インタビュー

iPhone 11登場後のスマホケース、何が売れ筋? 「UNiCASE」のCCCフロンティアに聞く

 2019年12月、スマートフォンケース事業を展開するCCCフロンティアが年間を通じた人気スマホケースランキングを発表した。

 実店舗を構え、さまざまなメーカーの商品を取り扱うことに加え、自社製品(プライベートブランド、PB)も開発している同社から見て、スマートフォンケース市場は今、どうなっているのだろうか。

左から上田氏、森氏、矢原氏

 CCCフロンティア 営業部シニアマネージャーの上田真士氏、マネージャーの森克弘氏、CCCフロンティアデザイン社長の矢原拓氏に聞いた。

iPhone 11シリーズ発売から3カ月、これまでの動き

 日本で一番人気のあるスマホと言えばiPhone。その最新モデルであるiPhone 11シリーズが登場した2019年9月から約3カ月が経過した。

 この3カ月でスマホケース市場はどんな動きを見せたのか、上田氏は「9月のiPhone 11シリーズ登場後はやはり新モデル向けのケースが人気。その後、最近になってiPhone 8/7向けのケースも伸張してきています」と語る。

上田氏

 iPhone 11シリーズ発売当初は、iPhone 11/11 Pro向けケースが4割弱を占めており、次いでiPhone 8/7向けケースが売れていた。直近の販売データ(ケース、保護フィルムなど含む)を見ると、CCCフロンティアが取り扱うアイテムのうち、iPhone 11向けの製品が占める割合は横ばいだが、次いでiPhone 8/7向け、iPhone 11 Pro向けとなっている。iPhone 11 Pro向け製品が落ち着いた一方で、iPhone8/7向け製品が伸びてきている、というわけだ。

 矢原氏も「スマートフォンケースの売れ行きは、端末販売の動向に近いのでは」と分析する。とすれば、iPhoneシリーズも、新機種登場直後は新しいモデルに手を伸ばす人が増えるものの、旧来のモデルも依然として根強い人気を誇る、と言えそう。

スマホケースのトレンドは

 ではいったい、どういうケースが人気なのか。

 矢原氏は、売れ筋のモデルのデザインを踏襲するケースと、新たなデザインを企画・開発するケースがあると指摘。

 以前は、いわゆる手帳型ケースは人気だったとのことだが、現在はiPhoneの大画面化が進んできたためか、いわゆる背面型の人気が高まった。

 デザイン性だけではなく、機能性もスマートフォンケースの重要な要素で「時代の流れで耐衝撃が売れている」と矢原氏。これにはスマートフォンの買い換えサイクルの長期化や、ディスプレイガラスの破損を防ぎたいという意識の高まりがあるのでは、と分析する。

矢原氏

ゼロハリバートンケース、開発の裏側

 去る2019年12月26日、CCCフロンティアは、スマートフォンケース販売事業「UNiCASE」における人気商品年間ランキングを発表した。

 オンラインストアで一番人気だったゼロハリバートンブランドの手帳型ケース「ZERO HALLIBURTON Hybrid Shockproof Flip case」は、ZERO HALLIBURTONとUNiCASEのコラボ商品。矢原氏は、「どの商品も大切だが、特にこの製品には個人的な思い入れがある。狙い通りにハマった商品」と手応えを感じている様子。

「ZERO HALLIBURTON Hybrid Shockproof Flip case」

 同社では、ゼロハリバートンブランドの商品自体は、iPhone 5時代からリリースしてきた。アタッシェケースで知られるブランドだけあって、当初はアルミ素材を用いたこともあったが、iPhoneにApple Payがサポートされるなど、通信環境への配慮が必要となり、樹脂素材へ切り替え。

 先述したように時代の要請から、実効性のある耐衝撃性も必須となり、今ではMILスペック(米国防総省の物品調達規格、タフネス性能を示す)まで備える仕上がりとなった。

 さらに2019年の1位になった商品は、手帳型のような機構、つまり背面に加えて、ディスプレイ側も覆うカバーを備える製品とした。しかも、閉じた状態ではスキマを感じさせないピッタリした仕上がり。

 完成品を見れば、ピッタリした仕上げも当然のもの、と消費者としては受け止めてしまうが、開発サイドにとっては苦労のたまものだ。矢原氏によれば、iPhoneの画面に保護フィルムが貼られること、ICカードなどを入れたいという要望に応えるためスリットを設けていることから、ケース単体での開閉だけを考えると、実利用時にはスキマが生まれてしまいかねない。

 開閉機構には柔らかい樹脂素材を採用し、ある種の遊びを設けることで、ケースデザインとしての一体性を生み出しつつ、ユーザーの利用シーンを損なわない余裕を持たせた一品になったのだという。

女性に人気「Cross Body Case」の仕掛け

 同じくUNiCASE2019年ランキングで2位になった「Cross Body Case」もまた同社の製品。「男性ユーザーは気に入った商品であれば手にしていただけるが、女性ユーザーは価格にもシビア」(矢原氏)という点も踏まえ、3800円(税抜)という価格で販売されている。

