本日の一品

久し振りに懐かしいバイナリーウォッチを買った!

 毎日身に着けて持ち歩くことが当たり前で、常時、現在時刻を表示してるスマホの登場で、一部では腕時計は不要のモノになったとさえいわれている。

 その一方で、ブランド物の高級腕時計やビンテージアイテムは、在庫があれば、定価を遥かに超えた天井知らずのプレミア価格で右から左へと売れている。

2進数で現在時刻を赤いLEDで表現するバイナリーウォッチ

 また中途半端でレガシーな雰囲気を一切感じさせないファッショナブルな腕時計やチープだけどデザインコンシャスな腕時計は毎日のように新しい商品が登場し、中にはアッという間に売り切れ完売、転売屋によるプレミア価格でオークションなどに再登場する腕時計も多い。

 今回はそんなレガシーだけど、腕時計の時刻表示機能としては極めて興味深い表現型の通称「バイナリーウォッチ」(2進数腕時計)を久し振りに買ってしまった。

 ご存じのとおり腕時計の本来の存在意義は“現在時刻”を表示することだ。幸か不幸か人間は生まれてから死ぬまでの何十年間の長いようで短い一生を一方通行の時間軸の上で生かされている。その長い道のりの中の今何処にいるのかを教えてくれる身に着ける時計が腕時計だ。

 人は何時何処にいても現在の時間を即座に知るために、置時計からモバイルできる腕時計を発明した。腕時計のおかげで、人は事前に落ち合う場所さえ確定していれば、確実にシンクロナイズして会うことができるようになった。

パッケージには英文、独文、不鮮明なコピーの日本語取説が入っている
ドイツのStern & Schatz GmbHの商品らしいが、珍しくパッケージ上にはMade in Chinaの文字が見当たらない

 なので基本的に腕時計は現在が何時何分、時には秒をも直感的に人に伝える現在時刻表示機構を必ず備えている。筆者のデスクの上にたまたまあった数台の腕時計を並べてみてもそれは分かる。

腕時計の現在時刻の表現型はレガシーなアナログ、デジタル、音声など様々だ。時間の制約から逃げたいときは役に立たない日時計腕時計も正解だ

 ただ小さいだけで置時計そのままのイメージのアナログ表示腕時計、それをデジタル表示に変更したデジタルウォッチ。現在時刻を音声で読み上げてくれる特殊用途の腕時計。アナログ表示を特別な機構で表現したり、中にはLEDのバーグラフで表示するモノもある。

 アナログかデジタルかといった平凡なものではなく、現在時刻の新しい“表現スタイル”の拡張やアイデアは腕時計の新製品開発の重要な要素でもある。今回ご紹介する腕時計は、その現在時刻の表現に一般的には馴染みの薄い2進数(Binary)表現を採用したものだ。

 2進数と聞くと、学校で“習ったことがある”人と“まったく習ったことが無い”人に2分される。ネットで調べてみると、昔は中学2年生の数学で勉強したらしいが、平成14年度の学習指導要領で削除されたらしく、今、30歳以下の人はほとんど2進数は知らないのかもしれない。ICT先進国を目指す日本にしては、コンピューター動作の基本の基本なのに興味深い選択だ。

 2進数が何であるかの詳細は、最新のWebで勉強して頂くことにして、今回ご紹介する2進数腕時計は、見慣れた算数の10進数とも異なり、60秒で1分、60分で1時間、24時間で1日、30日、31日、時には28日や29日で1カ月、12カ月で1年になる60進数や12進数が複雑に入り混じった時間+暦ほど複雑でもない。

 時間が経過して1分から2分になる時には、2にはなれず、順次、次のひとつ上位の桁に1を表示して繰り上がる仕組みである“2進数方式”を採用している腕時計だ。

上段は4桁のLED点灯で12(0)時~11時まで”時”を表示し、下段は0~59分を表示する
7時26分はこんな感じで表示される

 簡単に言うなら、分を表現するには0~59、時を表現するには昼夜の別を無視すれば0~12だけを表現できれば良い。“分”を表現するには10進数なら“0~59”となって1の位と10の位の2桁だけが必要だ。2進数は2になれば繰り上がる約束なので、下位から1の位、2の位、4の位、8の位、16の位、32の位と6桁“000000”を使う。最大で12までしか必要ない“時”を表現するには6桁より少ない4桁“0000”で表現可能だ。

 たとえば、“07時26分”を2進数表示で表現すれば“時”の表現は1の位と2の位、4の位の3つがオン(1)になればよいので、2進数表現では“0111”となる。“分”の表現は2の位と8の位、16の位がオンになれば良いので“011010”となる。一見して面倒そうだが慣れれば少しずつ現在時刻を読むのは早くなってくる。

 今回のバイナリーウォッチは、“時”と“分”が上下2段に分かれて表示されるタイプだ。上段が4桁(左から、8の位、4の位、2の位、1の位)、下段が6桁(左から、32の位、16の位、8の位、4の位、2の位、1の位)という配列なので、“0”は無表示、“1”の入る位のLEDだけが赤く光って数値を代理表現してくれる。

ごく普通のアナログ腕時計と横並びにしてみた
11時11分はこんな表示になる。時と分は同じ11なので桁がずれている以外は全く同じだ

 ごく一般的なCASIO STANDARDアナログ腕時計と今回のバイナリーウォッチを隣同士に並べて現在時刻を表示させてみた。現在時刻は11時11分。アナログウオッチは一目瞭然だが、バイナリーウオッチは慣れないと当然のごとく全くピンとこない。

 10進数と同じ理屈で、2になれば左側に桁上がりする2進数の原理を思い出して見てみよう。バイナリーウオッチの現在の“時”(上段)の表示は“1011”、下段の“分”表示は“001011”“時”は左端の8の位と2の位、1の位にLEDが点灯しているので3つの合計は“11”と読める。“分”は8の位と2の位、1の位にLEDが点灯しているのでその合計は11、なので現在時刻は11時11分となる。午前か午後なのかは空を見上げるしかない。

 忙しい現代社会では、スマホさえ見れば現在時刻は一瞬のうちにわかる時代だが、ここは敢えて、頭の体操を兼ねてバイナリーウォッチを腕時計の選択肢の一つに加えてみてははどうだろうか?

製品名発売元価格
バイナリーウォッチgetDigital5957円