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ソフトバンクグループ2015年度決算は増収増益

米スプリント回復に道筋、事業と投資の両輪に自信

 ソフトバンクグループは2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績を発表した。売上高は前年比8%増の9兆1535億円、調整後EBITDAが前年比19%増の2兆4389億円、営業利益が前年比9%増の9995億円で、増収増益になった。当期純利益は、前年度のアリババ上場の一時益の反動で、前年比29%減の4742億円。アリババの一時益の影響を除くと前年比23%増になるとしている。

ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏
ソフトバンクグループ2015年度連結業績

米スプリント回復に道筋

 決算会見に登壇したソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は、国内や米スプリントの通信事業、ヤフーの業績といった、主体となって取り組んでいる「事業資産」と、アリババや印Snapdealなどの「投資資産」の2つを成長の両輪として掲げており、スプリント以外は順調に利益を上げ、成長している様子を解説した。

 スプリントについては業績の回復を図る段階だが、買収前のスプリントが採用していた米国会計基準に照らし合わせると、9年ぶりの黒字になったとし、コスト削減を筆頭に、ネットワークの強化や、その結果としての解約率の低下、調整前EBITDAが約2000億円と大幅に改善し、業績の回復に道筋がついた様子に自信をみせた。

ベンチャーへの投資はこれからが本番

 アリババに代表される投資事業は、中国やインド、アジアなどで「次のジャック・マーが生まれつつあると感じている」と投資機会が拡大している様子を語り、「今は投資側のセンティメントが曇ってきている。投資家の気持ちが揺らいでいる。しかしテクノロジーは進化している。大いなるチャンスの到来だ。我々は有利なポジション。今までは練習ラウンドだ」と、今後さらに拡大させていく方針。

 孫氏からは、eコマース分野への投資では、アリババの取扱高がウォルマートを抜き60兆円に達したことや、インドのSnapdeal、韓国のCoupang、インドネシアのTokopedia、インドのOyoがいずれも大幅に業績を伸ばしている様子を紹介。

 タクシーなどトランスポーテーション分野では、評価額が日本円で6~7兆円(未上場)と言われる米Uberを引き合いに出し、同様の事業をインドで展開するOLA、東南アジアで展開するGrab、中国の滴滴(ディディ)がすべてソフトバンクグループであることをアピール。特に滴滴は中国の乗車数だけでUberを抜き、世界一の規模になっているとした。

 孫氏はこうしたソフトバンクグループのベンチャーキャピタルとしての側面でも、「投資のトラックレコード(実績履歴)は四十数%のIRR(内部収益率)で伸びている。そんなベンチャーキャピタルがありますか? 世界で最大のリターンを得たベンチャーキャピタルとしての能力、これはますます意気軒昂で、ここからがスタートだ! と燃え上がっている」と自信や意気込みを語っている。

実質0円禁止「日本もいろいろな体験をしてみるべき」

 質疑応答の時間には、「実質0円」が禁止されたことによる、事業への影響が聞かれた。孫氏は「これはまだ新しい枠組み。いろんな影響があり、別の競争が始まる。コメントは時期尚早」としたほか、「ユーザーの数はゼロサムで、端末を長く使うサイクルに入っている。端末ではそもそも儲けはとっていない」などと回答。また、「売り方に対する業界の実質的な規制で、日本もいろいろな体験をしてみるべきだ」ともしている。

 熊本地震への対応については、「東日本大震災では責任を痛感した。結果、設備投資を圧倒的な規模で行い、設計も真剣に見直した。今回、一番早く(エリアが)復旧したのがソフトバンク。前回の震災とは結果が違う」とした。停電や伝送路断などで停波した基地局の数が、ほかのキャリアより一桁多かった点については、「基地局の数が他社より圧倒的に多い」とし、900MHz帯の免許の獲得前に2.5GHz帯などで数を打ってエリアを構築したことなどが影響しているとした。

 質問では、いわゆる「パナマ文書」で明らかになった情報の中に、ソフトバンクのグループ2社の名前があることも指摘された。孫氏は「今朝、テレビで見て驚いた」とした上で、孫会社など末端の2社から合計で2億6000万円程度の出資があったとし、「赤字で終わった。税を払うまでの業績にも満たなかった」と2社の顛末についても語った。なお、孫氏の個人資産については、租税回避地を利用するといったことはしていないとし、「資産は、あまり興味はない。今は節税よりも仕事」としている。

太田 亮三