ニュース

ソフトバンクとみずほ、スマホ活用で個人融資の新サービス

AI×ビッグデータのフィンテック

 みずほフィナンシャルグループとソフトバンクは、スマートフォンやAI(人工知能)を活用した個人向けのレンディング(融資)サービスを提供し、新会社を設立することで合意した。11月に合弁会社が設立される。

 新サービスは、「日本初のスコア・レンディングを提供する」と説明。従来は個人が銀行から融資を受ける場合、その人の勤務先など、基本的な属性情報を元に信用度を定めて貸出額や金利が決まる。今回は、ビッグデータ、AIを組み合わせて、貸出対象にできていなかった層も新たに貸出対象へできるようにする。

 新サービスのブランドやサービス内容は今後検討される。新サービスのスマートフォンアプリでは、スコアが示される。これがユーザーの信用度を示す数値になり、そのスコアにあわせた金利や借入条件が設定される。アプリ上では金利がいつでも確認でき、ユーザーがデータを入力していくとスコアが変動して、あわせて金利や借入限度額や金利が変わる。こうした手続きはスマートフォンだけで完結するようにする。

 みずほ銀行のビッグデータやローン審査のノウハウ、ソフトバンクのビッグデータやAIによるデータ分析などを融合して、融資する際の審査の応諾する範囲を拡大し、競争力のある金利水準を実現する。店舗はなく、スタッフやインフラを最小限にしてコストを低く抑える。新会社の資本金は50億円で出資比率は50%ずつ。

 ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、「今までの貸付、レンディングとは異次元の、新しい時代のフィンテック(Fintech)と呼ぶにふさわしいサービスを展開できるのではないか」と説明。

 みずほフィナンシャルグループ取締役執行役社長グループCEOの佐藤康博氏は、「今までとまったく違うレンディングの世界を作りたい。圧倒的な利便性を持った、まったく新しいブランドを作る」と語った。

みずほの佐藤氏(左)、ソフトバンクの孫氏(右)

質疑一問一答

――フィンテックを活用した融資とのことだが、個人向けに特化するのはソフトバンクが個人に強いということか。

孫氏
 ソフトバンクグループはiPhoneを中心にスマートフォンを提供しており、数千万人のユーザーを抱える。グループでさまざまなビッグデータを持ち、投資先のノウハウもある。今回は企業向けの貸付ではなく、個人向けに特化した形でスタートする。将来的にもう少し拡がる可能性はある。

――「競争力のある金利」は他社よりも低いということか? また貸し倒れへの対策は?

孫氏
 従来であれば20代~30代の預金残高はそんなにない。自分自身、大学卒業から間もないころ、30歳のころはそんなにお金の余裕はなかった。今は少しだけできましたけども。当時は銀行残高1000万円は夢のようだった。一方で(若年層の資金のニーズとして)結婚式や留学資金、引越しの敷金などでお金がかかる。70代~80代になって数千万円か貯まるかもしれないが、「若い頃に余裕があれば留学できた、もっと華やかな結婚式ができたのに」ということはたくさんあるだろう。


 その人が将来いくら稼ぐ可能性があるのか、フィンテックの力で、AIで未来の予測で、貸し倒れリスクを低く抑えながら(融資を)提供できるのではないか。その人の未来の稼ぐ力を予測することで、資金を前倒しで提供するという志なんですね。今まではしたくても技術がなかった。その技術とデータがついに登場した。

佐藤氏
 我々がスタートするにあたって、我々のデータとソフトバンクのデータをあわせれば何ができるかシミュレートした。その結果、銀行のデータ、あるいは銀行が考える貸出しできる範囲が拡がることが極めて明確にわかった。お客さまの属性からすると、貸し倒れのリスクも非常に低い。なぜならば、その方は将来キャッシュフローを生み出す力があるから。これまで対象ではなかった、おそらく若い層が、今回データ処理によって貸出し対象になる。個人の人生を応援するという意味で今までになかったサービス。

 金利は、悪いデータが入っていれば、高くなることが理論的にあるだろう。しかし急に(資金繰りが悪くなり)駆け込んでくる人を相手にしているわけではない。同業他社と比べ、多くのデータをいただくことで、基本的に金利を安くできる。店舗もなくコストが著しく安く、金利に還元できる。

――本当のデータが入力されるかどうかわからない。悪意を持つ人がくるかもしれない。どう対策するのか。

孫氏
 (ソフトバンクが出資する米企業の)SoFiは、起業から3年間で1兆円を超えているが、貸倒率は1%を遙かに下回る。通常、日本のサラリーローンでは、すごい金利で、借りられるのかどうかわからない。今回はフィンテックの代表格であるSoFiの実績から、ビッグデータ、AIで、日本でもできるのではないかというのがそもそもの立脚点。


 ソフトバンクは世界で初めて携帯電話の割賦販売を始めた。5万円も10万円もする携帯電話を分割で販売する仕組みで、最初は貸倒率がものすごく高く、500億円、600億円規模の損失を出した。その結果、携帯電話の販売において、信用をはかるノウハウを実は作りだしている。100万通りくらいのマトリックスで、個人の信用度をコンピューターで瞬時にはじき出している。日本の隠れたフィンテック第1号はソフトバンクではないかと自負している。両社のノウハウで大きくビジネスとして飛躍するのではないかと思う。

佐藤氏
 データの使い方を全部お話はできないが、入力されたデータが整合的かどうか、AIが厳しく判定する。もしウソを入力すると、他の項目との整合性がつくかどうかAIがはじき出す。

――プレゼンテーションの資料で示されたスマホアプリの画面にある数字は貸出額や利率を示すのか。また住宅ローンなど担保のあるローンを提供するのか。それともこれまで消費者ローンとかぶるジャンルになるのか。

孫氏
 画面はまだサンプル。最終形ではない。また仮に同じスコアでも、学なのか、結婚資金、レジャーなのかといった目的によって、融資の金額の枠や利率、支払いの年限が異なる。最初は担保をとらない、ビッグデータによる信用に基づいた貸付になるが、将来的には担保物件があるようなものまで拡大できればいいなと思う。

佐藤氏
 ユーザーに情報を入力してもらうというのが非常に大きな特徴。SoFiのモデルでは、個人が自分の情報を自らいれて、貸出し限度額をあげている。この仕組みは、これから日本が直面する、AI、ビッグデータにおけるプライバシーの問題をクリアしている。これはおそらくプライバシーをクリアするときの大きなソリューションで、貸出しという範囲に留まらないだろうと個人的には考える。スコアレンディングの最も革命的なところだと感じている。

孫氏
 両社あわせて数千万人の顧客がいるが、勝手に使って、勝手にプライバシーをのぞき見るような形は問題がある。しかし、金利を安くしたい、借入限度額を多くしたいとユーザーが考えて、「このデータを活用してください」と要望を出し、それに基づいてAIが答えを出す。プライバシーに配慮しながら最強の結果をだしていく。ウソの入力をしても、手入力のデータは限られる。それよりも何百倍もの情報をさまざまなデータベースから、ユーザーの要望にあわせ吸い上げる。同意のもとというのが重要。

佐藤氏
 それらのデータはあくまで合弁会社が使うもの。みずほとソフトバンクが使うことはない。