「DIGNO ISW11K」開発者インタビュー
国内向け初のAndroidで全部入り+WiMAXを実現
京セラからスマートフォン「DIGNO ISW11K」がリリースされた。京セラとしては国内初のスマートフォンであり、薄さ約8.7mmというKDDIでは最薄ながら、約4.0インチの大画面、IPX5/IPX7等級の防水で、ワンセグ、FeliCa、赤外線をサポート。さらにWiMAX対応でテザリングも可能という、薄さの中にまさに“全部入り”を実現しているのが特長だ。
その狙いや苦労について、京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 国内商品企画部 商品企画課 PM1係 黒木薫氏と、同事業本部 デザインセンター デザイン戦略課 八谷英俊氏にお話を伺った。
■初めてスマートフォンをもたれる方にも使いやすく
黒木薫氏 |
――京セラ国内初のAndroid端末になるわけですが、現状の反響はいかがですか。
黒木氏
説明会を開催したのですが、約8.7mmの薄さにWiMAXなどいろんな機能が搭載されている点や、有機ELが綺麗な点など、かなり好評をいただいているので、手応えはありますね。
――それでは、商品の狙いやコンセプトをご紹介ください。
黒木氏
今回、京セラとして国内初のスマートフォンを出させていただくわけですが、2011年の秋冬モデルということもあり、ターゲットとしては初めてスマートフォンを持たれる方を想定しております。年代としては幅広く、20代~40代の方とし、必要な機能が一通り揃っており安心して持っていただけるような端末をコンセプトにしました。京セラは薄型を得意としているのですが、今回は約8.7mmという薄さを実現し、その薄さの中にすべてを詰め込んだオールインワンのスマートフォンに仕上げています。
――今回のブランド名に「DIGNO(ディグノ)」という名称がつけられているのですが、これはどういう意味なんでしょうか。
黒木氏
「DIGNO」というのは、ポルトガル語で「価値のある」という意味があります。今回、京セラがスマートフォンのブランドを立ち上げるにあたり、ユーザーの方に、価値のある、親しみやすさを持っていただける端末を目指したいという思いを込めて、「DIGNO」という名前をつけさせていただきました。
――このブランド名は、今後も京セラのAndroid端末に使われていくことになるんでしょうか。
黒木氏
そうですね。たとえば「HONEY BEE」のように、すでにブランドが確立しているようなものを除き、今後の京セラのスマートフォンのブランド名として、展開していこうと思っております。
――ワンセグやおサイフケータイ、防水、さらにはWiMAXと、初回から国内向けの機能をフルにサポートするのは結構大変ではないかと思うのですが、実際はどうでしたか。
黒木氏
確かに今回は全部入りに加えて、WiMAXにも対応しているのですが、Androidの取り組み自体既に海外で展開していますし、今までフィーチャーフォンでいろいろ培ってきたノウハウや技術はありますので、今回の端末にはそれらを総動員しました。
――通常の3GのみのAndroid端末ではなく、WiMAXを積んだのはなぜでしょうか。
黒木氏
スマートフォンということで、かなりリッチなコンテンツが使われますよね。実際トラフィックがかなり上がっているという話もありますし、その通信速度というのは、ユーザーの方にとってはかなり大きな影響力を持ちます。今回、使っていただきやすい端末とは何か、と考えたときに、やはり通信速度は大事という考えから、KDDIさんの最新のサービスのWiMAXは外せないだろうという結論になりました。
――WiMAX対応端末ということで、電池の持ちが心配になりますが、電池の持ちを良くするような工夫は何かされていますか。
黒木氏
はい。機能的には、「省電力ナビ」を搭載しています。一括で省電力設定ができたり、あるいは自分でちょっとカスタマイズしたりできるのですが、起動中のアプリケーションの管理も可能なので、知らないうちに起動しているような使わないアプリを消すことで、無駄な電力消費を抑えられるようになっています。ディスプレイも有機ELですが、有機ELは、画面によってかなり消費電力が抑えられるという特性がありますので、そういう面を考慮しています。
――全部入りということで、ユーザーとして気になってくるのが、OSのバージョンアップをどこまでサポートしてくれるかという点だと思うのですが、御社としてはどうされる予定ですか。
黒木氏
今のところ未定ですが、市場の動向を見て検討は必要と考えております。
■デザインについてのこだわり
八谷英俊氏 |
――続いてデザインについてお伺いします。今回はわりとカラーリングも特長的な感じがするんですが、カラーリングの狙いやターゲットについて教えてください。
八谷氏
グラファイトブラックは皆さんに受け入れてもらえるスタンダードな色としてご用意しました。ブロッサムピンクは女性を意識していまして、ラメやガラスのフレークをいっぱい入れて、女性が好む、かわいらしいキラキラしたピンクを目指して作りました。オリーブグリーンは今回のプロモーションカラーですが、非常に深みがあるのに、輝度があるグリーンを表現しています。イメージとしては、太陽が当たって、濃く繁ったオリーブの葉ですね。端末の正面を見ただけでは、グリーンとわからないというのもポイントで、正面にはツヤを消した金属感を合わせることで、非常に上質な配色を実現しています。これは男性、女性というターゲットを絞ったわけではなくて、個性的な色、スマートフォンに今までなかったような色を求めているユーザーの方をターゲットに考えました。背面に加え、側面も、3種類それぞれ色だけではなく、質感も異なるように表現しています。
――今回発表になったKDDIのスマートフォンの中では一番薄型なわけですが、苦労されたところはありますか?
