室 室長の瀧本恭祥氏によると、今回の訓練内容は甚大な被害をもたらした台風15号と19号を踏まえて、基地局の応急復旧と被災者の支援にスポットを当てたものとなったという。

ヘリやドローン、船舶の運用も

 震度7クラスの首都直下型地震が発生し、大きさの異なる2つの基地局が同時に使えなくなったことを想定。最初に、停止した基地局の状況をドローンで確認し、陸路からの到達が可能かを空撮によって確認した。

 ドローンからの映像により、当該の基地局に陸路で到達することが困難であることが確認されると、応急処置として「船上基地局」を設置した。船上基地局は、船の上で手作業で展開される簡易的な基地局。主にドコモと連携している船会社の船で被災地近くに停泊している船に設置される。

海底ケーブル敷設船「おりおん」に見立てた訓練設備

 こうした応急措置が行われる一方で、停止した基地局の復旧に向けて、ヘリコプター空輸により物資が輸送される。陸路ではたどり着けない場合は、連携する航空会社の航空機による支援が行われる。2018年の北海道胆振東部地震の際は、充電器や衛星電話の輸送で活躍した。使用される機体は、民間機のほかにも防衛省と災害時相互協力協定を結んでいるため、自衛隊機の使用もあり得る。

 そのころ、地上では移動基地局車と可搬型基地局の展開が進められていた。また、毎年行われているドコモの防災訓練だが、今年は佐川急便が初参加した。物資の輸送をパートナー企業へ委託することで、ドコモの人的リソースを設備復旧へ最大限割り当てるためだという。

 このほか、電源車への給油も行われた。ドコモでは平時から燃料を備蓄し有事に備えており、自治体のハザードマップに基づいた安全な場所に給油基地を設置しているという。

被災者支援の充実

 今回の訓練のもうひとつのパートである、被災者支援には今回で3回目の参加となる日本郵便が登場。車両型郵便局が披露された。一般的なトラックをベースにした車体で、格納式の階段を備える。階段を上がった車内を見ると左手にはゆうちょ銀行のATMが、右手には受付カウンターが備えられている。車内には住宅用エアコンも取り付けられていた。

 また、避難所での無料充電サービスや衛星電話の貸し出しも紹介。充電サービスはドコモ以外の携帯電話でも利用可能だ。このほか、室内の電波状況を改善する「ドコモレピータ」や災害用SSID「00000JAPAN」に対応するdocomo Wi-Fiも設置される。

今後もさらなる災害対策を

 閉会の挨拶には、NTTドコモ サービス運営部長の根本浩二氏が登壇。激甚化・広域化する災害について、「関係機関との訓練が効果を最大化できる、被災者に寄り添った対応(の訓練が)できる唯一の方法だ」とした。さらに「これからも安心安全を守り、『途絶えないあんしん』をすべての人にという使命を果たすべく全力で取り組んでいきたい」と語った。

根本浩二氏

 瀧本氏は、2019年の災害対応について、2018年に起きた北海道胆振東部地震や7月豪雨などを踏まえて、「かなりの対応をしてきたつもり」だとした。令和元年台風10号については「想定し得ない長期的停電が発生し、多くの基地局がダウンした。(基地局の)24時間化などは行っていたが、それでもカバーしきれなかった部分はある。その一方で(被害には)迅速な対応はできたと思う」と評価。

 台風15号においては、数週間クラスの停電が発生したため、全国から電源車を集めるなどの対策は行っていたものの、やはりまかないきれない部分があった。それを踏まえた上で、瀧本氏は「今後、ドコモショップへバッテリーの配備や重要基地局のバッテリーの24時間化を2019年度末に終えたい」とした。加えて、さらなる停電対策の充実として、バッテリーを設置しづらいビル局への対応や給油オペレーションなどさまざまな角度で検討していく必要があるとした。

 ドコモは、2年で200億円を災害対策に投じている。今後、さらなる災害対策も検討している。