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引っ張るだけで持ちやすくなるし、カードも入れられるし、コマにもできるスマホグリップ「POPSCOKETS」

 うっかりスマートフォンを手から滑り落としそうになった、あるいはもうすでに何度も落として画面がバッキバキ……という方はきっとめずらしくないと思う。かくいう筆者も何度かスマートフォンを手から滑らせており、アスファルトの上を滑り抜けていって、駐車していたバスのタイヤに激突。一瞬のうちにボロボロになったことがある。

 発売開始から6年、全世界で1億4000万個を売り上げた米国発の「POPSOCKETS(ポップソケッツ)」が、スマートフォンを落下から救うアイテムの新たなスタンダードになるかもしれない。

POPSOCKETSとは?

 「POPSOCKETS」はアメリカ発のスマホアクセサリー。スマートフォンの背面に装着して持ちづらいスマホの“持ち手”にするものだ。目的としてはスマホリングと似ているが、ユニークなのはその構造で、スマートフォンを手にして「POPSOCKETS」の本体を引っ張ることで、指を引っ掛けられる形状に変化する。もちろん使わないときは折りたたんでコンパクトに収納できる。文字通り「POPして使うソケット」というわけだ。

写真は「WALLET」シリーズ

 本体のデザインが豊富なのも特徴のひとつで、バスケットボールをかたどったものもあれば、動物の顔や植物を描いたものもあり、もちろんシンプルな無地デザインのものもあり自分の好みで選べる。なお、「POPSOCKETS」の公式サイトから「CUSTOMIZE」の項目へ移動すると、画像を選んでオリジナルの「POPSOCKETS」をデザインできる。

オリジナルの「POPSOCKETS」を作れる。公式サイトからアクセス可能

 米国でのラインアップの中には、ラメを樹脂で固めたものや、エナメルを使用し、太陽系を模したちょっと豪華な仕様になっているものもある。また、高級な眼鏡に使われるべっ甲を使ったものや、ハンマーで打ち付けたデザインを施したもの、本物の花を押し花のようにデザインしたものなどがある。

米国でのラインアップ。これらは順次日本市場にも投入される
ラメやエナメルを使用しており高級感が高い
押し花のようなデザイン。CEOのデイビッド氏(後述)いわく「花は痛がらないよ」

 そのほか、本体が回転する「Backspin(バックスピン)」、手鏡にできる「POPMIRROR」などさまざまな種類がある。

「Backspin」シリーズ。手持ち無沙汰なときに回すと楽しい
スマホがコマになる。友達と一緒に対戦できるもしれない
開いて手鏡にできるモデル。無地や幾何学模様などデザインも豊富
等倍鏡が1枚と2倍の鏡が1枚。電車内での化粧直しなどにおすすめ

 また、スマートフォンを固定するアクセサリーもラインアップされている。3M社製の両面テープで洗面所やキッチンの壁などに貼り付けられるものがある。たとえば手を洗うときや、スマートフォンでレシピを表示しながら料理をするときなどにとても便利だ。このほか、カーエアコンのルーバーに取り付けるものもあり、一般的なデザインのルーバーであれば固定できる。カーナビとしてスマートフォンを使用したり、カーステレオに接続した際の楽曲コントロールが容易になる。

左と中央が壁などに貼り付けるモデル。右はカーマウント用モデル
カーマウント用のアクセサリー。差し込むように装着する
エアコンルーバーに取り付ければ固定完了。

 現状ではiPhoneのみの対応とはなるが、「POPSOCKETS」のベース部分を上下に移動でき、縦置きスタンドとして使える「SLIDE」もある。Facetimeの撮影時などに有用だ。

本体の中心にマウントされている「SLIDE」
手で簡単にずらせるため、このようにスタンドにできる
OtterBox製の「POPSOCKETS」対応ケース。こちらは東急ハンズで手に入るそう
「POPSOCKETS」をキーホルダーにできる。幼稚園の通園バッグやランドセルに良いかもしれない
クレジットカードやICカードのケース付きも。財布を持たずともスマホ1つで外出できる

 これらの製品は今秋から順次、日本市場にも導入される予定としている。

誕生のきっかけは創業者のちょっとした不満からだった

 冒頭でお伝えしたとおり、「POPSOCKETS」は世界中で人気を博している。「スマホリングがあるのに」と思う方があるかもしれないが、POPSOCKETSの創設者デイビット・バーネット氏によると、スマホリングも「POPSOCKETS」もデビューした年代的にはほぼ同じ、2010年~2011年頃だという。韓国で開発され、香港などを通してアジアでの広がりを見せたスマホリングに対して、アメリカ生まれの「POPSOCKETS」はアメリカ・ヨーロッパを中心に人気を博している。