八谷氏
物としてのありようというか、画面の位置などのバランスの取り方に一番苦労しました。薄型にするとどうしても内部に搭載している部品の関係で画面が上または下に極端に寄ってしまって、ユーザーの方にとって使いづらい端末になってしまいがちなので。非常に薄いため今回は企画と設計とが一緒になって、現在のデザインに落とし込みました。
また、防水なので水滴がついて滑りやすくなっても持ちやすい形状になるよう考慮しています。薄型化すると角が角張ってしまいやすいですが、ラウンドを設けることで、薄いけれども手になじむようなデザインとしています。
――薄くなると、バッテリーも影響を受けそうな気がするのですが……。
黒木氏
薄さを実現するために、バッテリー自体も薄いものを新規に用意しましたが、
連続通話時間は420分を確保しており、他社と比べても遜色ないレベルと考えております。
――フロントの3つのボタンは結構細いですが、この形状にしたのはなぜでしょうか。
八谷氏
スマートフォンなので、やはりコンテンツが主役じゃないかと考えたためです。デザイン的には、ハードキーは個性をいろいろ出しやすいところなのですが、あえてそこで個性を出さずにコンテンツを主役にしようと考えて、この黒い画面になじむようにできるだけ細くしました。その代わり、凸量を最大限出すことによって、押しやすさを考慮しています。
■フィーチャーフォンの人気機能をスマートフォンでも
――今回のモデルでは、フォント切り替えができるなど、フォント周りがリッチな印象があります。どういった狙いがあるのでしょうか。
黒木氏
フィーチャーフォンでもフォント切り替え機能は入れており、丸っぽい文字にするなど、結構好みに合わせて切り替えできるので好評でした。スマートフォンでも、フィーチャーフォンの使いやすさを継続していきたいと考えたので、対応させていただきました。細かい部分ですが、こだわっているポイントです。
――なるほど。そのほかに、UIや画面デザインでこだわっている部分があったらご紹介ください。
黒木氏
機能的なところでは、「すぐ文字」という機能を入れています。京セラのオリジナル機能で、待受からすぐに文字入力ができ、いろんな機能に連携できるというものです。思いついた言葉、フレーズをすぐに入力できて、何をやるかは後から選べるのですが、こちらもフィーチャーフォンで好評だったので、スマートフォンでも実現させました。ロック画面にアイコンを用意していますので、解除と同時にすぐ起動できるというのが特長です。
あとは入力方法として、手書き入力もサポートしています。枠がないので、連続で複数文字を入力でき、予測変換が可能になっていますので、思いついたことをすぐ手書きで残せます。
――ここ最近1年くらいで、日本の端末のトレンドとして、手書き入力が少しずつ増えている印象ですが、御社として手書き文字認識機能を入れた理由を教えてください。
黒木氏
幅広い方に使っていただくためですね。今まで入力方法は携帯電話の入力方法はテンキー1つでしたが、スマートフォンならではの入力しやすい方法を提案できるのではないかと。分かりやすく使いやすいのは手書き入力かな、と考えました。
――プリインストールされているアプリの中で、ほかにこだわって用意されたものがあったら教えて下さい。
黒木氏
我々独自でご用意させていただいているアプリとしては、先にご紹介した「省電力ナビ」がありますが、フィーチャーフォンから使われる機会が多いということで、カメラ系のアプリも充実させました。線画風とかミニチュア風とか、そういうフィルター効果をかけた写真が撮れる「フィルターカメラ」ですとか、撮った写真からオリジナルのデコレーション文字を作れる「とるデコ」ですとか、顔写真に美肌効果を適用したり、目を大きくしたりして楽しめる「フェイススタジオ」というアプリを用意しています。また、使いやすさを求めた機能としては、「ドキュメントビューワー」や「ファイルマネージャー」もあります。
そのほかに、今回綺麗な有機ELを搭載しているということもあるので、ライブ壁紙で当社オリジナルのものを1つ作っています。「KAMISHIBAI(かみしばい)」というのですが、これが設定でいろいろできます。スライドショー的に壁紙を出してくれたり、タイル状にいろんな写真をレイアウトしてくれて、タッチしたところが変わるとか、画像が変わるとか、壁紙なのにタッチ感があって、遊べるものです。
――スマートフォンビギナーがターゲットなわけですが、ウイルス対策やセキュリティ問題などはどうされているのでしょうか。
黒木氏
弊社独自の機能ではないのですが、KDDIさんのサービスとして、「3LM Security」「ウイルスバスターモバイルfor au」「リモートサポート」などがご利用いただけます。
――その他に、こだわったところや、苦労された点があったら教えて下さい。
黒木氏
あまり目立たない部分ですが、今回ちょっとRAMが大きめで、1GBにしています。キャッシュが大きいので、YouTubeなどを見てから巻き戻したとき、キャッシュがあるので通信せずにすぐ見られますね。
――サクサク感には、かなりいい影響がありそうですね。
黒木氏
そうですね。ソフト的にチューニングをいろいろしていますし、RAMも大きいので、サクサク動きます。
――最後に、読者に一言お願いします。
黒木氏
初めてスマートフォンを持っていただく方が、満足して安心して使っていただけるよう、FeliCa、ワンセグ、赤外線はもちろん、防水、さらにはWiMAX、GSMに対応したオールインワン端末を目指しました。さらに「ルミナスディスプレイ」という大きな有機ELも搭載していますので、どなたが持っていただいても安心して満足いただける端末に仕上がったと思います。ぜひとも店頭などで試していただき良さを実感いただければありがたいです。
八谷氏
みなさんに持っていただきたい、いろんな方に使っていただきたいという思いがあるので、非常にシンプルでベーシックなデザインにまとめつつも、心地よい個性といったようなものを表現できるようデザインしています。店頭で手に取っていただければ嬉しいです。
――本日はどうもありがとうございました。
2011/11/29 14:35