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5Gを活用した8K映像の伝送実験に成功、ソフトバンクとシャープ
2019年8月26日 14:44
ソフトバンクとシャープは23日、東京都内において、5Gなどを活用した8K映像の伝送実験を行い、メディア向けに公開した。
ソフトバンク 先端技術開発本部の山田大輔氏によると今回の実験のポイントは3つだという。映像の形式に「MPEG-DASH」を用いたこと、マルチアングル映像の伝送、最後に5Gを用いたことという。実験後、山田氏は「思ったよりも上手く伝送できていたと思う」とコメントした。
実験のしくみ
映像は、バスケットボール国際試合のドイツVSチュニジア戦の中継を使用した。伝送の仕組みとしては、会場であるさいたまスーパーアリーナにシャープ製の8Kカメラを2台設置。現地で「MPEG-DASH」と呼ばれる映像方式にエンコードしたのち、有線の専用回線でお台場の実験会場へ伝送し、一旦コンテンツサーバーへアップロード。そこからシールドルーム内にある5G基地局を経由し、5G端末へ送られ映像が映し出された。配信方式はhttpを用いたストリーミング方式。YouTubeなどのストリーミング動画と同様の仕組みを使用した。
実験では、選手を追いかけるカメラ1台とバスケットコート全体の俯瞰カメラ1台の2つのマルチアングル映像が合計3台の8Kテレビに映し出された(写真参照)。なお、試合会場と実験会場ではエンコードの時間などを含めて、およそ10秒程度の遅延が発生するという。ただし5G通信の部分に限れば、およそ10ミリ秒以内での通信ができているとした。
実験で用いられた「MPEG-DASH」は、「3GPP」に準拠した規格。解像度やビットレートで複数のセグメントに別れており、ネットワークの混雑具合を判断して自動的に映像のクオリティを落としたり上げたりという特長がある。また、インターネットに接続している端末であれば、専用の受信機など特別な機器がなくても視聴ができるのもメリット。
また、音響部分は7.1Chのマイクで収録し、シャープのアレイスピーカーを用いたサラウンドが提供された。
実験中には、一時的に映像に乱れが生じる部分もあったが、試合会場のエンコーダーからのUDPパケット(通信用に細分化されたデータ)が落ちているのではないかという可能性が指摘された。検証を重ねれば解決できる問題だという。
8K時代ではエッジコンピューティングが重要に
今回は実験用の専用回線を用いて伝送を行った。5G回線ならば8K映像でも対応できる。しかし、8K映像のように巨大なファイルをインターネット上のサーバーにアップロードしてしまうと、多数のユーザーがコンテンツをダウンロードした時にどうしても回線が追いつかないという事態が発生してしまう懸念がある。
そこで、ネット上のサーバーではなく、ソフトバンクの回線内にサーバーを設置する方法を検討しているという。ソフトバンクのインフラ内にあるサーバーであれば、影響を受けるのはソフトバンクの回線のみであるため、ネット環境に左右されにくく、より良い映像体験を得られる。
他キャリアのユーザーが、このようなソフトバンクのサービスを利用する場合は、ネット環境の影響を受けてしまうことになるが、少なくともソフトバンクユーザーへ綺麗で安定した映像を提供するには有効な方法だとした。
8K映像の配信は一概にモバイル配信だけに限ったものではない。AI解析テレビ局や映像制作会社などでは、リアルタイムに高画質な映像を受信できる。ソフトバンクでは、現在制作会社などに向けてリアルタイムの映像編集が可能なアプリケーションを開発中だという。