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「AQUOS R2 compact」「AQUOS sense2」開発者インタビュー
ダブルノッチのコンパクトモデルと進化したスタンダードモデル
2018年12月26日 11:40
シャープは、ソフトバンク向けに「AQUOS R2 compact」を2019年春モデルとして発売する。また、NTTドコモ、au、UQ mobile向けに「AQUOS sense2」を発売しており、SIMフリーモデルも発表され、順次発売される。
AQUOS R2 compactは、5.2インチのIGZO液晶を搭載し、幅が64mmのコンパクトモデル。従来の、上部にカメラを収めたノッチ(切り欠き)だけでなく、下部にも指紋センサーを収めたノッチを備えている。ソフトバンク向けに販売されるが、SIMフリーモデルも検討されている。
AQUOS sense2は、18:9、5.5インチのIGZO液晶を搭載し、AIにより被写体に応じて最適に撮影ができる「AIモード」を搭載したスタンダードモデル。
端末の詳細は別ページ(AQUOS R2 compact・AQUOS sense2)にて紹介している。
AQUOS R2 compact、AQUOS sense2の特徴について、シャープの通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 担当部長の林孝之氏をはじめ、AQUOS R2 compactを担当した商品企画部 主任の中野伶香氏、設計を担当した回路開発部 技師の荒井剛氏、AQUOS sense2を担当した商品企画部 係長の清水寛幸氏にお話を伺った。
AQUOS R2 compact、幅64mmの“握りこめるサイズ”にこだわり
――まず、コンパクトモデルの開発に至った経緯を教えてください。
中野氏
コンパクトモデルはフラッグシップモデルのように明確に要望されているゾーンとは違うと考えています。まず、コンパクトモデルを求められているお客様がどのくらいいるのか調査をすることから始めました。
調査では、片手で使いたい方が6割超え、持ち歩きの際に服のポケットで入れておく方が半数いることが分かりました。このようなことからまだ、コンパクトモデルが求められているのではないかと考えています。
また、スマートフォンがインフラ化し、ただ単にコミュニケーションをとるツールではなく、決済サービスの利用など、さまざまな面で生活のツールとして利用されています。スマートフォンとの接点が増えるがゆえに、片手で使いたいというニーズが出てきているのではないでしょうか。
また、コンパクトモデルを開発するメーカーが少なくなっていることを考えると、我々が出す意味はあると思っています。
――この大きさにこだわった点があれば教えてください。
中野氏
R2 compactでは、大きさを先代のR compactに比べて全体的に小型化をしました。横幅は2mmの削減ですが持ち比べると差が分かります。
一般的な日本人の手のサイズを見ると、スマートフォンの幅が65mm以下でないと握りこめないということが分かりました。大型の端末では操作をするさいに不安定な状態になることが多く、操作性が落ちます。解決する方法としてバンカーリングがありますが、コンパクトモデルを求めるお客様は、なにも考えることなく、サッと使いたいお客様だと考えており、この握りこめるサイズが重要だと思います。
コンパクトモデルは男性ユーザーが半数超え
――コンパクトモデルというと女性ユーザー向けのイメージがありますが、実際のユーザー層はどうですか。
中野氏
先代の開発時には、若干女性のお客様に向けた想定はしていましたが、実際に見てみると、男性と女性がちょうど半数くらいに分かれ、どちらかといえば男性のお客様が多いくらいでした。男性の場合、仕事によっては作業着やスーツのポケットなどのスペースに入れておきたいお客様が多いためかと思われます。
ラインナップされるカラーもそれに準じて、男性、女性どちらでも持てるような中性的な色を用意しました。先代のホワイトとR2 compactのホワイトも色が異なり、黄色がかっているホワイトから、より白に近い色に変更しました。
“ダブルノッチ”のディスプレイについて
――R2 compactでは先代の上部のノッチ(切り欠き)に加えて、下部も指紋センサーに食い込む形でノッチになっています。
中野氏
前面の指紋センサーは、AQUOSのポリシーです。机の上などでは前面にあることにより認証しやすく、背面搭載に比べ確実にタッチできるためスマートに使えます。また、顔認証にも対応しているのでシーンに応じて認証が可能です。
ノッチ部の指紋センサーは、ナビゲーションキーとして利用できる機能を搭載しています。Android 9では、アプリの切り替え(履歴)の際にナビバーを横にスライドして操作しますが、指紋センサーを利用してアプリを切り替える際は、指紋センサー上で操作したあとに、ノッチ左右のディスプレイにそのまま指をスライドしてもシームレスに操作ができるようにしています。
そのような操作性を考えて、ダブルノッチのデザインとさせていただきました。
――指紋センサーとディスプレイのタッチセンサーを一体化しての操作となると、難しい部分がありませんでしたか。
中野氏
ソフト部門と相談はしました。ディスプレイ側の反応を抑えており、指紋センサーの操作を優先させています。お客様の操作としては一連の操作になるように調整しています。
――ダブルノッチに関して、Googleに同意を得るのは大変でしたか。
