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SoftBank World 2019で宮内謙氏が講演、「データの活用が日本復活の鍵」

 ソフトバンクは、7月18日~7月19日に同社最大の法人向けイベント「SoftBank World 2019」を開催した。2日目は基調講演にソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEOの宮内謙氏と同 副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏が登壇した。

「データの活用」がこれからの鍵になる

 ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏が登壇した。宮内氏は「基調講演のテーマはデジタルジャパン」だという。宮内氏は「デジタルデータでいろんなことが大きく変わってくる」と語り、テクノロジーで日本を変えたい、デジタルによって本質的な競争力をつけることが可能だとした。

宮内謙氏

 ソフトバンクに長く在籍する宮内氏はさまざまなことを経験したと語る。インターネットが普及したころや、携帯電話が普及したとき、スマートフォンが普及したとき、それぞれのパラダイムを見てきたという。

 パソコンによってあらゆるデータがスムーズに計算できるようになり、ネットで世界中の人がつながる、携帯電話で世界の人と電話ができるようになり、スマートフォンが普及してからは動画、写真、テキストあらゆるものがつながる。

 しかし、これからの10年が大きな変化をもたらすだろうと宮内氏は語る。

 日々、進化を続けるテクノロジーがシンクロナイズしはじめているのが現代。キーになるテクノロジーは3つだと宮内氏は語る。

 韓国国内で展開される5Gのサービスを実際に体験した宮内氏は「これはすごい、一気に広がるぞ」と感じたと体験を語り、これからきっと3年以内に日本中に広がっていくだろうと予測を語った。

 また、宮内氏はネットワークの進化はすでに始まっていると語る。ここでは少々ソフトバンクの5Gについても言及があった。

宮内氏
 「テストのネットワークではすでに、10Gbpsを出せている。春には5G端末を皆さんの手元に届けられると思う」

 と語った。また、

宮内氏
 「1平方キロに百万台のセンサーや機器がつながる。工場の中も、学校、病院などあらゆるところが変わる。デジタルデータがあらゆるところで活用できる時代が来る。ほぼデータの遅延がないため、自動運転車などで活用できる。

 この20年で1兆個のセンサー、デバイスがつながる。データ量も増える。10年間で2450倍。まさにデータセンタリックな社会が生まれる。一人あたりのデータトランザクションが18秒に1回になる。AIの画像認識は人間よりももはや優れている。人間は95%の正答率のところ、AIは97.7%というデータがある。これも(さらに)進化していく」

と現状の分析と未来予測を語った。

現状でも新たなプラットフォーマーが生まれている

 宮内氏は、5年先でも大きな変化が起こると指摘する。現にアメリカではいわゆるGAFAと言われる企業群が広告と小売をテクノロジーによって革新した。アメリカでは、これから5G、IoT、AIは全産業を革新する、アクセンチュアは、2030年代にIoTによって生まれる新たなマーケットを1400兆円(世界規模)と予測しているという。

 5Gは一部の世界ではスタートしているものの、世界的にはまだ始まっているとは言えない。しかしそれでも、新たなデジタルプラットフォーマーたちが世界で生まれてきていると語り、新たなプラットフォームを提供する企業の実例を示した。

自動運転のnuro。ドミノ・ピザなどで実績あり
KATERRA。建築プラットフォームを提供
ガジ。中国でトップの中古車販売
Zhong An。中国の保険会社
DoorDash フードデリバリー
Fair カーリースアプリ
REEF 駐車場の空車検索サービス
wework ワークスペース提供サービス
DiDi 大手配車アプリ、サービス
Opendoor 仲介業者を介さない中古物件販売

 宮内氏は、「5Gのネットワークのないアメリカでもデジタルデータで変わる。これまではデータの種類は大きく、構造化データと非構造データに二分されていた。これからは、人間の五感と心がIoTや5Gネットワークによりデータ化されるだろう。そすると産業はまさに大きく変わる」と語る。

 宮内氏は、テクノロジーによる未来の可能性を語ると共に日本のデジタライゼーションの遅れも指摘した。

宮内氏
 「残念ながら、デジタライゼーション変革は海外の方が早い。GDPではいまだ3位だが、データGDP11位でチェコの下と、デジタル化が遅れている」

 同時に宮内氏は、日本企業が復活するポイントについても言及した。

宮内氏
 「開発・生産コスト、マーケティング・販売はデジタル化が遅れている。日本企業復活の鍵はデータ活用だ。成長戦略、構造改革もデジタル化が大事。デジタル化を徹底するとすべてが簡素化しスピーディになる。

