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アドビからスマホ向け「Photoshop Camera」、AIでリアルタイム処理――Adobe Max発表会レポート

 アドビ(Adobe)は、11月4日から米ロサンゼルスで、クリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」を開催。初日の基調講演において、スマートフォン向けカメラアプリ「Adobe Photoshop Camera」を発表した。

「Photoshop Camera」はアドビのAIプラットフォームである「Adobe Sensei」の技術を採用。アプリでの撮影時、同社の画像編集ソフト「Photoshop」レベルの加工をリアルタイムで処理してくれるというものだ。

 Adobe Senseiはいま、何を撮影しているのか、人物や風景、自撮り、料理などを瞬時に認識し、そのシーンにあった画像処理を自動的に行ってくれる。

 たとえば、人が被写体であれば、人の形に綺麗に切り抜いた状態で画像処理を行ってくれる。ちなみにオリジナルの写真も保存される。

 さまざまな画像処理のエフェクトを「レンズ」と呼ぶのだが、アドビでは著名なアーティストやインフルエンサーが作ったレンズをダウンロードして追加できるようにする。また、レンズは、画像編集ソフト「Photoshop」で、ユーザーが自分で作成することも可能だ

後発のアドビ、アドバンテージは「Adobe Sensei」

 スマートフォン向けの画像加工アプリはすでに多種多様なものが市場に溢れている。また、撮影時、リアルタイムに加工ができるスマートフォンもさまざまなメーカーから発売されている。

 スマートフォン向けの撮影時の画像加工アプリでいえば、Adobeは後発という存在になる。しかし、アドビが強みとしているのが、画像処理に強いAdobe SenseiというAIだ。

スコット・プレヴォー氏

 Adobe SenseiおよびSearchのエンジニアリング担当バイスプレジデントのスコット・プレヴォー氏は「我々はユーザーが処理した画像の結果だけでなく、その過程でどんな作業をしたかというデータを持っている。これがAdobe Senseiの他社にはない強みといえる」と語る。

 ちなみに AIが画像処理をするということで、プライバシーに対する懸念が出てくるが、「デバイス側で何が写っているかを判断し、処理をする。SNSにアップする際もプライバシーには配慮している」(CTOおよびEVP、クラウド担当のアベイ・パラスニス氏)という。

アベイ・パラスニス氏

 Photoshop Cameraは2020年初頭にリリースの予定だが、プレビュー版の体験申込がphotoshopcamera.comにて始まっている。

iPad向けのPhotoshop正式版が登場、次はIllusrator

 アドビでは1年前に本イベントで発表をしたiPad向け「Photoshop」を今回、正式にリリース。単体プランは月額1080円(税込)、すでに月額制のPhotoshopプランに加入済みのユーザーはすぐに利用可能だ。

 また今年の基調講演では、iPad向けに「Illustrator(イラストレーター)」アプリも開発していると表明した。

 アドビがiPad向けのillustratorアプリで苦労しているのが操作性だ。従来のパソコン向けソフトは「ユーザーがキーボードを駆使し、まるでピアノを演奏するかのようにショートカットを使いこなしていく。iPadではキーボードを使っていない人も多い。マウスではなく、タッチ操作とペン入力だけで使えるようにしなくてはならない。Apple Pencilを使って、楽しんで作業ができるような操作性を追求している」(デジタルメディアデザイン、シニアディレクターのエリック・スノーデン氏)という。

エリック・スノーデン氏

 ちなみに、iPad向けPhotoshopでは、画面上に白い丸が表示され、そこを長押しなどをするとショートカットのメニューに行けるようになっている。左手でタッチショートカットを操作しつつ、右手に「Apple Pencil」を持って作業するというイメージだ。

 スノーデン氏は「iPad向けのPhotoshopもIllustratorも、最終的なゴールはプロ向けのツールとしてパソコン用ソフトと同等の機能を盛り込むことだ。しかし、まだどちらのアプリもスタート段階であり、これから進化していく。iPadということで新しいユーザーを取り込む一方で、プロにも納得できるクオリティにしていきたい」と語る。

 アドビとしてはモバイル製品向けを強化することで、ユーザー層の拡大を狙っているようだ。