ヤマト運輸、携帯と連携した新ドライバー支援システム


「See-T Navi」の車載システム

 ヤマト運輸は、日本電気(NEC)と協力し、新しいセールスドライバー支援システム「See-T Navi」(シーティーナビ)を開発した。3月より集配車に順次搭載される。

 ヤマト運輸では、1月27日に「次世代NEKOシステム」の導入を発表、集配にかかる情報をすべてデジタル化するなど情報インフラの整備を進め、これまでよりも届け先のユーザーと連携できるような、新サービスの提供を明らかにしている。

 2月25日には、次世代NEKOシステムの一環として、NECと共同で開発した車載システム「See-T Navi」が発表された。これは、社内の情報システムと車載システムを融合し「輸送の見える化」を実現しながら、拡張性を持たせて将来のシステム・サービスにも対応可能とするもの。

 1次フェーズとして導入される車載システムは、セールスドライバーの支援機能として、運転内容や運行エリアについてGPSと連携して各種の警告を行う。また、ドライブレコーダーとデジタルタコグラフを一体化した機器を搭載しており、1日の運行内容を記録。業務終了後には、燃費や安全運転といった詳細な運行内容を確認できる。また、これらの運行データは、各営業所だけでなく支店などからも車両1台単位で確認できる。

 セールスドライバーは、各営業所から出発する際に、携帯電話とBluetoothを利用して最新のデータをダウンロードし、これを車載システムに転送し業務を開始する仕組み。車載システムにはGPS、Bluetooth、無線LAN、SDカードスロットが用意されているほか、タッチパネルによる操作が可能になっている。ディスプレイに地図は表示されないが、予め登録された地域に入ると「危険エリア」「バック箇所外」などの内容を音声で警告するほか、エンジン回転数や速度についても基準を上回ると警告を行う。

営業所で操作するソフトの画面携帯電話はすでに導入しているKDDIの端末を利用。BluetoothやQRコードで車載システムと連携する
タッチパネルディスプレイの端末と、ドライブレコーダー・デジタルタコグラフ一体型機器が連携する「See-T Navi」車載システムの構成
「See-T Navi」システム全体のイメージ帳票は即日可能で、過去の運行データとすぐに比較できる
あらかじめ地図データに情報を登録することで、車載システムが警告などを行う携帯電話を経由して営業所のサーバーから車載システムにデータを転送する

 同社では、運転操作が「見える化」することで具体的な個人指導が可能になるとしているほか、安全運転、CO2排出削減など環境に配慮した運転が行えるとしている。「See-T Navi」は2010年3月末までに約6000台の集配車に搭載される見込みで、2010年度末までに全集配車(3万2000台)への搭載を予定している。

 「See-T Navi」では拡張性も特徴のひとつで、今後はソフトウェア、周辺機器を増設することで各種機能の追加が可能になっている。例えば、車載システムで取得する気象情報、渋滞情報を公共機関に提供したり、集荷時点でデータを送り、詳細な配達時間を電子メールで案内するといったサービスも検討されている。

「待たされるストレスをなくし、生活スタイルにあわせていく」

 2月25日に都内で記者向けの発表会が開催され、ヤマト運輸とNECから同システムの説明とデモンストレーションが披露された。ヤマト運輸 代表取締役社長の木川眞氏は、「安全とエコを観点にした。最終的にはお客様の利便性を飛躍的に向上させる」とドライバー支援システムのコンセプトや将来の発展性を説明し、「See-T Navi」が同社の大規模なIT戦略に直結したシステムであるとした。木川氏は、「現行のシステムでお客様の軒先まで到達した。次期システムでは、お客様の中に入っていく。これは、法人・個人を問わず、コミュニケーションをするということ。受け取る際に待たされるストレスをなくし、生活スタイルにあわせていく」と語り、次世代のシステムでさらに柔軟な宅配システムを構築する方針を明らかにした。

 NEC 執行役員の木下学氏は、「ある意味でパソコンのような車載システムで、半年という短い納期の中で、全社をあげて取り組んできた。業界初、世界初といっても過言ではないシステム。ITを使って環境社会を実現するとともに、今回のプロジェクトを成功させて、ヤマト運輸のデジタル化計画に寄与できれば」と語り、総合的な開発力で応えていく方針を示した。

ヤマト運輸 代表取締役社長の木川眞氏NEC 執行役員の木下学氏
実際の集配車に搭載された「See-T Navi」の車載システム地図は表示されず、運行状況に合わせて音声で案内を行う
集配車は環境に配慮したハイブリッド型。将来的には電気自動車の導入も検討されているという

 



(太田 亮三)

2010/2/26 06:00