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水道から物流、農業まで「NB-IoT」を推進するファーウェイ、幕張でイベント開催

ソフトバンクはスマートパーキングのデモを公開

 ファーウェイは、千葉県の幕張メッセで「グローバル・モバイル・ブロードバンド・フォーラム 2016」を開催している。会期は11月24日、25日。展示会場では講演イベントで触れられているようなIoTや5Gの今後の展開について、具体例が示されている。

「グローバル・モバイル・ブロードバンド・フォーラム 2016」の展示コーナー

 ファーウェイは通信キャリア向けのネットワーク機器を古くから提供しており、同イベントも、スマートフォンなどを開発・提供する事業部とは異なる、インフラベンダーとしてのファーウェイのビジネスグループが主体となって開催されている。また協力パートナーにGSMA、GTIという業界団体が名を連ね、講演にも登壇することなどから、各国のキャリア関係者も多数訪れる国際的なイベントになっている。今回は第7回目で、日本で開催されるのは初めて。

 来場者の半数はキャリア関係者でファーウェイの直接の顧客になるが、残りの半数は自動車業界やIoTなどを含むサードパーティの関係者になっている。ファーウェイはすでにネットワーク機器で一定のシェアを確保しているが、さらなる成長のためには、わずかなシェアの拡大よりも市場そのもの、パイを拡大していくことが重要であるという考えから、同イベントを開催しているという。

 同イベントの展示コーナーでは、IoTや5Gのコンセプトやデモの展示が行われているほか、24日には報道関係者向けにソフトバンクが幕張メッセでデモを公開し、既存のLTE網を応用する「NB-IoT」(Narrow Band IoT)のフィールド実験の様子を披露した。

NB-IoTで実現する「4.5G」

 展示コーナーのコンセプトは、大きく分けると、IoTなどを含む「4.5G」と、さらに先端を行く「5G」の2つ。IoTについては、大量接続や低遅延など5Gの要素を先取りしたものが本命という位置付けで、「4.5G」として打ち出されている。これらの世代では、動画など大容量のトラフィックを生み出すコンテンツや利用方法も注目されているが、IoT関連は新規に創出される市場ということで、伸びしろも大きいことから、通信キャリアにとっても大きな収益源になると見込む。

 会場ではパネル展示で、「NB-IoT」の商用利用のための開発がグローバルで加速しており、2017年には30以上の商用ネットワークでサービスが立ち上がる様子が示されている。17業種、31社のパートナーが開発を行っており、すでにさまざまなユースケースが登場している。「NB-IoT」は既存のLTE網をIoTセンサーなどに対応させるもので、低速な通信速度ながら、キャリアが構築した通信エリアで利用できるのが特徴。チップセットや通信モジュールは低消費電力、低価格で提供されることも特徴で、3GPP標準になっていることなども合わせて、キャリアが構築した免許が必要な周波数帯(ライセンスバンド)で利用するIoTでは大きく注目されている。

 チップセットやモジュールの開発も進んでおり、ファーウェイ自身も「NB-IoT」の通信モジュールの初期ロットの提供を開始したばかり。2016年中に大規模な出荷を開始する予定という。またIoTモジュールはスマートフォンなどと違い、パートナー企業の製品に組み込んでいくことになるため、各業界、各企業と連携してニーズの吸い上げや評価、組み込むための支援も行っている。

 展示コーナーでは「NB-IoT」を活用する具体例として、シンガポールの港湾でコンテナに取り付ける施錠システムを紹介。これまでは目視でコンテナの施錠が破られていないかなどを確認する必要があったが、ワイヤーロックに「NB-IoT」の通信モジュールを搭載することで確認作業やセキュリティのコスト削減につながるというもの。このほかにも農地向けにセンサーを搭載し情報をアップロードするものや、水道メーター、ガスメーター、ペット用センサー、農地の土壌用センサー、車両間通信のイメージなども紹介している。

5GとLTEの同時利用で20Gbps超え

 5Gの先端技術を紹介する展示では、ライブデモとして4GでMassive MIMOの3.5GHz帯と、5Gの39GHz帯を同時に接続し、通信速度を高速化するデモが展示されている。これはCloudRANとして基地局側のネットワークが協調するもので、5Gの世代では、広範囲をカバーできる比較的低い周波数帯と、広い帯域幅で高速な通信を実現しやすい高い周波数帯が混在することを想定したものになっている。

 このほかにも、自動車の完全な自動運転をイメージした映像が、VRヘッドセットで体験できるコンテンツとして用意されている。4.5Gや5Gの世代で実現できる車両向けのIoTでは、超低遅延の特性などにより、車両間通信や、道路の標識と車両との通信が現実的なものとなる見込みで、カメラの視界や映像に頼らない高度な制御が可能になるとされる。デモではほかの車両や道路から情報を読み取り、走行する様子を体験できる。

ソフトバンク、スマートパーキングで「NB-IoT」をデモ

 ソフトバンクは、同イベントに合わせて、国内では初という「NB-IoT」のフィールドデモを披露した。「NB-IoT」の通信モジュールと車両を検知する近接センサーを組み合わせた試作ユニットが用意され、コインパーキングなどをイメージし、車両の駐車を検知するというデモで、予めスマートフォンアプリで車両の情報を登録しておくことで、駐車する場所を予約したり、駐車すると自動的に課金や時間の計測が始まる様子が確認できた。

 デモの趣旨はパーキングサービスのディテールではなく、あくまで利用イメージ。「NB-IoT」のセンサーを利用することで、専用のゲートウェイ機器を設置したり有線の設備を敷設することなく、コインパーキングなどを柔軟に運営できる。また、ユーザーがより効率的に利用できたりすることが示されている。

 ソフトバンクは現在、IoTプラットフォーム向けの通信規格として、ライセンスバンドかつ3GPP標準として、移動体や固定設備など用途に応じて、Cat.1、Cat.M、NB-IoTの3種類を推進しており、2017年の夏から基地局を順次対応させていく方針。900MHz帯と2.1GHz帯を利用することから、日本全国がエリアになる。

 ソフトバンクではこのほか、発表済みで、導入を開始したばかりのMassive MIMOについても、幕張メッセでデモを実施している。稼働中の商用の基地局を使ったもので、スタッフが持つ16台の端末が同時にダウンロードを行っても、16名合計で約450Mbps、平均で一人あたり約30Mbpsの通信速度が確保されている様子が紹介された。