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楽天・山田氏、「今も6000億円という数字にはかなり自信がある」

2018年度第1四半期決算説明会

 1.7GHz帯の周波数を獲得し、携帯電話事業に新規参入することになった楽天。同社は5月10日、2018年度第1四半期決算説明会を開催し、参入の狙いなどについて改めて説明した。

 説明会の中で、同社 副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデントの山田善久氏は、総務省に提出した申請書の内容を映しながら、「2019年10月のMNO事業の開始を目指している。2018年~2028年の10年間で5263億円の設備投資を計画している。契約者数としては2028年度末に1000万人を目指す」と、当初の計画通りに事業展開を図る意志を示した。

楽天 副社長執行役員 通信&メディアカンパニー プレジデントの山田善久氏

 今回は代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が不在ということもあり、具体的な方向性については提示されず、「実際のビジネスプランについては鋭意計画中」(山田氏)とするに止まった。

 また、現行キャリア各社が年間5000億円規模の設備投資を続ける中、同社の10年間で5263億円という設備投資計画については疑念も残る。

 山田氏はこれについて、「携帯事業に参入すると発表した直後に、果たして6000億円で足りるのかという記事がずいぶん出たが、その当時から6000億という数字はいい加減に出したわけではなく、複数のベンダーからの見積もりで、きちんとした基地局の配置に基づいて出した数字で、それなりに自信はあった。今は細部を詰めている段階で、ベンダーはまだ決まっていないが、都市部の基地局の配置などはより精緻になっている。当時も今も6000億円という数字にはかなり自信がある。普通にできる」とコメント。

 同氏は「他社の数字を拝見すると毎年かなりの金額を投資しており、他社の数字にコメントする立場にはないが、推察するに、過去から3Gを含めて相当な設備投資をやってきていらっしゃるので、3Gを含めた維持更新投資をされているということ。年々ITの技術革新が進んでいるので、新しい技術を使って投資をすれば、十分賄えると確信している。楽天に体力があるかという話については、1500~2000億円ぐらいを楽天から新会社に資本として注入してもらい、残りはリースや電話の売上の証券化を行うことで賄える。財務的にも体力は十分にある。それも含めて総務省にご評価いただいている」と説明する。

 同社では、東京電力、中部電力、関西電力、九州電力の鉄塔設備を間借りすることで基本合意しているが、こうした取り組みでコスト削減を図っていく方針。山田氏は「これに限らず、設備投資については効率的に行えるよう新しい技術を活用していく」としている。

 設備投資の金額だけでなく、40MHz幅のみの割当できちんとしたサービスが提供できるのかといった不安もある。

 山田氏は「たしかに他のMNOさんはかなり周波数を持っているが、私どもは40MHzということで少ないは少ないが、技術的にいろいろと新しいものも出てきているので、例えば1000万とか1200万とかいう数字であれば、40MHzで十分対応できると思っている。そこが制約になるとは思っていない」とコメント。

 ただ、「最終的には2万7000の基地局を全国に作るが、2019年10月のサービス開始の段階ではもっと少ない形で始まる。何年かかけて2万7000まで行く途中の段階では他のネットワークをお借りすることを考えている」(山田氏)と述べており、サービスインのタイミングで競合他社に大きく依存する形になることは避けられない。新規参入の高い壁をどう乗り越えていくのかについては、依然として課題が残っている。

 また、既存の大手3キャリアとどう戦っていくのかについては、具体的な方向性は示されていない。「楽天モバイル」の形でMVNO事業を展開する同社が、あえてMNO事業に手を出す意義があるのか。

 山田氏は、「MVNOは薄利で、今のところドコモさんから仕入れてユーザーに再販させていただくという形。自分のネットワークではなく、利益率もそんなに高くないので、思い切ったマーケティング施策とか、あるいは料金プランといったところに制約がある。自分でネットワークを持てば、新しい技術を使ってネットワークコストを下げることによって、料金プランの作り方も今までと全く違ったものができる」と語る。

 「より広く楽天グループの戦略の中で考えると、今でも携帯は皆さんの生活の重要な一部になっているが、そのネットワークを自分で押さえることで、楽天のメンバーとの結びつきをより強め、楽天のエコシステムの中のピースとしては非常に大きなものになる」(山田氏)とし、やはりグループ全体でのシナジーが意識されている。

 楽天でEC事業を担当する常務執行役員 ECカンパニー プレジデントの河野奈保氏が「楽天市場におけるモバイル流通比率が上昇し、第1四半期において66.5%がモバイルのデバイスからの売上となった」と語るように、他の事業との連携によって差別化を図っていくというのは同社にとっては正攻法。第4の事業者として生き残っていくには、それ以外の切り札も必要になってくるだろう。

楽天 常務執行役員 ECカンパニー プレジデントの河野奈保氏
楽天市場のモバイル流通比率は66.5%に