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ボルダリングは自由視点でもっと楽しくなる――KDDIが「5G×スポーツ」で目指す新体験
2018年8月7日 17:05
そびえ立つ壁に据え付けられた数多くのホールド。難攻不落のルートを制覇すべく、チャレンジする様を16台のカメラが捉え、多角的な視点の映像を生成する――KDDIが提案する、ボルダリングの新たな楽しみ方だ。
TEAM auの選手も出場したスポーツクライミングの大会「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2018」(8月5日開催)と、6日7日に実施されたユーザー参加の体験イベントの様子を通じて、来たる5G時代に向けてKDDIが提供しようとする新たな体験に迫る。
スポーツクライミングを自由視点で楽しむ
近年、競技人口が拡大するスポーツクライミングは、身体だけで切り立った壁に挑むスポーツ。2020年の東京オリンピックでは15mの壁を登り切る速度を競う「スピード」や、4m程度の壁に設置された困難なルートにチャレンジする「ボルダリング」、6分の制限時間内で15m以上の壁でどこまで登れるか競う「リード」といった競技が正式種目に採用されている。
8月5日に開催された「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2018」は、最終決戦(スーパーファイナル)で2人の選手が同時に課題へ挑む方式を採用。会場では、ハードなコースに対して、スピーディな展開や、壁にたたき落とされながらもあきらめない選手たちの姿を間近で楽しめた。
ほぼ同時に、選手たちの競技中の様子は、16台のカメラで捉えられ、HDサイズの映像を合成し、観る視点を自由に切り替えられる「自由視点映像」として、Webサイト「スポーツブル(SPORTS BULL)」で配信された(7日15時時点でまだ配信中)。
たとえば、女子のスーパーファイナルでは、野中生萌選手と平野夏海選手が、ほぼ同着に見える結果を残した。しかし審判による映像判定で平野選手の優勝が確定。コースの途中までは野中選手(観客から観て左)のほうがリード。ところが最後の最後で平野選手が抜き返して逆転優勝を果たした。この様子も、自由視点映像で配信されており、スピーディな展開のため、ちょっと気づきづらいところもあるが、パソコンやスマートフォンのブラウザでアクセスし、視点を切り替えて観戦してみると、息を呑む展開を多角的な視点で楽しめる。
競技者自身にとっても役立つ
観戦する側にとって、新たな観戦体験となる自由視点映像は、競技者にも興味深い仕組みのよう。
7日の体験会に参加した選手の1人は、普段から練習時に映像を撮影し、技術の向上に励んでいるそう。たとえば、登れなかった場合を映像で確認することで、力を入れるタイミングやポイントなどを把握し、再チャレンジする。そうした点でも、自ら、あるいはライバルたちの様子を自由視点の映像で確認できれば、これまで目にできなかった角度で、体の使い方をチェックできる。
5Gでこれまでにない臨場感を
2020年に実現するという、次世代のモバイル向け通信規格、いわゆる5Gは、「超高速大容量」「超低遅延」「超多数接続」という3つの特徴を備える。
今回紹介した自由視点のクライミング映像は、4Gのスマートフォンでも楽しめる形だったが、その映像品質は5Mbps程度。もともとの映像品質は20Gbpsとのことで、かなり圧縮した形での提供だった。これが5Gになれば、生のデータそのままとまではいかずとも、現在よりも相当、高精細な映像になることは間違いない。そのメリットの1つは、臨場感の向上だ。
また、5Gのサービスエリア内であれば、配信する会場や機器の設置に融通を利かせられるかもしれない。今回は屋内でのボルダリングが題材となったが、より幅広いスポーツでの展開も期待できそうだ。
今回は複数のカメラの映像を組み合わせた「タイムスライス自由視点」だったが、KDDIでは、カメラで捉えた被写体や背景から3DCGモデルを生成して表現する「自由視点VR」にも取り組んでいる。自由視点VRであればカメラがない視点からの映像も楽しめるとのことで、現地でも味わえない新たな映像体験ができる。そうした映像もまた、5Gの超高速大容量であれば配信しやすくなるほか、競技会場でも、観客が持つスマートフォンやタブレットへリプレイ映像の1つとして提供できるかもしれない。
かつて、モバイル通信の通信規格が進化する際には、その進化にあわせたサービスは徐々に整備され、遅れてやってくる形だった。一方、5Gでは、携帯各社が当初からパートナー企業や、さまざまなジャンルとコラボレーションして、これまでにない体験を生み出そうとしている。引き続き本誌では、5Gが実現する新たな世界や体験についてレポートしていく予定だ。