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ソフトバンク孫氏、株主総会で続投宣言「やり残したことがある」

 ソフトバンクグループは、第36回の定時株主総会を開催した。前日の21日には、後継者候補としていた副社長のニケシュ・アローラ氏の退任が電撃的に発表されており、孫氏のトップ続投宣言に注目が集まった。株主総会の会場への出席者は2191人。議案はすべて承認・可決された。

ソフトバンクグループ 代表取締役社長の孫正義氏

 アローラ氏は22日開催の株主総会の終結をもって退任することなどから、総会には欠席することが冒頭に説明された。ただし、株主総会で事業報告が開始される前に、アローラ氏自ら、退任に関して挨拶する時間が設けられた。

 株主総会では、記者向けの決算説明会などで解説されている事業や投資への取り組みや成果が、ソフトバンクグループ 代表取締役社長の孫正義氏から株主向けに、改めて解説された。

 また、5年前に策定した新30年ビジョンや、目前に迫っているとする「シンギュラリティ」(コンピューターが人類を超える日)に対する熱意も語られ、会場の株主からの質問もこれに呼応する形で、直近の課題よりも孫氏が描く未来に多くの質問が集中した。

 本稿では、株主総会中の孫氏の説明や質疑応答でのコメントを合わせて、孫氏がトップ続投を決めた経緯や、続投への決意を中心にまとめている。

孫氏はベンチャー企業に触れて「若返った」

 冒頭にのみ舞台袖に登壇したアローラ氏は、「グローバルテレコムのあり方を学んだ。ヤフーはアメリカを超える成長を見せた」と、ソフトバンクグループの副社長やヤフーの取締役を務めた経験を振り返り、「孫社長はパラダイムシフトを見つける能力に優れ、人類への貢献について学ばせてもらった。スプリント事業(の復活)への決意についても、ボーダフォンと同じで、成功することを祈っている」と今後への期待も語った。

株主総会には欠席ながら、冒頭で挨拶を行ったニケシュ・アローラ氏

 「2年前に、孫社長から会社の変革の種まきについて、仕事を与えられた。重要なテーマであり、人類が今後300年生き続けるためにはどうするのかということだった。何時間も話し合い、事業会社と投資会社の集合体であるべきと結論付け、これがソフトバンク2.0になった。重要な作業は3つあり、仕組み、人材、実行力だった。2年前に事業を再構築してソフトバンクグループを作り、その配下に事業会社を置いた。優秀な人を見つけて採用し、投資に成功して投資のチームも結成できた。実行力という意味では、(孫氏は)トレンドを見出す素晴らしい能力を持っている。インドも10年前の中国だということで投資した。投資するだけでは儲からない。売却が必要だが、この6週間で約180億ドルを生み出せことは誇りに思っている。(今後の)基盤を作れたのではないか」。

 アローラ氏はまた、孫氏が続投を決意したことについて「(投資の案件などで)若い創業者に会う中で、孫社長も若返ったのではないか。情熱とエネルギーを取り戻した、と考えている」と印象を語り、「決断を尊重する。今後もサポートしていきたい」と締めくくった。株主総会の会場からは拍手が送られた。

30~40年の間に起こる大変革を前に「やり残したことがある」

 孫氏は株主総会の中で、自身の進退を決めた理由について、「シンギュラリティ」が影響していることを語っている。

 「シンギュラリティ」とは、人工知能(AI)が進化し、今後30~40年の間に、コンピューター(AI)が人類を超える日、技術的特異点のことを指している。IQにして1万とも予想するシンギュラリティを迎えたAIが、ロボットやIoTの普及とあいまって、さまざまな分野で人類を変えていく、というビジョンが孫氏から熱く語られた。