中野氏
開発の初期から表示を含むダブルノッチのユーザーインターフェース仕様をGoogle社と一緒に検討し、作り上げていきました。アプリが表示されない部分があるといったことはなく、OS側でもサポートをしてもらったのでアプリのベンダーが対応すれば、全画面での表示にも対応します。
――過去のインタビューでは、「画面占有率は追わない」とおっしゃってましたが、ダブルノッチのディスプレイを採用した理由はなんですか。
中野氏
コンパクトな画面でいかに大画面を搭載させるかということが前提で採用しました。また、画面占有率が何%とはうたっておらず、占有率が高いからいいとは考えておりません。お客様にとって使いやすいかを第1に考えた中では、ナビバーとディスプレイを一体化させる操作性とマッチしたこのディスプレイが、R2 compactには最適だと思っています。
――下部のノッチを備える際に苦労したことはありますか。
荒井氏
本来であれば、液晶のすぐ下に、ドライバーICというものを搭載しますが、R2 compactは液晶から離れたところに配置した構造としています。
――下部のノッチが特徴的ですが、上部のノッチに変更はありますか。
荒井氏
先代にくらべて、インカメラが収めてある上部のノッチ部分が小さくなっています。液晶の構造が違いまして、先代では切り欠いた液晶のフリーフォームディスプレイを使っていましたが、R2 compactではシースルーホール液晶というものに変更しています。カメラ部が窓のような透過型のディスプレイになっており、カメラの縁を小さくすることができたため、目立たなくなっています。
中野氏
ディスプレイのノッチを小さくできるのも、自社でディスプレイを作っているからこそ実現できた点だと思います。
コンパクトモデルの熱対策
――コンパクトモデルは筐体が小さい分、放熱がしにくいと思いますが対策はしていますか。
中野氏
やはり、コンパクトモデルは筐体が小さいため発熱しやすいです。コンパクトモデルならではの発熱対策を施しており、全体から放熱するようになっています。フラッグシップのコンパクトモデルなので、発熱によりパフォーマンスが落ちないようにすることも大切だと考えています。
荒井氏
下部の熱をグラファイトシート(放熱シート)を使って熱を全体的に広げるようにしました。下部の構造が厳しかったため、ノイズ対策のメタルフィルムのところにグラファイトシートを挟み込み、一体型のシートにしたものを使用することで本体を厚くせずに放熱が可能となりました。
片手で持てるサイズに“R2”の要素をどれだけ詰め込めるか
――先代モデルとの違いを教えてください。
中野氏
先代は、フラッグシップの“R”を冠したコンパクトモデルにもかかわらず、AQUOS Rと同じチップセットを搭載できなかったのが反省点です。いかにAQUOS R2の要素をコンパクトモデルにも詰め込めるか、ということを課題にして開発担当と取り組んできました。
R2 compactでは、R2と同じチップセットとメモリーを搭載しました。また、大きさも先代のR compactに比べて全体的に小型化をしました。横幅は2mmの削減ですが持ち比べると差が分かります。
また、イヤホンジャックは引き続き搭載しました。コンパクトユーザーが音楽を聴くときにすぐに取り出して操作するケースを想定したためです。
――カメラで強化された機能はありますか。
中野氏
カメラは、R2のデュアルカメラのうち、標準カメラと同じものを採用し、AIオートなどの機能も搭載しています。また、コンパクトモデルのお客様は、ポケットからサッと取り出して気軽に撮影することが多く、手ぶれをしてしまうため、光学式手振れ補正を搭載しました。
インカメラの美顔補正では、ナチュラルに補正することに力を入れています。不自然にならず、“少し良く撮れた写真”ぐらいになるよう心がけています。
AQUOS sense2、“必要十分”なスタンダードモデル
――続いてsense2の開発背景について教えてください。
清水氏
senseシリーズのコンセプトは、“必要なものだけ、磨き込む”というものです。おかげさまで先代モデルは多くの方に受け入れていただきました。その一方で、お客様から意見ももらっており、もっと満足していただけるモデルにしたいと考えました。
発表会では、“必要十分”、“ちょうどいいところ”を狙っていくと申しましたが、必要十分というのは相対的なもので時間とともに変わっていきます。senseシリーズでは、その時々のニーズを定義していこうと考えています。
――ターゲットにしているユーザーはどのような層ですか。
清水氏
2通りのお客様とニーズを想定しています。1つ目はスマートフォンに詳しくないユお客様で、これを買っておけば間違いないと安心していただけるニーズに応えようと考えました。2つ目は賢くスマートフォンを使いたいお客様で、これくらいのスペックであれば十分というニーズを想定しています。
ディスプレイやカメラだけでなく、目に見えない部分も強化
――先代の「AQUOS sense」から変わった点を教えてください。
清水氏
1つ目はディスプレイです。ディスプレイは、ただ表示させるだけのデバイスだけでなく、操作など、スマートフォンの性能を決める要因の1つです。ですからスタンダードモデルでもこだわりました。
持ちやすさはそのままに、18:9の縦長のディスプレイを搭載しました。画面は大型化したにもかかわらず、バックライト効率の向上により、消費電力は先代よりも下がっています。