POPSOCKETS CEOのデイビッド・バーネット氏

 そんな「POPSOCKETS」だが、開発のきっかけは、デイビッド氏のとある経験から始まったという。当時、大学で哲学の教員をしていたデイビット氏は、iPhoneに接続していたイヤホンのコードが邪魔なことに少し不満を抱いていた。

 そこである日、イヤホンのコード邪魔問題を解決しようと、街にある生地屋に出かけた。生地屋で洋服用のボタンを購入したデイビッド氏。これをiPhoneの背面にくっつけて、イヤホンのコードを巻き付けてみたところとても具合が良かった。

筆者も多少笑ってしまった。ごめんなさい

 しかしながら、周囲からは予想外の反応があった。iPhoneの背面に洋服用のボタンをくっつけた姿は傍目にはおもしろく写ったようで、デイビッド氏はとても笑われたという。その時、デイビッド氏はこれをもう少しちゃんとしたグリップを作ろうと考えることにした。

苦闘の中で直面した事実とは

 開発には少なくない困難が伴ったとデイビッド氏。「POPSOCKETS」独特のアコーディオン機構は、開発段階では縮んだまま元に戻らなかったり、勝手に跳ね上がってきてしまったりしていたこともあった。いくつもの構造についての計算式を検討し、素材も変えてプロトタイプを制作し、1年が経過した頃に、ある事実が発覚した。

 設計の担当者が指示した通りの素材を使っていなかった。その後、その人物とはもう少し正直に仕事をしようと話し合ったデイビッド氏と担当者は再び仕事へ向き合ったという。ちなみにデイビッド氏は「奴はもうこの世にはいない」と発言したが冗談である。

氏いわく担当者とは「今でも友人」とのこと

 しかし、問題はこればかりではなく「POPSOCKETS」の製造方法に用いている「インジェクションモールド」という熱して液体化したプラスチックを金型に加圧注入し、固形化させて成形する方法を取ると、すべてのプロトタイプの金型を作っていては、膨大な予算がかかるため、すべてのプロトタイプを実際に試せなかったことが大きかったという。

 2年の月日と600個以上の試作品をつくり、ようやく「POPSOCKETS」は完成した。苦心の末にようやくたどり着いたゴールを見たときの心境をデイビッド氏は「安心した。当初は上手く畳めなかったり、勝手に跳ね上がったり、ポップさせたときの音も完成品ほど良くはなかった。それがこうして納得のいく形になって揃ったときには嬉しかった」と振り返る。

夢のような成功

 一般に販売を始めて1年ほど経過した頃に、もしかしたら「POPSOCKETS」は成功するかもしれないと考え、職を辞した。さらなる成功を収めてチャリティなどに寄付できたら、と思い始めたという。

 加えて、当時教員として倫理を教えていた頃に、学生たちと世の中で大きなインパクトのある結果を残すには、学校を辞めてお金を稼ぎチャリティに寄付をすることが一番だという話し合いをしたことも大きかった。

「Backspin」を装着しiPhoneを大回転させるデイビッド氏。実に満足そうだ。「『Backspin』を回すのはリラックスできる」と氏は語る

 ここまでの成功を収めることができたのは、本当に運が良かったというデイビッド氏。今の気持ちについて「まるで現実ではないみたいだ。世界中でこの製品を作るために働いてくれている人たちやパートナーがいて、使ってくださる人達がいると思うととても現実にいるとは思えないシュールな気分だ」と語った。

デイビッド氏が思うPOPSOCKETSの魅力

 少なくとも日本においては、スマホリングという先駆者がありながらも、徐々にその知名度を伸ばしている「POPSOCKETS」。デイビッド氏はその魅力のうちのひとつに楽しさがあるという。

 触っていて心地よい、いじっていて楽しいという要素は、鉄製の冷たいスマホリングにはない。二次的にデザインなどのファッション性も相まって「POPSOCKETS」とスマホリングが併売されている地域でも、「POPSOCKETS」のほうが売れゆきがいいのはそうしたことも要因のひとつだろうという。

企業の販促ノベルティとしても。打ち合わせに行って貰えるとちょっとうれしい

 多くの国で購買層は10代~30代の若い女性が占めている。しかし実際には高齢で体が不自由な人や、オリンピックのスキーチームがリフトからスマートフォンで風景を撮影するときに、ホールド感のよさから「POPSOCKETS」を使用しているといい、実際には男女含めて幅広い層に指示されている。

写真をお願いしたところ、カッコよく決めてくれたデイビッド氏。写真はジャンプ→反時計回りに1回転→着地した瞬間。激しい動きをしても「POPSOCKETS」があれば大丈夫
デイビッド氏から「写真は2万ドルだよ」と言われた気がするが、そういえば払っていない

 デイビッド氏は、最後に「とにかく一度試してみてほしい。とても幸せな気分になれると思う。アメリカでは、こういったものを最初は欲しいと思わなかったけれど、一度使ってみたら手放せなくなったという人がたくさんいるからね」と日本のユーザーに対してのメッセージを語った。