シンギュラリティについて

 孫氏は「シンギュラリティを迎えるにあたって、私はまだもう少し、やり残したことがある」と語る。

 「ニケシュに声をかけた時、私は55~56歳で、あと4~5年あるから、(その間に)バトンを渡さないと、と思っていた。シリコンバレーでは60代は化石のようだ。GoogleもFacebookもみんな若くてかっこいい。近々、60代になるが、僕がソフトバンクの成長のボトルネックになってしまう。老害とか言われる前に、はやくバトンを渡していかないといけない。本当にそう思っていた。これは社員にも言っていなかったが、60歳の誕生日でパーティーをやって、そこで初めてニケシュが明日から社長になると発表しようと、本当にそう思っていた」

 「だけど、(60歳まで)あと1年になっちゃった(笑)。俺はもう十分枯れたか? と考えた。欲が出てきた。シンギュラリティがやってくる。もうちょっと、やり残したことがある。ニケシュには申し訳ないと」。

 なお、孫氏の後継者問題については、株主からもいくつか質問や意見があがった。孫氏は今後30~40年で迎えるとするシンギュラリティのために、あと10年近くは続投したいと表明する。ある株主は「孫さんの後継者は、人類にはいない。シンギュラリティは(孫氏が続投する)5~10年以内には実現しない。30年後は孫さんは90歳。つまり後継者は(AIで)ロボットの可能性が高い。そう宣言されてはどうか」と質問。

 孫氏は「19歳で考えたのは、50代までにビジネスモデルを完成し、60代、60歳でバトンを渡そうということ。今も、69歳までにはCEOを譲らないといけないと思っている。ニケシュについては悩み、髪の毛は抜け、白くなった。飛行機のトイレで見て気がついて、びっくりした(笑)。彼が一番の被害者。自分のわがままで、60歳で交代のつもりが、もうちょっと続けようとなった。彼には、本当に申し訳ないことをしてしまった。少なくとも最低5年、おそらく10年近くは、社長でいきたい。それが今回の決意」とまとめている。

 孫氏は、社長の続投を決めた時期についても語り、「確信したのはこの数週間。取締役や社外取締役の3名にも貴重なアドバイスや指導をいただいた。よく相談しながら決めた」とした。

 なお、アドバイスを送ったという社外取締役のうち、柳井正氏(ファーストリテイリング/ユニクロ)は、「僕が申し上げたのは、『孫さんみたいな人はいない』ということ。60歳にもなっていないのに引退? 冗談じゃないぞ、と申し上げた(笑)」とざっくばらんに語る。続く永守重信氏(日本電産)は「年齢の話が出てますが私は古希(70歳)を迎えてまして」と笑いを誘うと、「取締役会では(孫氏に)120までやれと。(年齢の問題ではなく)意欲の問題で、60になったからやめるとか、血迷っているのではないかと(笑)。年齢は七掛けでいい。私は50歳だ。60歳になったらやめるとか言ってましたけど、私は絶対にやめないと思っていた。69歳でやめる? また10年やりますよ! そういう経営者でないと、こんな大きな会社にはならないですから」などと株主に語りかけ、会場は笑いに包まれた。

社外取締役の柳井正氏
社外取締役の永守重信氏

国内ソフトバンクはもう保守的?

 株主からの質問では、ソフトバンクの国内の通信事業について、「ホワイトプランなど、以前は攻めの姿勢が見えていた。今は料金の改定でも保守的で、他社を追随し、3位でいいというような感じだ。スプリントばかりに集中している。利益率が世界一なら、(国内の)シェア3位ではなく1位を狙ってもらいたい。基本料金を下げるとか、チャレンジャー精神をもって、国内の運営をしていただきたい」と意見が出された。

 これにはソフトバンク代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏が回答し、「現在はY!mobileとの2ブランドでやっている。ワンキュッパなどでスマホの新規シェア向上を図っている。決して激しくやっていないということではない。ソフトバンクひかりは昨年170万件の純増で、今年は300万件を見込む。手堅く利益をあげる。これにはコミットするが、数を稼ぐのも、思い切ってやっていく」と、規模の面でもY!mobileブランドを活用しながら展開していく方針が示された。

2ブランド戦略を語る宮内謙氏