2つ目はカメラ性能を強化しました。画素数は先代より少ないですが、センサーのピクセルサイズを従来より25%大きくし、レンズを明るくしたことで50%多く光を取り込めるようになりました。暗いところの撮影でのノイズが軽減されていたり、室内撮影での料理の質感がきれいになっています。
3つ目は基本性能の強化です。チップセットはSnapdragon 450を採用し、普段使いに十分なパフォーマンスを実現しています。また、Wi-Fiは新たに5GHzに対応しました。
また、スペックに現れない部分でも改善をしています。より大きい音で着信音を鳴らせるようにスピーカーの音量アップをしました。ほかにもメモリーの使い方を改善し、画面遷移などに動作が重くなることを抑えました。アプリを利用しているとメモリーに細かい空きができる“メモリの断片化”が起きますが、断片化を整理する処理を行っています。容量は先代モデルから変わっていませんが、賢くメモリーが使われるようになっています。
AQUOSは、アップデートを保証している機種もあるので、過去のモデルにもこのようなメモリーの断片化を防ぐ機能を搭載していきたいと考えています。
――メモリーの断片化を防ぐ機能があると、体感として違いが分かりますか。
清水氏
短期間の使用ではわかりませんが、長く使用すると動きが遅くなると感じることもあると思います。そういった長期間使用した際に効果が出ると思います。
断片化は、ゲームのようなヘビーなアプリだけでなく、電話やマップなどの普段のアプリを使用していくうちに起こる可能性はあります。お客様の使い方によらないので、幅広い方に効果を実感していただけるかと思います。
――筐体の素材も変更されましたね。
清水氏
筐体はアルミのバスタブ構造となっています。これにより曲げやひねりに対する強度が向上しました。普段使いの中で、ポケットやカバンに入れる際にも安心して利用していいただけます。
本体が強くなったことにより、内部の部材を減らすことができました。また、縦長ディスプレイを搭載し、額縁を細くしようとするとディスプレイのパーツとカメラのパーツが干渉し、本体が分厚くなりますが、内部の部材が減ったことにより、厚くせずに狭額縁にできました。
林氏
アルミ筐体は、コストが上がります。しかし、長く使ってもらうためには強度を上げることが必要と考えたため採用に踏み切りました。
――アルミ素材となると、各アンテナへ電波の干渉があるかと思いますが、工夫しているところはありますか。
清水氏
Felicaなどのアンテナ部はアルミを抜いています。本体は、アルミと樹脂の一体成型で、外から見えないようアルミの上からでも塗装ができる特殊な塗装をしてあります。
R2に搭載のAIオートをスタンダードモデルでも装備
――R2は動画にフォーカスしたデュアルカメラですが、この機種のカメラでユニークな機能があれば教えてください。
清水氏
R2に搭載した、被写体に応じてAIが最適な設定を行う「AIオート」がsense2でも搭載されておりこれが特徴です。なにも考えず最適な撮影が行えるという点では、お客様として想定しているシンプルに使いたい方にとっては価値があると思っています。また、このクラスの価格帯ではユニークな機能だと思います。
機能と価格のバランスを考慮、使いこなせる機能だけ搭載
――先代モデルでは価格も商品力の1つと掲げていましたが、今回も価格と性能のバランスを決める難しさはありましたか。
清水氏
このクラスは、すごく価格が重要となるレンジです。企画の時にこれくらいの価格帯にする、というのは決めていまして、そのなかで企画をしています。もちろん、価格がこれくらいだからとスペックを決めつけるようなことはしていません。そうしてしまうと、進化点が少なくなり、お客様に選んでもらえないかもしれないからです。このレンジでの機能と価格のバランスは、企画力が問われるところです。
先代モデルの評判は、お客様の声をしっかりと聞いていまして、そこから搭載する機能を選んでいます。
――他メーカーではこの価格帯のSIMフリースマートフォンでもデュアルカメラとなっています。このモデルでは、防水、FeliCa対応を売りにしていくのでしょうか。
清水氏
単純にスペックで比べてもらうと、デュアルカメラではない、ノッチがないなどが挙げられますが、お客様が使うにあたって価値のあるものを考えたときに、現時点のスタンダードモデルでは、その2つが絶対必要とはいえないと判断しました。
また、使いやすさを考えて前面に指紋センサーを搭載しています。設計では厳しい部分がありますが、こだわって配置しています。
林氏
このシリーズでは、いろいろなアイデアが出ていますが、基本としてお客様が実際に使用して、ユーザー体験を上げられるのが第一です。デュアルカメラなど複数レンズのカメラがありますが、シングルカメラでの作りこみをしっかり行う必要があると考えています。
また、スタンダードモデルなので、お客様が使いこなせない機能は入れるべきではないと考えています。
初心者向けメニューを搭載、法人向けにも応用可能
――そのほかの取り組みはありますか。
清水氏
フィーチャーフォンからの乗り換えの方など、初心者向けにAQUOSかんたんHomeを搭載しました。
林氏
最近では、法人向けのニーズも増えています。この端末でAndroid Enterpriseに対応しており、業務用のメニューを入れることも可能です。そのような面からでも幅広いお客様に使ってもらえるかと思います。
――本日はありがとうございました。
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