 それぞれの部門がデータを持っているが、一貫したデータになっていない。これが(日本企業の)実態。実はリアルとバーチャルのデータを一元的に統合する例は、あまりない。しかしここが肝だと思う。一元化したデータ、そうしたテクノロジーをそれぞれの分野の詳しい人が扱うことで確実に大成功する」

 と成功の持論を語った。

自動運転に5G、数年後の当たり前をつくりたい

 基調講演には、ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏も登壇した。

宮川潤一氏

 宮川氏は、トヨタ自動車との協業である「MONET テクノロジーズ(以下、モネ)」について語った。課題先進国ともいわれる日本が抱える社会問題のうちのひとつに交通が挙げられる。過疎地域における買い物難民や高齢者の交通問題など、それらに「本気で取り組むためにトヨタ自動車とつくった会社」がモネであると宮川氏。

 宮川氏は「モネはプラットフォーマー。日本を走る自動車のうち8割ほどの6千万台をプラットフォーム化したい」と語る。

 各メーカーの自動車は、コンピューターなどが出す信号などの仕様が異なる。それをモネのプラットフォームの中で、翻訳しモネのプラットフォームを利用してサービスを行うサービサーが必要な地図や、ドライバーの情報などを提供するという。

 宮川氏は「馬車だらけだったニューヨークが、13年でフォードの自動車だらけになった過去がある。これから3年も4年も経つとハンドルのない車が出てくるようになる」と語る。

 しかし、同時に宮川氏は「この国にはまだ自動運転車を受け入れるような素地はない。その素地をいまはつくっているところだ」とした。

 モネでは現在、実証実験を進めており、今年も20自治体との連携を開始しており来年度は100自治体での実証実験を目指すという。現在も、過疎地域での高齢者、子供のための移動手段を提供している。

 また、宮川氏は新たな取組として遠隔医療に言及した。車両には検査機器と看護師のみが乗り込んでおり、医師は病院にいるまま遠隔操作で医療行為を行う。医者不足問題に直面する自治体に向けたソリューションだ。

モネが目指すのは目的型MaaS

 宮川氏は「人と移動をつなぐと言われる分野がMaaSだ。しかし、モネが目指しているのは目的型MaaS、人が移動するのは目的があるからだ。買い物や病院へ行くことなど。移動はその手段であってサービスが人によっていくのもMaasの考え方ではないか」と語る。

コカ・コーラの場合

 宮川氏はコカ・コーラの構想についての事例を語った。人の流れがわかるヒートマップがある。(人が自販機を探すよりも)自販機が移動したほうが効率がいい」という逆転の発想や、自販機に補充する場合も同様だという。

 「補充ステーションに自販機が来て補充し、そしてまた販売にでかけていく。これをパッケージで考えているのがMaaS」だと語った。

法整備や、困難な問題も

 しかし、多くのことをやろうとすると法律面のハードルが高いと宮川氏。「たとえば、川崎市のコンビニが移動して、横浜市でコーヒーを売ったら法律違反になる」と法律面での困難さを例示した。

 加えて、自動運転を行うプログラムについても、危険を回避した先に人がいた場合はどうするのかなどのプログラミングが課題として持ち上がっていると宮川氏。加えて、信号システムの高度化や、古くて狭い道路の整備など問題もあり、それらはモネが収集し官公庁と共有しているのが現在のモネだという。

情報弱者をなくすHAPS

 宮川氏は「現在、世界人口の約半分はインターネットにアクセスできていない」と指摘する。アフリカなどに多いが、こうした問題を解決するためにHAPS(High Altitude Platform Station)を開発中だという。

 成層圏を飛行し、基地局の役割を果たす。こうすることで、インフラ事情の悪い国でも上空から電波を発射することで、インターネットアクセスを提供する。「世界中を全部つなげてみせる」と宮川氏。

SoftBank 5G

 5Gは日本が抱える社会問題を解決する一番の道具だとしている。宮川氏は「5Gは、産業高度化のキーファクターに必ずなる」と語る。

 従来は人を中心としたネットワークだったと宮川氏。これまでは人が住んでいる地域だから基地局を設置していたが、5Gでは産業を中心としたネットワークになるという。2021年にはネットワークを完成させたいと語る。