Cross Body Case

 PUレザーを用いて質感をアップし、ファッション性を備えた仕上がりながら、長さを調節でき、肩掛けまでできるストラップを備える。それでいてMILスペック準拠というタフネス性も備え、iPhoneの破損を防ぐ。ミラーも備え、カードを入れられるスリットも用意されるといった特徴もある。

 上田氏は「長さを調節できる肩掛けストラップがポイント。また店頭に立ってお客さまの声を聞いてみると、『ディスプレイが割れないようにしたい』というご要望も多いのです」と説明。そうしたニーズを踏まえて開発した商品であり、CCCフロンティアにとっても「肝いりの商品」(矢原氏)という。

長さを調節できる肩掛けストラップ

 Cross Body Caseは、TPUという柔らかめな樹脂素材と、ハードなポリカーボネートを組み合わせた。側面には、柔らかなTPUが用いられており、そこにはメッキ処理も施された。

 肩掛けのストラップを備えるスマホケースは数多くあるが、上質さを演出するためにも、メタリックな雰囲気になるメッキ処理は必須と判断したものの、矢原氏は「生産面ではとても難しいところがある」とコメント。開発時には、いわゆる歩留まりという面でも大きな課題があったようだが、それを乗り越えて商品化にこぎ着けた。

人気のiFaceシリーズ

 自社製品が3割、残りが他のメーカー製品を仕入れて販売するUNiCASEの中でも、実店舗での人気ランキング1位となったのは、「iFace」シリーズの「iFace Reflection」だ。

 iFaceシリーズは、10代女子を中心に高い人気を誇るシリーズ。着せ替えるように楽しむ人もいるよう。さまざまなデザインを誇るシリーズで、「iFace Reflection」は衝撃にも強く、透明な背面を活かして写真やシールをスマホ側に貼って楽しむ人も多いと森氏。

まさかと思ったグリーン

 さまざまなデザインが求められるスマートフォンケース。だが製造する側にとって、どれくらい製造するかは大きな課題のひとつ。そうした製造時、悩む要素のひとつにカラーバリエーションがある。

 これまで人気のカラーはベージュ、その前がネイビーで、鉄板と言えるカラーはブラックやレッドなど“濃い色合い”のものだったそうで、グリーンは未体験とも言えるほど、人気がさほどないカラーだった。それでも、昨今、社会的にアウトドアへの関心が高まっていることなどから、「Smooth Touch Hybird Case」というスマートフォンケースで、あえてグリーンを用いたケースの開発を決定。

Smooth Touch Hybird Case

 新型iPhone本体がどんなカラーバリエーションになるか、CCCフロンティア側は事前にはわからなかったそうだが、いざ蓋を開けてみると、新型iPhoneのボディカラーとマッチする格好となり、発売から人気が出たという。

 iPhone 11シーズンにあわせた商品開発において、CCCフロンティアではグリーンを用いたケースを投入した。そしてiPhone 11が発表されてみると、iPhone 11 Proシリーズで「ミッドナイトグリーン」が登場し、矢原氏は「まさかと思った」と驚きを隠さない。

 「前例がなかったカラーバリエーションだったが、サンプルをいくつも作り、社内で議論を重ねて開発を進めた。確実に売れる保証はないが、こうした経験値を積み重ねれば、次に活かせる」と矢原氏はコメント。

 一方、昨今のスマートフォンは、カメラが複数搭載される多眼化がトレンド。iPhone 11 Proシリーズもまたカメラ周辺で大きな変化が加わった。矢原氏は「本来ケースはスマートフォン本体を守る役割がある中で、露出する部分が増えることに違和感はあった」と率直な感想。また、製造上どのような影響が生まれるのか、新しい設計はチャレンジだったようだ。

これからの商品ラインアップは

 ここまで2019年のスマートフォンケースのトレンドや、開発にまつわる背景を聞いてきた。

 では今後はどうなるのか、UNiCASEはどんな取り組みを進めるのか。

 森氏は「AirPods Proが登場したことで、当社も対応ケースを投入します。完全ワイヤレスイヤホンはトレンドのひとつで、今後、新たな取り組みも進めたい」と解説。さらに、iPhone 8/7のような旧来の機種の人気が衰えないことから、そうした機種向けのラインアップにも注力するという。

森氏

 さらにユニークな商品として、森氏は植物由来のプラスチック素材を採用したケースも紹介。こちらは海外メーカー製のケースとのことで、いわゆるSDGsやサステナビリティといった考え方をスマートフォンケースに採り入れた格好だ。

植物由来のプラスチック素材を用いたケース

 バイヤーでもある上田氏は「長くiPhoneケースを手がける、さまざまなメーカーさまの製品が楽しみ」とコメント。定番となった人気シリーズの新たな展開に注目しているようだ。

上田氏が注目アイテムとして挙げたiPhone 11 Proのカメラ周辺をデコレーションするシール。カメラの多眼化でデザインが変更されても、ユーザーの多いiPhoneだからこそ新たなアイデアのアイテムが登場しやすいようだ