 また、それと関連して宮川氏は、5Gを早く提供できるということは、産業にとってもよいこと。ソフトバンクは5Gを総力戦でやります5Gの意気込みを語った。

 宮川氏は「いろいろな挑戦の話をしたが、3年も4年も経つと意外と常識となっていることは多いと思う。そんな時代を作れるようにしたい」と締めくくった。

ソフトバンクのさまざまな取り組み

ソフトバンクは社会問題も解決する

 ソフトバンク デジタルトランスフォーメーション本部 本部長 河西慎太郎氏が登壇した。

河西慎太郎氏

 デジタルトランスフォーメーション本部は、2年前に新設された部署で社内では「デラックス部署」と揶揄されたこともあったが、140名のチーム員を抱え、収益化が見込める事業は17にも登る。現在は主に物流にフォーカスしているという。

 河西氏は「8割の企業がデジタライゼーションに積極的ではない、日本の社会問題を解決、ソフトバンクの次の柱になる事業を創出する。進行中の35案件のうち収益化予定の事業は17案件ある。パシフィックコンサルタンツと2社でデジタライゼーションを加速する。スマートインフラレーションを開発する」と語る。

地すべりを検知する

 昨年の西日本を中心とした豪雨での被害額は1兆940億円に登る。また、土砂災害や河川の増水も頻発した。土砂災害などは基本的に感知が難しく、発生後に発覚し対処していることが多いという。ソフトバンクではテクノロジーで予知し、減災することはできないかと考え、取り組みを始めたという。

 高周波の位相のズレを検知することで、斜面の地すべりを感知するシステムを開発。実験ではミリ単位でのズレを感知することに成功したという。また、このシステムはトンネルや橋梁の監視にも転用が可能と河西氏は語る。

 また、不足する技術者を補うため、省人化の取り組みも進めており、AIで設備の異常を検知するシステムも開発中。河西氏は「省人化が進む可能な取り組みを進める」と語る。

社内環境を整備する取り組み

 法人プロダクト事業部&事業戦略本部 副部長 兼 RPA事業推進室室長 上永吉聡志氏が登壇し、ソフトバンク社内の環境整備について語った。

上永吉聡志氏

 ソフトバンクでは「デジタルワーカー4000人プロジェクト」が進行しているという。上永吉氏は「業務プロセスを徹底的に見直し、デジタルデバイスを活用し社内でデジタライゼーションを推し進めるもの」と語る。最終的にはカスタマーエクスペリエンスの向上、顧客の課題解決につながるという。

 会議が多い、承認プロセスが多いという現場の声を1000以上集め、具体的な業務支援に置き換え考えて課題を分析、ビジネスツールを取り入れあるべきプロセスを検討するという。

 ソフトバンクのコンシューマー事業部では、1日に2時間ほど店舗スタッフからの問い合わせの対応に追われていたという。しかしチャットボットを導入したところ、30分かかっていた検索作業が5秒で終わるようになったという。ほかの部署にも横展開している最中と上永吉氏。

 ほかにも、法人担当部の登録業務では日常的に多くのオーダーが舞い込む。RPAツールの導入で50分かかっていた登録作業が18分に削減されたという。

 上永吉氏は「成功もあれば失敗もあると思う。それを糧にお客様に価値の高いサービスを提供したい」と語る。

ゲスト企業として4社が登壇

Arm TREASURE DATA

 ビッグデータ分析を手がけるArm TREASURE DATA(アーム トレジャー データ)からは、バイスプレジデント データビジネス担当 ジェネラルマネージャーの芳川祐誠氏が登壇した。

芳川祐誠氏

 芳川氏は「それぞれの部門で様々なデータが有る。デジタル化、合理化を進めてきたのは正しいことだと思う。それぞれの目的のもとでデータを活用していたが、残念ながらその目的が最終的にひとつではなかった」と語る。

 芳川氏は、新進気鋭のGAFAのような企業は生まれたときからデジタルネイティブな企業で、こうした問題は存在しないという。部門ごと、営業地域ごとなどの統合されたデータを用いなければディスラプター(違う分野から急に市場を奪う企業)にやられてしまうだろうと指摘する。

 これで何がわかるのかと言うと、顧客のことが本当にわかるようになると芳川氏。実際には、他企業にはわからない、それぞれの企業独自のデータはすでに持っていることが多い。しかし結局は、統合されていないので、顧客イメージがうまくつかめないのだという。

 Arm TREASURE DATAが提供するCDP(Customer Data Platform)は、そうした問題をすべて解決できると芳川氏は語る。

 CDPはデータ収集の機能が特徴。Arm TREASURE DATAの例でいうと、企業向けのアプリとの連携も数百例。特に加工もなく顧客のデータをCDP上で扱えるという。そして、この瞬間にデータが統合されていないという問題が解決する。

 データの活用側との連携を非常に進めており、AIのエンジンの開発も進めており、CDPにデータを入れるとその瞬間に解析ができる。Arm TREASURE DATAが提供するのはこのようなデータを簡単に統合、解析できるアプリケーションだという。

 また、デジタルとフィジカルのデータは統合が難しく、CDPとAIを組み合わせるのは難しいことだとしたうえで、芳川氏はそこが新しいビジネスチャンスになると考えているという。

 芳川氏は、日本はもっとデジタライゼーション化を頑張る必要がある、アメリカの例を見ると日本にももっとできることがあるだろうと語る。一方で、CDPを導入したことで、ディーラーでの成約率が2倍に跳ね上がったスバルの先進的な取り組みの例を語った。

 企業の仕組み自体は、ERMを用いて合理化されている。その次にはCRMで顧客との関係を合理化した。CDPはそれらと同じようにマーケットに対するインパクトの強いアプリケーションだと信じていると芳川氏は語る。

 最初の使用事例マーケティングだが、さまざまな使用事例が考えられる。これからも顧客のデジタルトランスフォーメーションを応援したいと語った。

ヤフー株式会社

 ヤフーからは、常務執行役員 メディアカンパニー長の宮澤弦氏が登壇した。

宮澤弦氏

 ヤフーは、検索など自社サービスから得た膨大なデータを社内で分析し、自社サービスのために使用していたが、これからは多くの企業などに使ってもらうことを考え、「データフォレスト構想」を立ち上げたという。

 マーケティングなどの領域では、データを使った生産性の向上が行われてきた。

 宮澤氏は、「さらに上流工程である商品企画、あるいは生産・物流にまで使ってもらいたい、すべてをヤフーが手がけるのは無理なのでパートナーシップを組んで多くの企業に参加してほしい」と語る。

 宮澤氏は「日本は自然災害が多い、防災のためにデータを行政に使ってもらうことも考えている」と災害支援や防災についてもデータを提供することに言及。

 加えて、これまでは、自社のためにデータを使ってきたが、日本のためにデータエコシステムを構築していきたい。産業の発展、より豊かな暮らしのため、未来技術のためのデータフォレストを進めていきたいと語る。具体的に提供されるのは、人の興味関心のを視覚化したデータ、エリア人口や移動状況などだとしている。

 データフォレストは今年の10月に本格的なサービス提供予定。

MapBox

 MapBoxからは、CEOのEric Gundersen(エリック・ガンダーセン)氏が登壇し、同社のサービスについて説明した。MapBoxはオープンソースで開発されるカスタマイズ性の高い地図アプリ。165万人の開発者と6億人のアクティブユーザーがいるという。

Eric Gundersen氏

 エリック氏は「地図は、すべてのものの一部だ。朝起きてウェブを見るときでも、オフラインとオンラインの間をつなぐものだ」と語る。

 MapBoxのデータはAIによってアップデートされる。オープンプラットフォームなので自由に使うことができる上、使うサービスの雰囲気に合わせて見た目の変更も可能という。

日本でも、Yahoo!がMapBoxを採用するとしており、今年の秋には新たな地図データになるという。また、MapBox自身も日本支社を開設すると発表した。

Cyberreason

 Cybereason(サイバーリーズン)からは、CEOで共同創業者のLior Div(リオ・ディブ)氏が登壇し、サイバーセキュリティについて語った。

Lior Div氏

 冒頭で宮内氏が、日本に対するサイバー攻撃は年々増加しており、攻撃検出数は世界第2位、国内でのサイバー攻撃は5年間で16倍に達したと解説した。

 Cybereasonの提供するセキュリティは、AIが攻撃を判断し、ユーザーを守るものだという。ハッカーの攻撃は年々巧妙化しており、「ノイズの影に隠れて行動することで、誰も気づけなかった」とLior氏。ファイヤーウォールがあるからと安心することはできないとも。

 重要なのは、ハッカーには必ず足跡があり、決してその痕跡を残さずにハッキングできないことだという。Cybereasonのシステムでは、そのわずかな足跡をAIが検知し、「データのゲーム」に勝つことができるようになったのだとLior氏は語った。